2016 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症作用に着目した新しい消化器疾患治療用漢方処方の創製
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15K08929
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
遠藤 真理 北里大学, 東洋医学総合研究所, 研究員 (60296829)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗炎症作用 / 大建中湯 / 六君子湯 / POI / 13C酪酸呼気試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに大建中湯がPOIモデルマウスの消化管運動亢進作用に加えて、α7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)活性化を介したマクロファージ浸潤抑制作用による抗炎症作用を示すことを明らかにした。さらに、大建中湯の処方中のどの生薬が抗炎症作用の活性を持つ生薬であるのかを同定するために、POIモデルマウスにおける各生薬単味の抗炎症作用への関与を検討したところ、乾姜成分がマクロファージ浸潤抑制作用に関与する可能性を示唆した。 そこで、さらに乾姜の抗炎症作用の機序を詳細に検討した。その結果、POIにおける乾姜の抗炎症作用の作用機序の一部として、乾姜は直接α7nAChRを活性化するのではなく、5HT-4Rの活性化により筋層間神経叢のコリン作動性神経からのACh分泌を促進し、このAChが炎症により活性化したマクロファージ細胞膜上のα7nAChRを活性化して抗炎症作用を発揮する可能性が示唆された。加えて、5HT-4Rの活性化に対する作用が直接作用であるのか否かを検討中である。また、乾姜の主要成分であるショーガオール、ジンゲロールについてもその抗炎症作用、消化管運動亢進作用の有無、作用機序についても解析中である。 マウスを用いた抗炎症作用の検討は通常解剖による侵襲的方法で行ってきた。13C酪酸呼気試験を用いた方法を用いれば、解剖することなく、経時的に同じ個体で非侵襲的方法にて検討することが可能である。抗炎症作用をスクリーニングする場合には多数の被試験漢方薬に対してマウスの使用数を減らすことが可能であるため、13C酪酸呼気試験を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大建中湯の構成生薬中の有効生薬と成分について同定し、その詳細な作用メカニズムにおいても解明することが出来た。現在その研究成果発表の論文投稿を行ったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
大建中湯の処方中の乾姜の構成量を変化させ、抗炎症作用、消化管運動亢進作用が増強される濃度を検討する。また、六君子湯の乾姜を加えてその作用が増強されるのか否かを検討する。 同じ薬理作用のものを足すよりも、異なる薬理作用のものを混合する方がその効果が大きくなることを経験している。最近、大建中湯、六君子湯以外の生薬に術後腸管麻痺(POI)抑制効果があることが報告されている。そこで、大建中湯や六君子湯にPOI抑制効果のある生薬を加えて検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験に用いたα7nAChR ノックアウトマウスや5-HT4Rノックアウトマウスは自家繁殖による方法で必要数を得ているが、当初の予想よりも生まれる頻度が少なく、実験に用いる数を十分に得るまでに時間がかかったため、進捗が遅れた。その分の飼育や実験にかかる当年度分の試薬等の購入が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
α7nAChR ノックアウトマウスや5-HT4Rノックアウトマウスが成長してきたので、次年度の実験と同時に遅れていた実験を行うため、次年度使用額と翌年請求額の合計をすべてを必要とする予定である。
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