2015 Fiscal Year Research-status Report
自己骨髄細胞と肝幹細胞増殖因子による肝再生療法の基礎研究
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15K08983
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
齋藤 貴史 山形大学, 医学部, 准教授 (80250918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝再生 / 幹細胞 / 増殖因子 / 骨髄細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄細胞と肝前駆細胞の共存下において、骨髄細胞で発現増加が期待される、いかなる肝幹細胞増殖因子が、肝前駆細胞の肝細胞方向性への分化・増殖促進作用を有するのか、を明らかにする目的で、半透明膜で2種の細胞を隔離して、液性因子を細胞間で往来可能とした共培養システムを構築した。骨髄細胞と肝前駆細胞であるhepatic stem-like cell (HSLC)をこの共培養システムを用いて培養することにより、HSLCは肝細胞方向性に分化したが、骨髄細胞側ではFibroblast growth factor (FGF) 2と Epiregulinの遺伝子発現増加が確認された。そして、FGF2と Epiregulinは、肝前駆細胞の肝細胞方向性への分化誘導ならびに肝前駆細胞の増殖に関与していることが明らかとなった。 即ち、FGF2は添加培養後のHSLCにおいて、アルブミン遺伝子やTAT遺伝子といった肝特異的遺伝子発現を増強し肝細胞方向性への分化誘導を促進することがRT-PCRで示され、用量依存的に細胞数も増加させることがWST-1assayにて示された。また、Epiregulinについても、WST-1assay にて用量依存的にEpCAM陽性肝前駆細胞の増殖能を増加させることが示された。 臨床例において、急性肝不全、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、健常者について、各患者の血清を用いて、ELISA法により血清Epiregulin値を測定したが、血清Epiregulinは 急性肝不全でのみ、コントロールや他の疾患群に比較し有意な上昇を示し、肝幹細胞の動員を必要とする高度肝臓障害時において、肝臓再生に深く関わっていることが示されたことから、本液性因子の骨髄細胞投与時における肝前駆細胞刺激因子としての重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目標は、肝不全患者に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性を高め投与法を発展させるため、骨髄細胞からの有効な肝幹細胞増殖因子を同定して、それらの自己骨髄細胞投与療法時の補完的な役割を見出すことである。 現在まで、FGF2とEpiregulinが、自己骨髄細胞投与療法時の肝前駆細胞に対する治療有効性を高めるための肝幹細胞増殖因子として、肝前駆細胞の肝細胞性方向への分化、および肝前駆細胞そのものの増殖、の両面において、有効な液性因子候補である可能性が見出された。実際、Epiregulinは臨床検体においても、肝臓再生に肝幹細胞の動員を必要とすることが想定される急性肝不全症例で高値を呈することが示されていることからも、Epiregulinの肝再生における肝幹細胞増殖因子としての重要性が確認されたこととなる。Epiregulinは、肝幹細胞との共存下で骨髄細胞での発現が増加することが予想される新規の肝幹細胞増殖因子となりうる可能性が見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄細胞で発現増加する肝幹細胞増殖因子として同定されたEpiregulinは新規の液性因子であり、この肝幹細胞の肝細胞方向性への分化・増殖に関わる機序について、肝前駆細胞における誘導作用、肝細胞DNA合成能の促進作用、肝特異遺伝子の発現などの検討を進める。また、Epiregulinが急性肝不全時のどのような病態と関連して発現誘導されているのか、予後との関連も含めて臨床検体を用いてさらに検討する。 GFP陽性肝障害マウスモデルを用いて、自己骨髄細胞投与時にEpiregulinの併用投与を試み、障害肝組織における骨髄細胞の定着、肝前駆細胞の誘導、肝組織像の改善等を、骨髄細胞単独投与時のそれらと比較し、in vivoにおけるEpiregulinの肝再生に寄与する肝幹細胞刺激因子としての重要性を明らかにする。 また、抗GFP抗体を用いて組織学的に肝移入骨髄細胞を同定し、それらに発現する造血系幹細胞のCD34,CD117、間葉系幹細胞のCD44,CD29,CD166, CD105、血液細胞系のCD45、等の表面マーカーを二重染色にて検討することにより、障害肝に定着した骨髄細胞の細胞性質を明らかにする。
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