2016 Fiscal Year Research-status Report
B型肝炎ウイルスの生活環に利用される小胞輸送経路の解明とその治療応用
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15K08981
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 淳 東北大学, 大学病院, 助教 (60455821)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HBV / 生活環 / Rabタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)は肝細胞に侵入し、複製され、細胞外に放出されるという生活環を形成するが、細胞内侵入後の輸送経路や、複製過程における構成タンパク質やゲノムの輸送経路、そして成熟したウイルスが放出される経路についてはほとんど明らかになっていない。本研究では小胞輸送の分子スイッチであると報告されている低分子GTPaseのRabタンパク質ファミリーに焦点を当てて、HBVの生活環に必要な輸送経路を明らかにし、その治療応用の可能性を検討することを目的とした。 研究期間3年間の2年目である平成28年度は、ウイルス放出に関わるRabタンパクとして前年度に同定されたRab5Bに焦点を絞って解析を進めた。HBV粒子を放出する細胞株であるHepG2.2.15細胞を用いてRab5BをノックダウンするとHBV放出量が著明に増加したが、ショ糖密度勾配遠心で粒子の浮上密度の測定やHBV感染が可能なNTCP発現HepG2細胞を用いた検討により、増加したHBVは感染性のある成熟したウイルス粒子であることが確認された。 Rab5Bをノックダウンすると、HBVエンベロープタンパクの1つであるLHBsが小胞体(ER)に蓄積することが分かった。さらに、OptiPrepを用いた密度勾配遠心で多胞体(MVB)を含むエンドゾームを分離すると、Rab5BのノックダウンによりLHBsのERからMVBへの輸送が障害されていることが考えられた。近年の報告から、HBVのエンベロープ形成は主にMVBで起きていると考えられていたが、本研究の結果からはERでもエンベロープ形成が行われている可能性が示唆された。これを支持する所見として、Rab5Bノックダウン細胞のERにおいてHBsタンパクとHBcタンパクが共局在していることが確認された。これらのHBVおよび構成タンパク輸送経路の制御による治療応用の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に同定されたRab5BのHBV生活環への関わりについてより詳細な新しいメカニズムが明らかになりつつある。特にHBV放出には複数の経路があることが示唆されており、さらにデータを蓄積することで非常に意義のある研究となることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はまずは引き続きRab5Bに着目して、論文発表に向けて必要なデータを収集していく。特に、ウイルス放出に利用されることが想定される経路を阻害するような化合物を用いた検討や、蛍光顕微鏡を用いたウイルスタンパク局在の検討を行う。さらに、そのほかのRabタンパク質についても検討を広げていき、HBV生活環に利用される細胞内の新しい輸送経路や治療ターゲットを明らかにする。
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Research Products
(5 results)