2016 Fiscal Year Research-status Report
デオキシコール酸を用いた胆道癌リスク評価法の確立と発癌メカニズムの検索
Project/Area Number |
15K09048
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
久野 壽也 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (00345779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胆嚢がん / マウス / ハムスター / 化学物質誘発 |
Outline of Annual Research Achievements |
N-methyl-N-formylhydrazine (MFH)に対するICRマウスの忍容性を検討するための実験を行った。12匹の雄性ICRマウスを3群に分け、MFH100mg/kg, 50mg/kg x2 (day 0, 3), 0mg/kgを強制胃内投与し、day 7に安楽死させ胆嚢を病理組織学的に評価した。また、胆嚢上皮細胞の増殖、アポトーシス、二重鎖DNA切断をそれぞれKi-67, TUNEL, γH2AXを用いて免疫組織化学的に検討した。実験期間中、MFH暴露後に死亡する個体は見られなかった。前年度試験で薬剤投与48時間後に観察された肝臓小葉中心性の壊死は、7日後には微小肉芽性炎症へと変化しており回復傾向がみられた。胆嚢上皮は組織学的に軽度の乳頭状構造を示し、断頭分泌像も観察されたが、2日目で見られた細胞密度や核分裂像の増加は目立たなかった。Ki-67, TUNEL, γH2AX陽性細胞率は群間で有意差はないものの、非暴露群と比較して暴露群では低下傾向がみられた。以上の結果から、MFH 100mg/kg, 50mg/kg x2投与に対してICRマウスは忍容性が高く、肝臓、胆嚢組織の回復傾向が顕著なことよりイニシエーターとして適切であり、長期実験可能な物質であると考えられた。 次にマウス以外の動物に対するMFHの胆嚢上皮障害性を検討した。雌性ハムスターにMFH100mg/kg, 50mg/kg, 0mg/kgを強制胃内投与し、day 3, 7に胆嚢上皮細胞、肝細胞の増殖能をKi-67の免疫染色を用いて評価した。胆嚢上皮細胞、肝細胞におけるKi-67陽性細胞率はday 3で用量依存性に増加し、day 7でいずれのMFH暴露群もコントロール群のレベルにまで低下した。以上よりハムスターもMFHに対して胆嚢発がんイニシエーション作用を有する可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの実験により、マウス胆嚢発がんイニシエーターのN-methyl-N-formylhydrazine (MFH)とプロモーターのデオキシコール酸の用量設定、および高感受性マウス種の選定が終了した。現在、ICRマウス、MFH、デオキシコール酸を用いて胆嚢発がん中長期実験を行っている。48匹の雄性ICRマウスを4群に分け、1,2群にはそれぞれ100mg/kg 1回, 50mg/kg 2回のMFHを強制胃内投与し、3, 4群にはvehicleである生理食塩水を与えた。1-3群にはMFH投与1週間後よりデオキシコール酸の投与を開始し、4群は対照群とした。現在までに明らかな毒性による死亡例はなく、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
全過程31週間の実験終了後、胆嚢、肝臓および総胆管を摘出し、腫瘍の発生率、組織像、背景粘膜内微小病変の有無を病理組織学的に検討する。次いで、このモデルで得られた胆嚢腫瘍に対し、これまでヒトで報告されているEgfr, ErbB3といったドライバー遺伝子の変化を中心に評価し、分子標的薬のターゲットとなり得るかを検討する。また、デオキシコール酸は大腸粘膜に腫瘍性病変を形成することが少数ながらも報告されており、同時に大腸病変の病理組織学的解析を行う予定である。
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