2015 Fiscal Year Research-status Report
ローター・アブレーションによる心房細動停止機序解明と個別化治療の確立
Project/Area Number |
15K09077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山崎 正俊 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (30627328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50178597)
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80396259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心房細動 / ローター |
Outline of Annual Research Achievements |
根治困難な慢性心房細動治療のブレイクスルーになり得る渦巻き型旋回興奮波(ローター)・アブレーション治療が報告されたが、細動停止に至るメカニズムやその効果に関して十分明らかにされていない。本研究では、種々の病態下で生ずる心房細動の発生・維持に重要な役割を果たす ローターを標的にしたアブレーション治療による細動停止機序を、活動電位光学マッピングシステムとコンピューターシミュレーションを組み合わせた手法を用いて解明する。 当年度は急性圧負荷心房細動モデルを作成、光学マッピングの手法を用いて心房細動を維持する主要な興奮様式の同定を試みた。副交感刺激を模してアセチルコリンを持続灌流し、急性圧負荷を加えた心房細動においては、大きなさまよい運動(meandering)を呈するローターが細動の維持に重要な役割を果たしていることが確認された。ローターに対するポイントアブレーションを心内・外膜側から施行すると、7例中の2例において心房細動の停止を認めた。心房各部位の双極電極から得られたシグナルの主周波数解析の結果から、頻拍が停止しなかった例において、高頻度興奮部位が心房内を大きく移動したために細動が停止しなかったことが判明した。大きなさまよい運動を呈するローターによって維持される心房細動では、ローターに対するポイントアブレーションの効果は低い、ローター自体への通電よりも、ローターの移動経路遮断を主軸において治療法を選択する必要があることが示唆された。上記の結果を米国不整脈学会・日本不整脈心電学会・日本循環器学会・日本生体医工学会の年次集会で発表し、論文(J Am Coll. Cardiol. EP 2015)として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、下記の2点を実験的に評価する必要性があるが、 1.光学マッピングシステムを用いて心房全体の巨視的興奮伝播現象を細胞膜電位として捉え、波面解析や位相解析などの手法による定量的な時空間解析法を用いて、電気生理学的特性の異なる各種心房細動モデルにおける心房細動維持機構とローター・ダイナミクスとの関係性を包括的に解明する。 2.病態ごとに異なるローター・ダイナミクスに応じた高周波通電を施行し、細動停止例と、非停止例における興奮伝播過程の相違と焼灼領域との関係性を検討する。 当年度において、急性圧負荷心房細動モデルが大きなさまよい運動を呈するローターによって維持されること、現状のローターを標的にした高周波通電では効果が低いことを発見し、すでに研究成果を国内外での主要な学術集会で招待講演として発表(米国不整脈学会・日本不整脈心電学会・日本循環器学会・日本生体医工学会)、論文は欧米一流学会誌に採択されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、初年度の成果を踏まえて各種病態下で発生する心房細動に対するローター・アブレーションの効果判定と、有効な治療戦略となり得る新たな治療方針の確立を目指す。具体的には、 ①間欠的高頻度刺激による持続性心房細動モデルの作成と光学マッピング:右心房に留置した心房リードと植え込み方ペースペーカを使用し、50Hz:20秒の間欠的心房刺激を加えることで6ヶ月以上持続する持続性心房細動モデルを作成する。 ②心房梗塞誘発心房細動モデルの作成と光学マッピング:左側肋間の小開胸下にて左洞結節動脈を結紮し、局所的な心房梗塞を作成することによって、心房梗塞誘発心房細動モデルを作成する。 ③心房焼灼領域の決定:心臓電気現象のコンピューターシミュレーションモデル(病態ごとに異なる線維組織の増生も考慮)を用いて、高周波通電による心房細動停止と再細動の発生を抑制する焼灼領域の条件設定を模索する。 本研究(光学マッピング実験)遂行にあったって、高感度ビデオカメラ・多電極における心房電位の記録・評価機器の性能が、直接実験結果の信頼性に大きな影響を与える。現在使用中の機器の高性能化、もしくは機器(ビデオカメラ/多電極記録装置)の新規購入を検討中である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究において、より詳細な心房局所の興奮伝播過程を評価するために最新型の解析用コンピューターの購入費用と、電極記録装置の購入費用を計上していたが、現在使用中の解析用コンピューターで十分な解析が可能であったため今回は使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
心房細動中の興奮様式と解剖学的障壁との関係性をより詳細に評価するため、高解像度の高速ビデオカメラの購入を検討中。
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