2016 Fiscal Year Research-status Report
病態心におけるギャップ結合リモデリングと致死性不整脈発生基質の解明
Project/Area Number |
15K09078
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 幸臣 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60432217)
山崎 正俊 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (30627328)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不整脈 / ギャップ結合 / 心臓電気生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全における死因の多くは心室細動・頻拍などの致死性心室不整脈である。心肥大や心筋梗塞などの病態心では、心筋イオンチャネルやCa調節機能の変化とともに、ギャップ結合を介する細胞間電気結合特性が変化して、致死性不整脈発生につながると考えられている。本研究では、心室筋細胞のギャップ結合の発現・分布や機能的変化が、心室細動・頻拍発生の電気生理学的基盤の形成(不整脈発生基質)にどのように関わりを解明することを目指す。 病態心では心筋細胞のcalmodulin(CaM)/Ca2+依存性リン酸化酵素(CaMK II)が活性化が亢進し、致死性心室性不整脈の発生に重要な役割を果たす。CaMK IIは心筋イオンチャネルの開口動態やタンパク発現を変化させ、不整脈発生基質をもたらすことが報告されているが、ギャップ結合を介する作用については十分解明されていない。今年度の研究では、CaMあるいはCaMK II阻害薬がウサギ心室筋のギャップ結合蛋白(Cx43)発現と興奮伝播および心室細動・頻拍の持続に及ぼす作用を調べた。CaM阻害薬(W7)の急性投与は心室筋の興奮伝導速度を増加し、細胞間電気結合の指標である空間定数も上昇させた。また、W7あるいはCaMK II阻害薬(KN93)は心室筋の介在板部分におけるCx43発現(Triton X不溶性分画)を有意に増加し、この結果は免疫組織染色の定量解析結果によっても確認された。更に、W7作用下では心室細動および持続性頻拍の誘発率が有意に低下し、活動電位光学マッピングによる興奮伝播解析では、W7作用下では心室細動・頻拍おけるスパイラル興奮波の旋回中心が心室内を大きく移動し、房室間溝の興奮障壁と衝突することによりリエントリーが停止することが観察された。以上より、CaM/CaMK II阻害は心室筋の介在板におけるCx43局在を増加して興奮伝導特性を向上させ、致死性心室性不整脈を抑制することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高度除脈誘発ウサギモデルについては心室細動ストームが高率に発生することを確認し、活動電位光学マッピング装置を用いて、心室筋の興奮伝播と心室細動・頻拍動態を解析する実験を開始した。しかし、この実験の途中で、光学マッピング装置の一部(高速度ビデオカメラ)が故障し、その修理に長時間を要した。そのため、今年度は、電気生理学実験の代わりに分子生物学および免疫組織化学実験を主体に行い、その結果、心室筋のCaM/CaMK IIがギャップ結合蛋白の介在版局在を変化させ、致死性心室性不整脈の発生に重要な役割を果たすことを明らかすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度装置の故障のため行うことができなかった、高度除脈に伴う心室細動ストームウサギの活動電位光学マッピングを用いた心室筋興奮伝播解析および心室細動・頻拍動態を解析を行い、心室細動ストームにおける心室筋ギャップ結合の変化と不整脈発生との関係を明らかにする。また、動物実験と並行して、数理モデルを用いた心筋活動電位興奮伝播のコンピュータ・シミュレーションを行い、動物実験の結果を検証するとともに、その理論についても考察する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究遂行中に高速度ビデオカメラが故障し、予定していた光学マッピング実験の一部を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高速度ビデオカメラは年度末までに修理が完了したため、次年度9月までに、病態ウサギモデルの摘出灌流心の光学マッピング実験を行う。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Calmodulin/CaMK II inhibition improves intercellular communication and impulse propagation in the heart, and is anti-arrhythmic under conditions when fibrosis is absent2016
Author(s)
Takanari H, Bourqonje VJ, Fontes MS, Raaijmakers AJ, Driessen H, Jansen JA, van der Nagel R, Kok B, van Stuijvenberg L, Boulaksil M, Takemoto Y, Yamazaki M, Tsuji Y, Honjo H, Kamiya K. Kodama I, Anderson ME, van der Heyden MA, van Rijen HV, van Veen TA, Vos MA
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Journal Title
Cardiovascular Research
Volume: 111
Pages: 410-421
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Phase shift mechanisms of spiral reentry induced by low energy stimulation2016
Author(s)
Yatabe J, Tachiyanagi N, Tomii N, Noguchi H, Shibata N, Ogawa T, Yamazaki M, Honjo H, Arafune T, Homma A
Organizer
第63回日本不整脈心電学会学術集会
Place of Presentation
札幌コンベンションセンター, 札幌市
Year and Date
2016-07-14 – 2016-07-17
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[Presentation] 位相分散マップによる心臓旋回興奮解析2016
Author(s)
富井直輝, 山﨑正俊, 荒船龍彦, 本荘晴朗, 神谷香一郎, 柴田仁太郎, 佐久間一郎
Organizer
第55回日本生体医工学会大会
Place of Presentation
富山国際会議場, 富山市
Year and Date
2016-04-26 – 2016-04-28
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