2015 Fiscal Year Research-status Report
心房細動の発症におけるp53-miR34a-SIRT1フィードバック回路の役割
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15K09069
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西田 邦洋 富山大学, 大学病院, 助教 (40591631)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不整脈 / 心房細動 / リモデリング / アンジオテンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
心房細動の発症は心血管合併症のリスクの増加や生命予後の悪化に関連するが、抗不整脈薬による心房細動の停止および予防には大きな限界があり治療の有効性は未だに不十分である。治療成績向上のために発症機序のさらなる解明が不可欠である。心房細動の発症において心房の機能的および組織学的な変化“リモデリング”が重要な役割を持つ。発症機転の上流に位置する心房リモデリングを抑制し心房細動発症を予防する“アップストリーム治療”の効果に期待がもたれる。 本研究は、イヌ疾患モデルを用いて心房細動の電気的および構造的基質の進展機序における、p53-miR34a-SIRT1フィードバック回路の役割を、電気生理学的、組織学的、および分子生物学的に明らかにし、またp53-miR34a-SIRT1フィードバック回路への介入による心房細動抑制の可能性を探索し、その成果によって心房細動の発症機序の解明および今後の心房細動治療の発展に寄与する事を目的とする。 当該年度(平成27年度)は動物実験モデルを用いた実験を施行し、従来の検討と矛盾しない実験結果を得た。すなわち高頻度の心房ペーシングにより、偽薬対照群では左心機能の低下とともに、心房有効不応期の短縮、心房内伝導時間の延長、そして心房細動持続時間の延長が確認されたが、アンジオテンシン-II受容体拮抗薬投与群では、それらの変化が抑制され軽減された。さらに両群の心房組織を用いた分子生物学的検討を行い、偽薬対照群では心房組織におけるp53の発現低下とトランスフォーミング増殖因子(TGF)-β1の発現上昇がみられるのに対し、アンジオテンシン-II受容体拮抗薬投与群ではそれらの変化が抑制される事を確認した。これらの結果は本研究の仮説である心房細動リモデリングの細胞内伝達機序におけるp53の関与を示唆する所見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度(平成27年度)は、予定外の支出(動物用人工呼吸器の老朽化に伴う破損および修理の不可能による新規購入の必要性)による実験動物購入資金の不足などの事情により、実験の進行が遅れたため、現時点ではまだ統計学的検討に十分な頭数のデータが得られず、まだ論文や学会での発表には至っていない。次年度以降に予定通りの実験を実施し十分なデータを得たのちに論文や学会に発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の計画通りに実験を推進する。
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Causes of Carryover |
当該年度(平成27年度)の実験に必要な物品の購入経費として約1,000,000円の支出を予定していたが、実験を進めながら必要な物品を購入したところ、実際の支出は961,619円に収まったため、残った38,381円は次年度(平成28年度)の実験の経費として繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、実験に必要な物品の購入に使用する。翌年度(平成28年度)も当該年度(平成27年度)と同様にin vivo実験を施行する。助成金は実験動物、実験器具、消耗品などの物品の購入に使用する。
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