2016 Fiscal Year Research-status Report
非ステロイド性抗炎症薬による小腸粘膜傷害でのガレクチン-3および腸内細菌の役割
Project/Area Number |
15K08975
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
朴 雅美 近畿大学, 医学部, 講師 (70469245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 智 近畿大学, 医学部, 講師 (40460852)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ガレクチン-3 / ケモカインレセプター9 / インドメタシン / 小腸潰瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は消化管表面に発現しているガレクチン-3や腸管免疫に働くケモカインのNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)に対する生体防御的役割を明らかにする事を目的としている。NSAIDの1つであるインドメタシンによって急性小腸炎が起こるが、この炎症は腸管バリアの低下とそれに伴う細菌の侵入による。申請者はガレクチン-3欠損マウスやケモカインレセプター9(CCR9)欠損マウスでより強く炎症が惹起されることを発見した。ガレクチン-3やCCR9が腸管に保護的な役割を持つことが考えられたことから、そのメカズムの解明を目的に研究を進めている。 これまでインドメタシンの投与から腸管の回収までの一連の方法は既報に基づいて実施してきた。しかし、独自の高感度な血便検出方法を確立し、モデル動物を生体のままで経時的に血便を調べることで間接的に炎症の状況を把握することが可能となった。その結果、これまではインドメタシン投与後24時間を調べていたが、実際には数時間という早い段階で血便が検出され、この時期の方がより炎症が強いこともわかった。またCCR9欠損マウスでは野生型マウスに比べて血便が早く排出されることなども分かった。このことから、早い段階での炎症に着眼し、研究を進めている。 近年、腸内細菌が宿主と相互作用し、ホメオスタシスや疾患に関わっていることが多数報告されている。腸管はまさに腸内細菌が存在する場であり、その影響を非常に受けやすい。今回炎症に違いが見られたガレクチンー3欠損マウスやCCR9欠損マウスで腸内細菌が野生型と異なる可能性が強く考えられる。そのため、これらのマウスから糞便及び回腸内容物を回収し、細菌の同定を実施するサンプルを調製した。当初は自ら次世代シーケンサーを用いて解析する予定にしていたが、より正確な情報を得るため外注する事にした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用するマウスの1つであるガレクチンー3欠損マウスが一時的に繁殖しない状態になり、この問題の解消に当たっていたためガレクチンー3欠損マウスを用いる実験が遅延した。このため同じ実験系での検討を予定していたCCR9欠損マウスを用いた実験を優先した。本マウスも野生型マウスに比べて強い潰瘍を起こすこと、潰瘍が形成されるまでの時間も早いことなどがわかった。これは独自に確立した血便の検出方法により明らかとなった成果である。 インドメタシンの代謝には腸内細菌が関わっていることが報告されている。いくつかの細菌が持つグルクロニダーゼという酵素は水酸化を受け無毒化されたインドメタシンを再びインタクトなものに戻しインドメタシンの効果が回復する。糞便中の細菌による本酵素活性がCCR9欠損マウスで非常に高いことが分かった。 また腸内細菌の同定も進行している。ガレクチンー3欠損マウス、CCR9欠損マウスおよび各々の野生型マウスの糞便及び回腸内容物を回収し、細菌の同定を実施するサンプルを調製した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ガレクチン-3欠損マウスの繁殖が回復したこともあり、今後は当初の予定に則り研究を進めていく。すなわち、野生型、ガレクチン-3欠損マウスの小腸でマクロファージやDCの分布や数をFACS及び免疫組織学的手法によって比較する。また、それぞれのマウスからマクロファージを単離し、貪食能や殺菌能を比較する。CCR9欠損マウスでも同様の解析をすすめる。またマウスにインドメタシンを胃内投与し小腸粘膜傷害を起こさせ、パイエル板の細胞を回収し、T細胞やB細胞それぞれの成熟マーカーの抗体でラベルし、FACS解析を実施する。B細胞は形質細胞へと分化し、免疫グロブリンA(IgA)を産生する。IgAは抗菌活性や毒素の中和活性、さらには免疫細胞活性化作用を有するなど腸管免疫において非常に重要である。そこで、腸管側に分泌されたIgAをELISAによって測定する。 上記の免疫担当細胞の解析に加えて、腸管の防御の第一線となる粘液やタイトジャンクションに関しても解析する。これは、CCR9欠損マウスで炎症が起こるまでの時間が短縮されていることから、これらの防御能の低下が示唆されたためである。
|
Causes of Carryover |
腸内細菌の解析に関して、すべての工程をキットなどで実施する予定としていた。しかし、多数の検体を一括にて外部委託することでより経費を軽減しうることが分かったため、現在は他の研究者とサンプルを持ち寄ることにし、次年度(29年度)に委託することにたころか一部の予算を次年度持ち越しにすることとなった。 また、ガレクチン-3欠損マウスの繁殖が困難となったことから、実験がやや遅延したことも理由の一つである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
既述の通り、腸内細菌解析の委託での予算を計上する。 ガレクチン-3欠損マウスの繁殖が回復したこともあり、今後は当初の予定に則り研究を進めていく。すなわち、野生型、ガレクチン-3欠損マウスの小腸でマクロファージやDCの分布や数をFACS及び免疫組織学的手法によって比較する。そのため、FACS解析等で使用する試薬類や抗体に関しても計上する。また、腸内の免疫担当細胞が産生するサイトカインやIgAなどを測定する目的でELISAの購入を計画している。
|
Research Products
(5 results)