2016 Fiscal Year Research-status Report
劇症型アニサキス症の病態形成機構の解明と原因分子の同定
Project/Area Number |
15K08953
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
水上 一弘 大分大学, 医学部, 准教授 (60548139)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アニサキス症 / 劇症型因子 / 病態形成機構 / PCR-RFLP法 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
魚の生食を嗜好する我が国において、アニサキス症は重要な寄生虫感染であり、治療は専ら内視鏡下による摘出である。また、食品衛生法によりアニサキス症は保健所への届出が義務づけられている。胃アニサキス症のように劇症化するケースの他に、内視鏡検査で偶然見つかる無症候型の寄生例も知られているが、劇症化と無症候型を規定する要因は不明である。これまで、アニサキス症劇症化の原因が、アニサキス種の違いによるという考えと、宿主側(患者側)の感受性によるという考えがあるが決定的な証拠はない。そこで本研究では、劇症型アニサキス症の原因を明らかにする。 これまで、アニサキス症の発症や病態形成に関する研究は、日本海側のサバにはA.pegreffiiが、太平洋側のサバにはA. simplex ssが寄生するといった寄生する種の違いとその水揚げ地により考察されることが多く、実際のアニサキス症患者や無症候型アニサキス感染者から摘出されたアニサキスの種を大分県(太平洋側)と長崎県(日本海側)で比較した解析はほとんどない。Umeharaらは、北海道と九州のアニサキス症患者のほとんどがA. simplex ssに感染しており、この種がアニサキス症発症に重要であると報告している(Parasitol. Int. 2007年)。 我々の調査では、大分県の劇症型アニサキス症患者から摘出されたアニサキス種の多くがA. simplex ssだったものの、他の種も同定された。また、大分県の無症状感染者のアニサキス種の多くがA. simplex ssだったことより、劇症化の原因がアニサキスの種の違いによるという考え方には否定的な結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、サバに寄生するアニサキスの実態を明らかにするために、長崎県産、大分県南産のサバならびに大分県の関サバおけるアニサキス属幼線虫寄生の調査を行い、アニサキス幼線虫の寄生率が長崎県産、大分県南産、関サバの順に高いこと、また長崎県産はすべてA.pegreffiiが検出され、大分県南産、関サバでは主にA. simplex ssが検出されることから、生息域によってサバのアニサキス幼線虫の寄生率および寄生種が異なることを見出した。 平成28年度では、大分県(太平洋側)と長崎県(日本海側)のアニサキス症患者や無症候型アニサキス感染者から内視鏡的に摘出されたアニサキスの種を同定し、アニサキス種の違いがアニサキス症の症状に関連するのか検討した。その結果、大分県の25名の劇症型アニサキス症患者から摘出された31匹のアニサキス幼線虫をPCR-RFLP法で解析したところ、26匹/20名がA. simplex ss、4匹/4名がA.pegreffii、1匹/1名がA.typicaに感染していたことが明らかになった。つまり、 A. simplex ssだけでなく、他の種によってもアニサキス症が発症することが示唆された。また、A. simplex ssの感染が多いのは、大分県のサバの多くにA. simplex ssが寄生していることを反映していると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27,28年度の研究結果から、日本近海のサバから採取されるアニサキスは、太平洋側ではA. simplex ssが、日本海側ではA. pegreffiiが同定されることを確認した。一方、アニサキス症患者から摘出されるのはA. simplex ssが多いという先行研究があるが、大分県の患者の調査によってA. simplex ss以外のアニサキス種によっても劇症化することが示唆された。 そこで、平成29年度では、A.pegreffiiが多く生息する日本海側(長崎県)での調査を行い、A.pegreffiiによる劇症化が起きているのか検証する。また、無症候型のアニサキス感染についても、アニサキス種の同定を行い、病態との相関を解析する。本調査により、長崎県の患者からA.pegreffiiが多く検出されたり、無症候型アニサキス感染者からA. simplex ssが多く検出されたりすれば、A. simplex ssが劇症化に重要とする先の報告は再考が必要となる。今後は、患者のアニサキス症既往歴やアレルギー随伴症状との関連を調査し、劇症化の原因が宿主側の感受性にあるのか焦点をあてる。実験的には、マウスにアニサキスを感染させたり、免疫したりして、IgEの産生やアレルギー応答を解析する。アニサキスによりアレルギーが惹起されるようであれば、アレルゲンの同定を試みる。
|
Causes of Carryover |
当初の計画通り、アニサキス症患者が集まらなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
長崎県訪問などを行い、積極的に長崎県のアニサキス症患者サンプルを収集し、より良い研究結果となるように努める。研究成果を論文発表や学会発表などに研究費を使用していく。
消耗品費 150万円、旅費(調査・学会出張) 50万円、人件費/謝金 10万円、英文校正料/論文投稿料 40万円
|
-
-
[Presentation] 胃アニサキス症の病態形成機構の解明2016
Author(s)
伊藤秀幸, 飛彈野真也, 白神浩平, 水上一弘, 神山長慶, 村上和成, 小林隆志
Organizer
第69回日本寄生虫学会南日本支部大会
Place of Presentation
佐賀大学医学部鍋島キャンパス(佐賀県佐賀市)
Year and Date
2016-11-05 – 2016-11-06
-
[Presentation] プロテアーゼインヒビターSLPIは大腸において,TLR刺激によってTRAF6依存性に誘導される2016
Author(s)
園田光, 玄同淑子, 尾崎貴士, 野口香緒里, 神山長慶, 飛彈野真也, 福田健介, 首藤充孝, 岡本和久, 小川竜, 水上一弘, 沖本忠義, 小林隆志, 村上和成
Organizer
第58回日本消化器病学会大会
Place of Presentation
神戸コンベンションセンター(兵庫県神戸市)
Year and Date
2016-11-03 – 2016-11-06
-
-
-
[Presentation] Linked Color Imaging (LCI)を用いた内視鏡的粘膜萎縮境界の視認性の検討2016
Author(s)
水上一弘, 児玉紘祐, 安部雄治, 廣島康子, 本田俊一郎, 福田昌英, 川原義成, 平下有香, 矢田美佳, 園田光, 橋永正彦, 首藤充孝, 福田健介, 松成修, 岡本和久, 小川竜, 沖本忠義, 兒玉雅明, 村上和成
Organizer
第101回日本消化器内視鏡学会九州支部例会
Place of Presentation
ホテルグランデはがくれ(佐賀県佐賀市)
Year and Date
2016-06-24 – 2016-06-25