2016 Fiscal Year Research-status Report
新規HDL機能評価法の実用化と冠動脈疾患リスクの層別化
Project/Area Number |
15K09121
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 達郎 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (00379413)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50379418)
平田 健一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20283880)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高比重リポタンパク質 / HDL / コレステロール引き抜き / 動脈硬化 / 脂質代謝異常 / 冠動脈疾患 / 循環器 |
Outline of Annual Research Achievements |
血中の高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)濃度は動脈硬化性疾患の発症と逆相関する。しかし、最近の介入試験ではHDL-C上昇薬の心血管イベント抑制効果は証明されず、HDLの量よりは機能が重要視されている。とくに、HDL粒子のコレステロール引抜き作用は、HDL機能の主体と考えられている。しかし、コレステロール引抜き能の評価方法は複雑で再現性にも問題があった。 我々は、 放射性同位元素や培養細胞を用いず、血清中のHDL粒子に蛍光標識コレステロールを直接取込ませ、プレートに固相化したアポA-I抗体でHDLを捕捉した後のHDLの蛍光強度を「HDL特異的コレステロール取込み能」として評価する新規測定系を開発した。新規の「コレステロール取込み能」は、細胞を用いた従来の「コレステロール引き抜き能」と強い相関を認め、従来法の代用として臨床応用することが可能であることが示された。コレステロール取込み能を制御する因子として、抗酸化酵素パラオキソナーゼ1と、アポA1の酸化変性を起こすミエロペルオキシダーゼ度が、HDLコレステロール取込み能を制御していた。 冠動脈疾患患者を対象にコレステロール取込み能を測定したところ、ハイリスク患者、とくに繰り返してカテーテル治療を必要とした患者では取込み能が低値であった。さらに、光干渉断層法による解析では、コレステロール取込み能と繊維性被膜との間には相関は認めなかったものの、薄い繊維性被膜を有する不安定プラークを有する患者では、コレステロール取込み能とLipid Index (=脂質コアの量)との間に正相関が認められた。以上より、コレステロール取込み能はHDLの機能を反映しており、冠動脈プラーク内の脂質コアの体積を制御していると推察された。したがって、冠動脈疾患患者において、コレステロール取込み能が残余リスクとなることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いたHDLコレステロール取り込み能の評価方法の論文がアクセプトされ、本研究の原理と方法論に関して業績を公開できた。臨床研究、基礎研究ともにおおむね順調に進行している。臨床研究では症例数を増やしてコレステロール取込み能と冠動脈疾患の予後との関係を前向きに検討してきたが、仮説通りにHDL取り込み能が予後規定因子になることが証明できた。また、HDLコレステロール取り込み能と冠動脈プラークの性状への影響も評価できた。さらに、本測定法の臨床応用を目指した自動化に関しては、ほぼ技術面での問題を解決でき、実用化の目処が立った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 臨床研究では、コレステロール取込み能が冠動脈病変の形状(不安定性)や冠動脈疾患の予後(心血管イベント)に及ぼす影響を前向きに検討してきたが、さらに症例数を増やすとともに長期間の観察を行う予定である。また、冠動脈プラークの性状に関しても、長期的な変化を観察することを検討している。 2. この新規測定系の再現性と簡便性の向上のためにコレステロール標識を蛍光から化学発光法に変更し、汎用自動解析器による自動測定の実用化と市販化を目指す。このような簡便で正確なHDL機能評価の普及によって、HDL機能不全の病態や薬剤の有効性の評価に役立つことが期待される。 3. コレステロール取込み能を制御する因子を同定するとともに、合成HDLを用いた基礎研究によりってその作用機序を明らかにするための実験を継続する。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] Cholesterol Uptake Capacity: A New Measure of High-Density Lipoprotein Functionality for Coronary Risk Assessment.2017
Author(s)
Harada A, Toh R, Murakami K, Kiriyama M, Yoshikawa K, Miwa K, Kubo T, Irino Y, Tanaka N, Nishimura K, Ishida T, Hirata K.
-
Journal Title
Journal of Applied Laboratory Medicine.
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
[Presentation] Inverse Association Between HDL Cholesterol Uptake Capacity And Coronary Atherosclerotic Burden: OCT-based Observation Study2017
Author(s)
Toshihiko Oshita, Ryuji Toh, Amane Harada, Katsuhiro Murakami, Maria Kiriyama, Keiko Yoshikawa, Keiko Miwa, Kenta Mori, Yasuhiro Irino, Hiromasa Otake, Toshiro Shinke, Tatsuro Ishida, Ken-ichi Hirata
Organizer
第81回 日本循環器学会学術集会
Place of Presentation
金沢
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-19
-
-
-
[Presentation] Cholesterol Uptake Capacity: A New Measure of HDL Functionality for Coronary Risk Stratification2016
Author(s)
Amane Harada, Ryuji Toh, Katsuhiro Murakami, Maria Kiriyama, Keiko Yoshikawa, Keiko Miwa, Takuya Kubo, Yasuhiro Irino, Kenta Mori, Nobuaki Tanaka, Kunihiro Nishimura, Tatsuro Ishida, Ken-ichi Hirata
Organizer
第33回 ISHR日本部会総会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2016-12-16 – 2016-12-17
Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] Cholesterol uptake capacity, a new concept of HDL functionality, for risk stratification in coronary artery disease2016
Author(s)
Toh R, Harada A, Murakami K, Kiriyama M, Yoshikawa K, Miwa K, Irino Y, Mori K, Tanaka N, Nishimura K, Ishida T, Hirata K.
Organizer
68th AACC Annual Scientific Meeting & Clinical Lab Expo
Place of Presentation
Philadelphia, USA
Year and Date
2016-08-02 – 2016-08-08
Int'l Joint Research
-
[Presentation] 高比重リポ蛋白 (HDL) の抗炎症効果はリン脂質構成に依存する2016
Author(s)
Tanaka N, Irino Y, Shinohara M, Tsuda S, Nagao M, Mori K, Mori T, Hara T, Toh R, Ishida T, Hirata K.
Organizer
第48回日本動脈硬化学会総会・学術集会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2016-07-14 – 2016-07-16
-