2016 Fiscal Year Research-status Report
代謝性脂肪肝炎の基盤病態としての自然免疫・代謝連関と治療ストラテジー
Project/Area Number |
15K09023
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (20317382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山科 俊平 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30338412)
今 一義 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398672)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) / 自然免疫 / アミノ酸 / 免疫栄養 / RIG-I |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代謝性脂肪肝炎(metabolic steatohepatitis;MetSH)の発症・進展における肝内自然免疫系の機能的役割を詳細に解析するとともに、実験治療的アプローチの検討を行うことを目的としている。自然免疫系の賦活メカニズムにはマイクロバイオーム成分などの病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern;PAMPs)や傷害を受けた自己由来物質を危険シグナル分子(danger/damage-associated molecular pattern;DAMPs)の認識機構が重要である。最近私たちは二重鎖(ds)RNAに対する肝内自然免疫反応および自己免疫誘導について検討を行い、dsRNAによる炎症性サイトカインや1型インターフェロン(IFN)の誘導には明らかな雌雄差が存在し、dsRNA反復投与による胆管病変形成や自己抗体誘導も雄性マウスでは殆ど生じず雌性マウスでのみ顕著に認められることを見出した。さらに、これらの分子基盤として、dsRNA認識機構であるRIG-Iの肝組織中での発現が雌性マウスで亢進しており、卵巣摘除マウスでは肝内RIG-I発現が低下することが明らかになった。これらの事象は、LPS認識機構であるCD14/TLR4経路に雌雄差があることとも類似しており、肝病態形成における性差のメカニズムの一端を表していると考えられる。また、これまでアミノ酸の一種であるグリシンにLPS肝障害や脂肪肝炎に対する抑制作用があることを報告してきたが、今回の検討で、グリシンがdsRNAによるサイトカイン・IFN誘導や肝病変発症も抑制することが明らかになった。従って、グリシンは免疫栄養作用を有しており、肝内自然免疫反応を多面的に制御し、脂肪肝炎を含む多彩な肝病態に保護的に作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝内自然免疫機構の解析として、RIG-Iを含む新たな分子メカニズムについても解析を進めており、肝病態形成の性差や免疫栄養アプローチによる実験治療についても新たな知見が得られつつある。一方、前年度より行っている肝細胞特異的PTEN-KOマウスにおける実験治療についても鋭意進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討で得られてきている肝内自然免疫機構の性差にかかわる分子メカニズムについて、より詳細に解析を加える。特に、肝内RIG-IおよびTLR3発現を細胞レベルで解析するとともに、性ホルモンによる制御機構について検討する。 一方、前年度より行っている肝細胞特異的PTEN-KOマウスにおける免疫栄養アプローチでは、腸内マイクロバイオーム解析や自然リンパ球に関する検討を継続して行う予定である。
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Causes of Carryover |
腸内マイクロバイオーム解析のサンプル収集が当初予定より遅延しているため、当該解析のための費用を次年度に繰り越している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金はマイクロバイオーム解析および研究成果公表にかかる費用に充当する予定である。
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