2016 Fiscal Year Research-status Report
新規細胞移植モデルの確立を目指した肝幹細胞の分化・増殖機構の解明
Project/Area Number |
15K08988
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座講師 (30372444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10175127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生医学 / 発生・分化 / 細胞移植 / 肝疾患治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、これまでに確立してきた肝幹細胞生物学研究の学術基盤をもとに、 細胞表面抗原によって高度に濃縮したマウス肝幹細胞画分を用いて、その分化・増殖に関わる新たな分子機構を解析し、特定の標的分子の発現を調節することにより移植ドナー細胞の「至適成熟度」を決定し、これらの結果を基盤に、ヒトiPS細胞を用いた新規ヒト肝臓キメラマウスモデルの構築を試みる研究を行い、今年度は下記の成果を得た。 (1)マウス肝幹・前駆細胞の分離、培養、in vitroでの形質解析と肝幹・前駆細胞におけるMT1-MMPの機能解析:マウス肝幹・前駆細胞の分離、培養技術の最適化を進め、さらに安定した分化誘導培養が可能となった。MT1-MMPの強制発現、MT1-MMP欠損マウスを用いたマウス肝幹・前駆細胞における機能解析の結果、肝細胞成熟化に抑制的に、胆管形成に促進的に機能することを見いだし報告した(Biochem Biophys Res Commun, 2016)。さらにBMP-4シグナルが、胆管形成に抑制的に機能することを報告した(Hepatol Res, 2016)。 (2)ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析:さらにApoE欠損マウスをレシピエントとして移植を行うと、ドナー細胞が産生するApoE蛋白によって高コレステロール血症が長期改善し、細胞移植の治療効果が得られることを確認した。血清中の総コレステロールとApoE蛋白を定量することによって、ドナーキメリズムのモニタリングと定量化したところ、MT1-MMPを強制発現すると、移植効率が高くなることが示された。 (3)ヒトiPS細胞由来細胞によるヒト肝臓キメラマウスモデルの構築:構築に向けてヒトiPS細胞由来肝幹・前駆細胞の誘導培養技術の最適化を進め、新規細胞株の樹立に成功した(Sci Rep, 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、(1)マウス肝幹・前駆細胞の分離、培養、in vitroでの形質解析と肝幹・前駆細胞におけるMT1-MMPの機能解析については想定通りの進捗を得て、その結果は原著論文に採択された。本論文の結果は、これまで不明であったMT1-MMPの肝幹・前駆細胞での機能を解析し、肝幹・前駆細胞による胆管形成の調節に重要であることを世界で初めて示すことに成功した。その結果から導いた研究によって、BMP-4シグナルが肝幹・前駆細胞から胆管形成の調節に重要な因子であること、その機能が抑制的に作用すること、さらには肝幹・前駆細胞の増殖に強く抑制的に働くことも見いだし、この結果は原著論文に採択された(Hepatol Res, 2016)。 (2)ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析に関しても想定通りの進捗がみられ、結果は(3)の研究に反映することが可能になっており、次年度の研究にも継続することが可能になっている。従って、本項目が大きく進捗することが想定されている。 (3)ヒトiPS細胞由来細胞によるヒト肝臓キメラマウスモデルの構築は、当初は最終年度に実施する予定であったが、進捗が順調であったため、想定より早く着手することが可能になった。ヒトiPS細胞から肝幹・前駆細胞を誘導する方法の効率改善に成功し、その結果の一部を原著論文に報告し、採択された(Sci Rep, 2016)。 これらの点から、既に達成した原著論文報告に加えて、研究計画は当初の目的を達成しつつ、想定以上の早さで進捗しており、次年度はさらに大きく進捗することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前記した(1)から(3)の研究に関して、平成28年度の結果に基づき、さらにこれを継続して発展させて遂行する。さらに、以下の内容に関して、これまでの成果を基盤に推進してゆく。 (1)マウス肝幹・前駆細胞の分離、培養、in vitroでの形質解析と肝幹・前駆細胞におけるMT1-MMPの機能解析:今後もさらに関連シグナルでの研究を発展させて、順次報告してゆく。 (2)ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析:抽出されたMT1-MMP標的分子を強制発現もしくはknockdownした細胞を用いて、移植を行い、移植効率に与える影響を解析する。遺伝子改変動物の入手が可能な場合には、それも併用して解析も進める。これを重ねて行うことによって、より効率的なdonor細胞の「移植至適成熟度」を探索する。 (3)ヒトiPS細胞由来細胞によるヒト肝臓キメラマウスモデルの構築:抽出された標的分子の発現を調節した細胞を用いて、細胞移植効率が高くなる条件を最適化することができれば、この結果を、ヒトiPS由来肝幹/前駆細胞を用いた新たなヒト肝細胞キメラマウスモデルの構築に応用する。具体的には、Alb-uPA/SCIDマウス、MUP-uPA/SCIDマウス、あるいは薬剤処理したNOD/SCIDマウスをレシピエントに、ドナー細胞を移植してキメラマウスの構築を試みる。ドナー細胞における標的分子の調節に関しては、PiggyBac Transposon systemを用いて、ヒトiPS細胞の段階でTet誘導性に発現調節が可能となる系を構築する。その上で、移植前にDoxycyclineによる誘導をかけ、移植後一定期間のみで標的分子が発現調節できるように、系を工夫することで、高いドナーキメリズムとレシピエント生存率が達成できるように調整してゆく。
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Causes of Carryover |
消耗品として計上していた必要な試薬等が、計画当初よりも廉価にて購入可能であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析を発展させるためにも、今後は検討する数・条件・種類を拡大して解析を行うため,試薬を当初の予定よりも増量して購入する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Bone morphogenetic protein-4 modulates proliferation and terminal differentiation of fetal hepatic stem/progenitor cells.2017
Author(s)
Goto F, Kakinuma S, Miyoshi M, Tsunoda T, Kaneko S, Sato A, Asano Y, Otani S, Azuma S, Nagata H, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Nakagawa M, Asahina Y, Watanabe M
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Journal Title
Hepatol Res
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Human induced pluripotent stem cell-derived hepatic cell lines as a new model for host interaction with hepatitis B virus2016
Author(s)
Kaneko S, Kakinuma S, Asahina Y, Kamiya A, Miyoshi M, Tsunoda T, Nitta S, Asano Y, Nagata H, Otani S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Nakauchi H, Nishitsuji H, Ujino S, Shimotohno K, Iwamoto M, Watashi K, Wakita T, Watanabe M.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 29358
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Comprehensive analyses of mutations and hepatitis B virus integration in hepatocellular carcinoma with clinicopathological features.2016
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Tanaka S, Kakinuma S, Murakawa M, Nitta S, Watanabe T, Otani S, Taniguchi M, Goto F, Nagata H, Kaneko S, Tasaka-Fujita M, Nishimura-Sakurai Y, Azuma S, Itsui Y, Nakagawa M, Tanabe M, Takano S, Fukasawa M, Sakamoto M, Maekawa S, Enomoto N, Watanabe M.
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Journal Title
J Gastroenterol
Volume: 51
Pages: 473-486
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Serial measurement of Wisteria floribunda agglutinin positive Mac-2-binding protein is useful for predicting liver fibrosis and the development of hepatocellular carcinoma in chronic hepatitis C patients treated with IFN-based and IFN-free therapy.2016
Author(s)
Nagata H, Nakagawa M, Nishimura-Sakurai Y, Asano Y, Tsunoda T, Miyoshi M, Kaneko S, Goto F, Otani S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Azuma S, Kakinuma S, Tojo N, Tohda S, Asahina Y, Watanabe M.
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Journal Title
Hepatol Int
Volume: 10
Pages: 956-964
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Genetically modified human induced pluripotent stem cell-derived hepatic progenitor-like cell lines as a model for interaction between hepatitis B virus and host cells.2016
Author(s)
Shun Kaneko, Sei Kakinuma, Yasuhiro Asahina, Akihide Kamiya, Masato Miyoshi, Tomoyuki Tsunoda, Sayuri Nitta, Ayako Sato, Yu Asano, Hiroko Nagata, Satoshi Otani, Fukiko Kawai-Kitahata, Miyako Murakawa, Yasuhiro Itsui, Mina Nakagawa, Seishin Azuma, Mamoru Watanabe.
Organizer
AASLD The Liver Meeting 2016
Place of Presentation
Boston(USA)
Year and Date
2016-11-11 – 2016-11-11
Int'l Joint Research
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