2015 Fiscal Year Research-status Report
心房細動がもたらす凝固異常の病態解析と血液診断法の開発
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15K09070
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加藤 武史 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (90456418)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心房細動 / 塞栓症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ラットの心房を高頻度ペーシングして心房細動モデルを作成し、刺激前後の末梢血および肝臓における発現遺伝子プロファイルを解析し、心房細動によって誘導される特徴的な遺伝子(群)を抽出するとともに、凝固能が亢進する機序を解析した。 cDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、12時間の心房高頻度ペーシングによりラットの肝臓における遺伝子発現プロファイルが著明に変化することが判明した。特筆すべき事に、Biocartaにより定義されたパスウェイのうち、外因系凝固パスウェイの変化が最も変化が大きく観察された。実際に定量的PCRにより肝臓のmRNA発現を検討すると、fibrinogen、prothrombin、factor X、antithrombin IIIの発現が心房高頻度ペーシングにより増加していた。心房高頻度興奮により肝臓でのfibrinogen発現が亢進する機序を検討したところ、末梢血単球の活性化が生じており、これらが肝臓に浸潤してinterleukin 6(IL-6)を放出することにより、肝細胞におけるSTAT-3のリン酸化が生じ、fibrinogen産生を促進していた。IL-6の中和抗体を心房高頻度ペーシング前に事前投与することにより、肝臓におけるSTAT-3のリン酸化とfibrinogen産生増加は抑制された。 これらの知見より、心房細動は末梢単球と肝臓におけるIL-6/STAT-3経路を活性化し、fibrinogenの産生を増加させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は予定していた心房細動モデルラットの作成と、その末梢血や肝臓の遺伝子発現解析を行った。その結果、心房細動が末梢血単球の活性化を介して肝臓における凝固因子の発現を亢進させることを解明できた。この成果は日本循環器学会などで発表した。 一方で、同年度中に開始を予定していた心房細動患者の末梢血収集に関しては、当院の倫理委員会承認などの手続きに時間を要しており、次年度に持ち越している。
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Strategy for Future Research Activity |
当大学のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会に申請し、承認が得られ次第、心房細動患者の末梢血収集を開始する。サンプルが集まり次第、心房細動症例(発作性・持続性)、洞調律症例における末梢血リンパ球の発現遺伝子プロファイル、凝固因子の変動、凝固能を解析する。動物実験の結果と合わせ特徴的な遺伝子(群)を抽出するとともに、凝固能が亢進する機序を解明する。
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Causes of Carryover |
心房細動患者の末梢血の収集・解析に使用するPAX gene RNA真空採血管や、情報解析装置の購入を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
心房細動患者の末梢血を用いた検討について、当大学のヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会に申請し、承認が得られ次第、PAX gene RNA真空採血管や情報解析装置を購入する。
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