2016 Fiscal Year Research-status Report
線維筋痛症患者とその家族との生活再構築に向けた在宅における心理教育的支援の強化
Project/Area Number |
15K08927
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
金 外淑 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (90331371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松野 俊夫 日本大学, 医学部, 講師 (20173859)
住吉 和子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (20314693)
村上 正人 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (60142501)
丸岡 秀一郎 日本大学, 医学部, 准教授 (80599358)
釋 文雄 日本大学, 医学部, 助教 (90647976)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療・心理講演会 / 患者家族交流会 / 家族との関係作り / 個別相談 / 継続的な支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の二年目は、初年度の成果に引き続き線維筋痛症(以下、FM)の治療環境が十分ではなく、かつ心理教育的支援が不十分な環境に置かれている地域のFM治療に対するニーズに対応するための、地域の特性を生かした患者・家族参加型心理教育的生活支援の方法について考察することを目的とした。 本研究では全国にFM患者とのネットワークを持っているFM友の会と情報交換を行い、特に心のケアを受ける機会が少ない環境に置かれている地域を優先し、NG県、HC県、HO県の3県で医療・心理講演および患者とその家族との交流会、個別相談会を実施した。参加者の募集は事前申込形式で、NG県24名(患者17名、家族7名)、HC県40名(患者18名、家族22名)、HO県24名(患者19名、家族5名)の参加者を得た。 プログラムの前半は、開催先の医療環境を考慮した上で、認知行動療法を取り入れた痛みとの上手な付き合い方法や心のケアの方法、家族の患者への正しい接し方等を教育講演形式で提供した。後半は、患者とその家族、地元の医療関係者との交流会及び治療や療養等に関する個別相談を行った。 今回の試みに関しては教育プログラム終了後の参加者の声や自由記述から、FM治療に対する理解が少ない等の治療への不満、人間関係の葛藤に関する意見が多数見られる一方、家族とプログラムに参加した患者の中には、「家族と参加して良かった」「お互いに置かれている立場を考えるきっかけになった」という意見が見られ、単独で参加した患者の中にも「次は家族と参加したい」などの意見も見られるなど、家族との関係づくりの視点においても仮説を支持する可能性が示された。 今後の対応としては、治療によるQOLの向上や痛みの再発予防につながる次のステップへの方向性の一つとして、心のケアの充実に向けた取り組みへの強化と地域性を生かした継続的な支援の基盤を整える努力が不可欠と考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に引き続き、FM友の会の協力のもとに心理教育的支援が不十分な環境に置かれている2つの地域と連携し、医療と心理ケアの講演会、患者とその家族、地域の治療者との交流会、個別相談会の充実を図り、直接・間接的に支援する取り組みを重ねる事により、新たな家族参加型生活再構成支援を広げる体制を構築することができた。特に今年度は、当初予定した2つの地域以外のHO県において医療関係者のバックアップもあり、患者やその家族のニーズに応じた心理教育的支援を実施することができた。 今年度の研究は当初の計画以上に進展し、実施先を広めたこともあり交流会、個別相談等を運営する為に直接関わる人材や施設の確保に困難があったが、家族参加型生活再構成支援プログラムや支援のための小冊子を工夫した。開催先の地方においては医療ネットワークをもつ治療者と協動することで、地域性を考慮した支援プログラム内容に工夫を加える事ができ、心理教育的支援強化のためのノウハウを積み重ねる事が出来た。 しかし、研究者による継続的な支援は限界があるなど、FM治療の心理教育的生活支援の充実を図る上での課題も浮かび上がっている。今後はこれまでの活動を生かし、FM友の会の支部の活動を強化するための支援の仕組みを構築し、継続的な支援につながる人材育成プログラムを積極的に推進していくことで、相乗的な効果が期待できるのではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究最終年でもあり、これまでに築き上げてきた実績を踏まえ、プログラム施行の運営および実施過程の再評価を行い、地方の特色を加味した多職種の専門家に広く活用できる実践的な家族参加型生活再構成支援強化プログラムの汎用化の提案を検討する。特に患者とその家族との交流会の強化や、心理教育支援強化を効果的に進めるためには、地域における啓発活動及びFM友の会への支援ネットワークの活用を広げる事が必要と思われる。 次に、これまでの研究調査から得られた結果と3つの地域で行われた家族参加型生活再構成支援強化プログラムの結果から、患者とその家族の考え方、行動パターン等の特徴をカテゴリー分類し、カテゴリー毎に患者自身と家族の考え方と行動の差違に気づくことを目的とした患者・家族との交流会や個別相談会を開催し、患者や家族が自己を客観視し、自ら問題点を探し考え方や行動変化を促すためのプログラムの開発を試みたい。
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Causes of Carryover |
当初企画・予定していた地方を中心としたプログラムの増加により、旅費を中心とした次年度使用する費用が予定より高くなる見込みとなった。研究分担者と協議の上、分担者予算配分中に会議出席のための旅費および、HC県、HO県の旅費、国際学会参加、運営に直接関わる人材などに関わる費用の一部を請求せず、次年度の運営に回すように工夫した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に必要と予測される予算配分を考慮しながら、可能であれば、他の地域での医療・心理講演会、患者・家族との交流会、個別相談会の実施を検討し、研究企画調整・実施計画を行う予定である。
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Research Products
(6 results)