2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K09067
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小幡 裕明 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (20571912)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性心不全 / 高齢社会 / サルコペニア / フレイル / 心臓リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、増加する高齢心不全患者の運動機能を保つための疾病管理プログラムの創出である。本年度は、高齢の心不全患者においては運動機能がどのように低下しているか、その特徴を解析し、短期的な運動療法によって運動機能を改善させることができるかプレリミナリーデータを検討した。 新潟市内の心リハ施行5施設において回復期心リハ適応患者の背景と身体機能に関する横断研究を行ったところ、サルコペニア(筋量・筋力減少症)を来たした患者の割合は、高齢になるほど増加しており、本邦一般住民と比べて優位に高い割合であったが、歩行速度は保たれているという特徴を有していた。つまり、加齢の要素以外に心不全を有することが身体組成や身体機能の低下と関連し、歩行速度が低下していないため気づきが遅くなる可能性がある。また、四肢筋量は同部位の脂肪量とは相関せず、脂肪組織と関連するレプチン、アディポネクチンが運動機能と負に関連しており、病態形成に組織連関が示唆される。 歩行機能が低下した高齢患者に対して在宅での実施可能な運動療法を施行した単施設観察研究では、平均年齢82歳、100例において、優位な身体機能の改善を認め、歩行速度も有意な改善を示した。さらに、1年間の生存率も高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ:心不全患者の運動能力低下の特徴と患者背景の関連解析を目的として、新潟市内の心リハ施行5施設の回復期心リハ適応患者の背景と身体機能に関する横断研究を行った。症例は53例(平均年齢69歳)。DEXAで測定した四肢骨格筋筋量や筋力、歩行機能は、心機能指標とは有意な相関を示さなかった。サルコペニアを来たした回復期心リハ患者の割合は、年齢区分が高齢になるほど増加しており、本邦一般住民と比べて優位に高い割合であるが、歩行速度は保たれているという特徴を有していた。また、四肢筋量は同部位の骨塩量と強く相関していたが、脂肪量とは相関しておらず、脂肪組織と関連するレプチン、アディポネクチンが運動機能と負に関連していた。 Ⅱ:身体機能評価尺度であるShort Physical Performance Battery (SPPB)が満点とならない患者を独歩の維持が危うい高齢患者と定義し、ストレッチ、レジスタンストレーニング、バランス強化を中心とし、有酸素持久運動によるリハ介入を施行する単施設観察研究を行った。累積症例は100例(平均年齢82歳)で、85歳以上の超高齢者が半数を占めた。平均介入期間は32日で、SPPBが7点から9点へ改善し、筋力、バランス機能、歩行速度とも有意な改善を示した。さらに、SPPB9点以上では、運動耐用能の改善・維持が期待でき、1年間の生存率も高いことが示された。 本年度の研究によって、心疾患患者に発症するサルコペニアは一次性サルコペニアより多く、高齢になるほど増加する。また、この病態では局所における脂肪関連因子の組織連関が示唆された。さらに、高齢者においても我々の簡素な運動プログラムで身体機能が改善し、生存率の改善にも寄与することが示唆された。 上記Ⅰ、Ⅱの研究は本年度に予定していたものであり症例数が少し目標に届かなかったが結果は次年度の研究に結びつくものであったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から高齢患者においても簡素な運動療法プログラムが身体機能を改善しうることが示された。今後は、要因解析に基づいたプログラムの洗練化を行うとともに、①筋力やバランス機能への介入が有効性の検証、②高齢心不全患者の身体機能低下をアウトカムとした予後調査、③介護や医療負担の調査を行うため、申請者らが佐渡島において行ってきた佐渡心不全研究のコホートと、新潟市内の心臓リハビリ施行施設の協力を得て、これらの心不全を併発する高齢患者(DPC病名が心不全である患者を対象とする)に対する運動療法の効果を多施設前向き研究によって研究する。すでに、該当する施設と研究計画について検討の最終段階である。この研究により、新潟市(都市型)・佐渡市(地域型)を中心としたそれぞれの医療圏で、高齢心不全患者の疾病管理方法を構築し、先進的活動の展開につながると考える。 さらに基礎的な研究展開として、本年度の研究で明らかとなった末梢組織における骨格筋と骨、脂肪組織の連関についても、前述の前向き研究の協力施設の中で全身DEXAの施行可能な施設においては、体組成の継時的な変化、介入の有無における変化を検討し、組織の連関をさらに明らかにする。また同時に、筋組織、脂肪組織からのサイトカインを前後評価し、筋力低下や筋力向上と相関するバイオマーカーの探索や、スポット尿を用いたプロテオーム解析を行い機能改善に関する機序の解明に関する検討を行う。
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Causes of Carryover |
血漿と尿を用いたバイオマーカー研究の一部が次年度に持ち越しとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
筋組織、脂肪組織からのサイトカインの介入前後評価、筋力低下や筋力向上と相関するバイオマーカーの探索や、スポット尿を用いたプロテオーム解析の試薬や解析費用に使用する予定。
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Research Products
(6 results)