2015 Fiscal Year Research-status Report
デオキシコール酸を用いた胆道癌リスク評価法の確立と発癌メカニズムの検索
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15K09048
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
久野 壽也 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00345779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胆道発癌 / デオキシコール酸 / マウス / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆道癌モデルマウスを作成するため、発癌候補物質の検索と適切なマウス系統の選定を行った。6週齢雄性C57BL/6J, ICRマウス各9匹を3群に分け(1-3群、4-6群)、癌原性物質であるN-methyl-N-formylhydrazine (MFH), N-nitrosobis(2-oxopropyl)amine (BOP)を1回、胃内(100mg/kg body weight, 1,4群)および皮下投与(160mg/kgg body weight, 2,5群)した。3,6群は無処置群とした。2日後に安楽死させ、胆嚢、肝臓、膵臓を摘出し、病理組織学的、免疫組織化学的に肝臓、膵臓組織を含めた胆道上皮の形態的変化、増殖能及び遺伝子損傷の程度を検討した。BOP処置群は2日目までに全匹死亡し、組織学的に肝臓の出血壊死が顕著であった。胆嚢上皮における核分裂像指数はICRのMFH処置群が無処置群と比較して増加傾向を示し、MFH処置群のKi-67標識率は有意に増加した(P<0.05)。C57BL/6JのMFH処置群と無処置群の間で胆嚢上皮の増殖活性に差は見られなかった。興味深いことに膵小葉中心付近の上皮細胞のKi-67標識率はMFH処置したC57BL/6J, ICRのいずれにおいても無処置群より有意に低下していた(それぞれP<0.01および0.05)。MFH処置による胆嚢上皮細胞のアポトーシス発生率の有意な変化は、C57BL/6J, ICRのいずれにも観察されなかった。DNA二重鎖切断の指標とされるγH2AX陽性細胞は、無処置群と比較してMFH処置群のICRで有意に増加した(標識率0.7% vs 4.8%, P <0.01)が、C57BL/6Jにおける変化は明らかでなかった。以上より、胆嚢発癌候補物質としてMFH、マウス系統としてICRが適切と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短期実験により、胆道発癌に適切なイニシエーション物質(MFH)とマウス系統(ICRマウス)が明らかになった。また、胆嚢上皮に病理学的な変化を起こし、長期実験可能なMFH用量も決定した。胆道発癌動物モデル作成に必要な条件が揃ったことにより、これらを用いた長期発癌実験を行いサンプルを採取する予定である。当初予定していたデオキシコール酸単独の実験系よりも発癌の可能性が高くなっており、胆道発癌モデル動物作成に向けて概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験により明らかになったイニシエーター、プロモーターを用いて長期の発癌実験を行い、胆道発癌モデルを確立する。より高率且つ短期間に発癌できるようにイニシエーター、プロモーターの投与時期や量の最適化も検討する。また、採取できた腫瘍に対してsenescence-associated secretory phenotype(SASP) の関与を検討するため、胆嚢・肝臓の凍結切片を作成し、SASP 関連蛋白質(p16, p21, p53, IL-1b, IL-6, CXCL1, CXCL9)の比較定量を行う。モデル完成後、1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンといったこれまで評価困難であった胆道発癌候補物質を用いたリスク評価を行う。
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Causes of Carryover |
胆道発癌物質として使用するデオキシコール酸は主としてプロモーターとしての作用が見込まれるため、単独投与による発癌作用は高くないことが予想される。従って、発癌感受性を高めることを目的に、平成28年度に予定していた胆嚢上皮細胞におけるDNAダメージを与える因子の検索を行った。今年度は使用マウス数が若干少なく、実験期間が短い実験を先行して行ったため繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はイニシエーター・プロモーターを用いて胆道発癌モデルの確立を目指す予定である。今年度明らかにしたイニシエーターは当初計画では計上されておらず、やや高価であることから物品費がその分増加する。新たに必要となった物品購入のため繰り越し金を充填する。
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Research Products
(1 results)