2018 Fiscal Year Research-status Report
鍼による化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の予防メカニズム
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15K08935
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
石川 慎太郎 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (70439355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久光 正 昭和大学, 医学部, 教授 (20167604)
砂川 正隆 昭和大学, 医学部, 教授 (20514467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経科学 / 化学療法誘発性末梢神経障害 / 鍼 / 予防 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
パクリタキセル(抗癌剤)は乳ガンなどの悪性腫瘍に対して大変期待されている化学療法の一つである。その一方で副作用として手足のしびれをはじめとする“末梢神経障害”が高頻度に生じる。そこで鎮痛作用や自律神経機能調節作用があるといわれる鍼療法を抗癌剤による末梢神経障害に対して応用し、その効果を検討した。 これまで我々は鍼刺激のCIPN抑制に関与が予想される生体機序の探索を目標にパクリタキセルによる末梢神経障害モデルを用いて検討を行ってきた。パクリタキセルを5週齢の雄ラットの腹腔内に注射して末梢神経障害モデルを作製し、足三里(ST-36)へ鍼刺激を施行した。電子痛覚測定装置(Von Frey 2390)をはじめとする動物行動試験を中心に末梢神経障害の評価を行い、神経過敏性(アロディニア)の出現を観察した。また同動物から脊髄および末梢神経を採取し、免疫染色法により、アロディニアに関与するグリア細胞の発現を観察するとともに末梢神経(坐骨神経)内の血管新生および後根神経節における遺伝子発言について観察を行った。 その結果、鍼刺激によりパクリタキセル投与群で好発する機械的刺激に対するアロディニアの抑制、坐骨神経に対応する脊髄高位レベルでの脊髄後角アストロサイト出現の抑制が再現された。またNOS阻害薬(L-NAME)の前投与で鍼刺激効果が阻害されたことからパクリタキセルによる末梢微小循環の阻害との因果関係が示唆された。そこで神経-血管ユニットの観点から検討した結果、パクリタキセルによる坐骨神経内の血管形成阻害が鍼刺激により改善することが判明し、同モデルにおいて後根神経節における血管新生因子(VEGF)の発現に影響した可能性が示唆された。平成30年度は、上記内容を踏まえ学術雑誌への投稿準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
国際学会発表後、発表内容を総論としてとりまとめる企画が立ち上がり、当初の予定通りに計画が進行しなかったが、当該の報告において質疑応答の議題に上がった内容を踏まえこれまでの成果を再検討することに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
化学療法誘発性末梢神経障害に対する鍼刺激の抑制効果に神経血流および血管新生の関与が示唆された。また刺激を受けた神経においてどのような生体分子の変化が行われているかについての検討を加え、そこで化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に対する鍼の効果に影響する可能性のある生体システムと脊髄内のグリアの発現・活性との関連性を研究成果として総合的に評価・報告することを計画している。
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Causes of Carryover |
平成30年度に計画していた課題(鍼刺激による神経血管拡張への影響に関する検討)に関連して、すでにサンプリングした試料を用いてCIPN発症に関連する血管新生および血行動態に関わる分子的変化を顕微解剖学的な検討により明らかにするとともに、当該分子の生化学的な検討を行うことを予定しており、これらの分析に使用する予定である。またこれまでの成果を学術雑誌へ投稿する予定である。
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