2015 Fiscal Year Research-status Report
α2アドレナリン受容体作動薬を用いた新しい心不全薬物治療の開発
Project/Area Number |
15K09110
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
清水 秀二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80443498)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心不全 / α2アドレナリン受容体作動薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先行研究にて心臓迷走神経活動亢進作用を認めたメデトミジン(デクスメデトミジン)およびグアンファシンの心不全への治療効果を検討するために、ドキソルビシン誘発性心筋症モデルマウスを用いて慢性動物実験を行った。10週齢のC57BL/J雄マウスにドキソルビシンを腹腔内投与(20mg/kg単回)し、心筋症を誘発、2週間後よりα2Aアドレナリン受容体作動薬であるグアンファシンを経口投与し、90日間の生存率を観察した。その結果、グアンファシン投与群では、非投与群と比べ、体重は著明に減少し、生存率も悪化することが判明した(P<0.05)。この原因を明らかにするため、麻酔下ラットを用いた急性実験を行った結果、グアンファシンには中枢性の心臓迷走神経活動亢進作用の他に、強い血管収縮作用があることが判明し、この血管α2アドレナリン受容体への直接作用が生存率の悪化を引き起こしたと考えられた。一方で、ドキソルビシン誘発性心筋症モデルマウスにα2アドレナリン受容体作動薬であるデクスメデトミジンを経口投与した時には、ドキソルビシン投与後の体重減少が抑制され、生存率の低下も認められなかった。これらのことから、グアンファシンよりもデクスメデトミジンの方が、心不全治療に適していると考えられた。現在、他のモデル動物(心筋梗塞モデルマウスなど)を用いて、デクスメデトミジンなどのα2アドレナリン受容体作動薬の心不全治療効果を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、α2アドレナリン受容体作動薬の心不全治療効果を慢性心不全モデル動物で検討中である。現在までにデクスメデトミジンの経口投与が、心不全モデル動物のmorbidityやmortalityを改善する可能性があることが示されている。一方で、別のα2アドレナリン受容体作動薬であるグアンファシンには、強い血管収縮作用があることが判明し、心不全治療には不向きであることがすでに判明している。これらの状況を踏まえ、本研究は研究計画通りほぼ順調に進んでいると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、α2アドレナリン受容体作動薬の心不全治療効果を、慢性心不全モデル動物において明らかにするとともに、研究計画に従い、α2アドレナリン受容体作動薬の種類による治療効果の差異を明らかにする予定である。また今後、β遮断薬やアンジオテンシン受容体遮断薬などの他の薬剤との相互作用を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
動物購入・飼育費の一部を他の財源より支出したため、また一部の薬品はすでに所有しているものを使用したため、繰越分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請書に記載した通り、次年度は主として動物購入・飼育費や薬品購入費用などの消耗品費および研究成果を国際学会で発表するための旅費として研究費を使用する予定である。また繰越分は、病理組織標本作製などの受託費として使用するとともに、研究成果をオープンアクセス誌に投稿する際の投稿料などに使用する予定である。
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