2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーを用いた膵液網羅的遺伝子解析によるIPMN良悪性診断法の開発
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15K09044
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
高野 伸一 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80377506)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IPMN / 次世代シークエンサー / 膵液 |
Outline of Annual Research Achievements |
IPMNは膵癌の前癌病変あるいは危険因子として近年認識されている。このIPMNの良悪性診断はCTや超音波検査など画像診断を中心に行われているが、いまだ十分な正診率には至っておらず精度の高い良悪性診断法の開発が重要である。 一方、多数の遺伝子領域を同時並列的にシークエンスする革新的な次世代シークエンサーを用いた研究は近年全世界で活発に行われている。以前は困難であった複数領域の遺伝子配列の決定が短時間かつ高感度に施行することが可能となり、腫瘍以外の成分が混じる微量な臨床検体においても腫瘍由来の遺伝子変異を検出することが可能となり、またこのような技術を用いて、膵癌やIPMNについても既に網羅的なExome解析が報告され、膵癌ではすでに知られているKRAS, TP53, p16, SMAD4が主要な変異であることが報告され (Jones et al, 2008)、IPMNにおいてはKRAS, GNAS, RNF43, APCなどの変異が存在することが報告された (Wu et al, 2012)。しかしながら、これらの遺伝子変異の臨床的意義解明、あるいは良悪性診断や治療効果予測などの臨床応用は今後の課題である。 本研究では次世代シークエンサーの技術を用い、悪性IPMNに特異的な遺伝子マーカーを同定し、膵液などの臨床検体による悪性マーカーの検出法を確立することを目標とし研究を開始した。まずはIPMNの切除組織51例から腫瘍部と非腫瘍部をレーザーキャプチャーマイクロダイゼクションで正確に切り抜き、報告された遺伝子を含む癌関連52遺伝子の変異を次世代シークエンサーで解析したところ、変異頻度はKRASやGNAS遺伝子で多く見られたが、悪性症例では有意にTP53とRNF43変異が多く認められた。この知見をもって膵液で検出可能かどうかを現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切除組織による次世代シークエンサー解析はほぼ終了し、悪性IPMNの遺伝子マーカーが同定されつつあり、順調に計画は遂行されていると考える。 ただし、ホルマリン固定パラフィン包埋検体という遺伝子解析にはやや不利な材料を用いてシークエンスしているため、シークエンスエラーあるいは組織固定法による人工的な変異が加わり、得られた遺伝子変異の解釈を慎重にしなければならない。DNA抽出法や解析時の種々のパラメーターによるふるい分けでこれらの問題解決を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
切除組織による悪性遺伝子マーカーが同定されつつあり、この結果を利用した膵液による良悪性診断法の開発を行う。まずは切除組織で得られた遺伝子変異が膵液でどの程度検出可能かを評価し、次に膵液による悪性マーカーの検出能を評価する予定。
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