2015 Fiscal Year Research-status Report
鍼のプラセボ対照ブラインド化臨床試験に潜むプラセボ効果とノセボ効果の検証
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15K08938
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
高山 美歩 東京有明医療大学, 保健医療学部, 講師 (20563414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶌 裕義 東京有明医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00563412)
高倉 伸有 東京有明医療大学, 保健医療学部, 教授 (60563400)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鍼 / プラセボ / ダブルブラインド / 肩こり / 補完代替医療 / ノセボ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
鍼の治療効果の科学的根拠は、患者をマスクしたシングルブラインド法の臨床研究によって示され、欧米の医学雑誌で多く取り上げられている。しかし、鍼師と患者の両者をマスクしたダブルブラインド法による臨床試験は、私たちが世界で初めて開発したダブルブラインド鍼を用いて行われたのみである。この鍼を用いた、肩こりに対する鍼治療のダブルブラインド下におけるプラセボ対照ランダム化比較試験では、欧米でのシングルブラインド臨床試験の結果と同様に、包括解析によっては鍼の特異的効果は見出せなかった。しかし鍼による刺激感覚のインパクトは大きく、患者が鍼治療を本物と認識すると治療効果が大きくなり、偽物と認識すると小さくなる傾向が見られた。このことは、包括解析では患者由来のプラセボ効果やノセボ効果の影響を受け、実際の臨床で得られる治療効果を見逃す可能性があることを意味する。そこで本研究は、前述の研究と同様の方法による肩こりに対する鍼治療のプラセボ対象ランダム化比較試験を行い、術者ブラインド下で、患者にその治療を本物、あるいは偽物と思わせることによって生じるプラセボ/ノセボ効果について検討し、実際の鍼治療の臨床現場において得られるリアリスティックな治療効果に迫ることを目的とした。 本研究は、患者に偽物鍼を本物鍼と認識させることが最も重要である。そこで平成27年度は、ダブルブラインド用の偽物鍼の鍼先が、どの程度皮膚を圧迫すること(圧迫深度)がより本物と認識させられるのかを検討した。その結果、圧迫深度が1mmよりも2mmの方が、偽物鍼を本物鍼と誤って推測させやすいという結果を得た。この結果を受け、平成27年度は、圧迫深度が2mmのダブルブラインド鍼を製作してEOG滅菌を施し、研究計画は倫理審査委員会の承認を得て実施の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ダブルブラインド用の偽物鍼の鍼先による皮膚の圧迫深度が、患者がその鍼を本物と思うか、偽物と思うかという重要な鍵を握るだろうということが研究計画の段階でディスカッションされ、これが本研究を成功に導くのに最も重要であると判断したため、これを調べるための実験を、本研究に先駆けて実施した。この予備実験から、偽物鍼の皮膚の圧迫深度は2mmの方がより本物鍼と誤って推測させることが可能であることが明らかとなり、この結果を受けてより厳密に(1mmではなく)2mmという圧迫深度を担保するためのダブルブラインド用鍼の製作に時間をかけた。そのため、本実験の開始には至らなかったが、当面実施する予定の鍼の製作および鍼のEOG滅菌は済んでおり、平成27年度に実施予定であった被験者もほぼ確保済みであるため、平成28年度にその遅れを取り戻すことができる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続きダブルブラインド用の鍼の製作およびEOG滅菌を行うとともに、肩こりの被験者を募集し、予定被験者100名中70名の実験を、平成29年度内には残りの30名の被験者の実験を終了させる予定である。また平成28年度より、実験が終了した実験データについて、実験に直接関与しない研究補助者により、データ入力を開始することとしている。 また、平成27年度に予備実験として行った結果については、鍼の海外専門雑誌に投稿予定であり、これとともに本研究の根拠のひとつとなるダブルブラインド鍼の妥当性評価およびそれによる基礎実験の結果についても、平成28年度に学会発表するためのエントリーを済ませている。
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Causes of Carryover |
ダブルブラインド用の偽物鍼による皮膚圧迫深度の妥当性実験を実施し、本実験の実施に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ダブルブラインド用の偽物鍼の鍼先を整えるのに必要な顕微鏡の購入・鍼製作にかかる人件費・鍼消耗品・鍼滅菌代、被験者・施術者(鍼灸師)・データ整理等担当者への謝金、肩こりの客観的指標を得るための機器、学会発表に伴う参加費や交通費、ほか。
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Research Products
(5 results)