2016 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患の個別化治療を目指した全ヒト型抗体製剤の薬物動態解析法の確立
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15K08967
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
安藤 朗 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90252395)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗サイトカイン療法 / 炎症性腸疾患 / IgG |
Outline of Annual Research Achievements |
全ヒトIgG型抗体製剤の血中濃度の測定において、患者血清中の正常IgGから薬剤だけを検出する方法を開発した。基本は、特殊コーティングされたアビヂンプレートを用いてビオチン化したヒトTNF-aを固相化するところにある。これにより、非特異的正常ヒトIgGの非特異的検出を完全にブロックすることが可能であった。この結果、全ヒト型IgG抗TNF-a製剤のアダリムマブの血中濃度の測定が可能となり、臨床的な寛解を得るためにクローン病の患者では5.6μg/mlのトラフ値が必要であることが明らかとなった。潰瘍性大腸炎の臨床的寛解の達成にはさらに高い血中濃度7.6μg/mlの濃度が必要であることも明らかになった。さらに、先にキメラ型の抗体製剤を投与され臨床効果の劣化した患者においては、アダリムマブの血中濃度の上昇が得られにくいことも明らかになった。その原因として、抗薬物抗体濃度を測定してみると、先にキメラ型抗TNF-a抗体の投与を受けた患者では、抗薬物抗体の陽性率が有意に高かった。すなわち、キメラ型薬剤に対して抗薬物抗体が発生しやすい状況では、それに続くヒト型製剤に対しても容易に抗薬物抗体が生じ血中濃度を保てないことが明らかとなった。今後の研究の方向性として、我々の開発した抗ヒト型IgG 製剤の血中濃度測定系を他の薬剤の測定にも応用して臨床の場における個別化治療法の導入を促進するような方策に結びつける必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通り全ヒト型IgG 生物学製剤の血中濃度測定系を確立し、臨床の場においても有用性が確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた結果をまとめ論文化する予定である。さらに、他の薬剤についても、今回開発した方法が応用可能か検証を進める。特に、抗サイトカイン製剤だけでなく、抗ガン剤としての生物学製剤の薬物動態解析への応用を推進していきたい。
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