2017 Fiscal Year Research-status Report
心不全におけるKv1.3およびKCa3.1がエフェクターT細胞分化に果たす役割
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15K09129
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 加代子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20246482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敦 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00625626)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 臨床血管学 / 心不全 / T細胞 / 免疫記憶 / カリウムチャンネル / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
人口動態統計による死因年間推計では心疾患19万3000人、脳血管心疾患10万7000人、合わせて年間30万人が心血管疾患により死亡している。超高齢化社会となり心不全の割合は増加し、虚血性心疾患や心血管疾患の予後に心不全管理は重要な問題となっている。本研究では心不全の病態機序や管理に重要なT細胞免疫記憶、エフェクターT細胞 (Teff)分化増殖、TeffであるヘルパーT細胞 (Th)や障害性T細胞 (CTL)、炎症性サイトカインの関与について検討している。 心不全群のT細胞メモリーサブセットと活性化T細胞の割合、心不全重症度の指標であるNYHA分類によるT細胞サブセットとカリウムチャンネルであるKV1.3の役割を検討した。心不全群ではT細胞のメモリー分画として、セントラルメモリーT細胞(TCM)に対し、エフェクターメモリーT細胞(TEM)およびエフェクターT細胞(TEMRA, Teff)の割合が有意に高く(Naive vs TEMRA p<0.0001, TCM vs TEMRA p<0.0001, TEM vs TEMRA p<0.0001 )、CD69+T細胞が有意に増加していた(CD4+CD69+ vs control p<0.0001, CD8+CD69+ vs control p<0.0001)。また、心不全の増悪により、特にNYHA III+IV群ではCCR7- Kv1.3発現の増加とIFNγ産生CD4+細胞(Th1)、IFNγ産生CD8+T細胞、perforin+granzime+CD8+T細胞の増加を認めた。 したがって、心不全患者ではT細胞が活性化しており、Th1とともにCD8+CTLが心不全の発症、増悪に関与している可能性が示唆された。なかでもTeffの存在割合が高いことの理由として、T細胞上のKv1.3発現が亢進しているためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.慢性心不全の重症度における炎症所見およびT細胞サブセットの変化 慢性心不全患者においてNYHA分類が重症になるにつれ、CD69陽性の活性化したCD4+ T細胞、CD8+ T細胞の増加、さらにTEMRAであるIFNγ+Th1、IL17+Th17、perforin+Granzime+CD8+CTL細胞の増加が認められた。 2.慢性心不全患者におけるT細胞メモリー分画の異常 心不全患者では炎症性サイトカインを産生するTEMRAが多いことより、コントロール群に比しTCMよりTEMやTEMRAが増加していると考えられ検証した。その結果、心不全患者ではCD4+T細胞、CD8+T細胞ともにTEMおよびTEMRAが著名に増加していた。 また、T細胞上にはKv1.3とKca3.1の二つのKチャネルが存在し、TEMではKv1.3が多く、TCMではKca3.1が多いことが知られている。心不全患者の病状を規定するTh1、Th17、CD8+CTLなどのTEMRAが多く存在する機序として、Kv1.3発現増加によるT細胞のエフェクター機能獲得が亢進していると考え、NYHA重症度によるKv1.3、Kca3.1発現を検討した。その結果、CD4+T細胞、CD8+T細胞ともに心不全患者では重症になるにつれCCR7-Kv1.3+TEMが増加していた。一方、CCR7+Kca3.1+TCMの増加は認められなかった。さらに、パッチクランプによりT細胞上のK電流を測定し、心不全患者のT細胞上に発現するKチャネルの確認を試みた。パッチクランプによるK電流の測定結果からは、心不全患者はコントロールに比較してKv1.3が多く、Kca3.1が少ない傾向にあることが明らかとなった。また、活性化したTeffではZap70の亢進が観察され、Kv1.3との関連が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究結果を総括し不十分な点を踏まえ、以下の研究を行う。 1. 慢性心不全群におけるT細胞のKv1.3チャンネルによるエフェクター作用増強:心不全患者ではT細胞の活性化と重症度に応じ、Kv1.3の発現上昇、TEM(CCR7-CD45RA-)、Teff (CCR7-CD45RA+)増加、すなわちTh1、Th17、CD8陽性CTL産生サイトカインが増加していた。Kv1.3の発現上昇と機能活性化が共に重要であることを、パッチクランプ法で心不全およびコントロールCD4T細胞、CD8T細胞におけるKv1.3およびKca3.1チャンネル電流を詳細に解析検討する。 2. Kv1.3とKCa3.1の免疫シナプス形成におけるT細胞活性化機序の解析:TCR刺激によりKv1.3およびKCa3.1は免疫シナプスにZAP70、p56lck、CD3と複合体を形成し、中心部超分子クラスター(c-SMAC)から周辺部超分子クラスター(p-SMAC)に移動、細胞内Ca2+濃度の上昇とT細胞活性化が起こる。心不全患者のT細胞で免疫シナプス形成が認められるか、Kv1.3およびKCa3.1、ZAP70、p56lck、CD4、CD8、CD3が成熟シナプス形成に関与しているか検討する。 3.治療抵抗性の心不全患者におけるT細胞KV1.3およびKCa3.1異常の検討:Remodelingを来たした虚血性拡張型心筋症、治療抵抗性の拡張型心筋症、肥大型心筋症の拡張相、弁膜症性心筋症においてKv1.3およびKCa3.1の異常が認められるのか、末梢血CD3細胞のKV1.3およびKCa3.1のSNPを認めるか解析する。また、心筋生検を行った患者の心筋組織を免疫染色行いKv1.3+T細胞、KCa3.1+T細胞の浸潤の有無とphenotypeを同定する。
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Causes of Carryover |
(理由):心不全患者エフェクターT細胞機能亢進を解析するため、T細胞上のKv1.3およびKCa3.1電流をホールセルパッチクランプ法で解析中、顕微鏡システムの油圧マイクロマニピュレータが故障し、旧式システムなため修理およびシステム調節に非常に時間を要した。H30年1月になり実験再開可能となったが、十分な症例数解析が行えず結論に至っていない。そのため、次年度(H30年度)まで補助事業期間を延長し、パッチクランプ法によるT細胞におけるKV1.3およびKCa3.1チャンネルにかかわるK電流の測定を行い、引き続きシナプス解析実験、T細胞におけるKV1.3およびKCa3.1チャンネルの遺伝子異常、心筋生検組織での発現解析を行う。 (使用計画):助成金は、次年度に本年度に行う予定であったパッチクランプ法によるT細胞上のKv1.3およびKCa3.1電流、共焦点レーザー顕微鏡による免疫シナプス解析、遺伝子解析、免疫染色に必要な試薬や抗体などの消耗品購入に使用する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Genetic basis of cardiomyopathy and the genotypes involved in prognosis and left ventricular reverse remodeling2018
Author(s)
Tobita T, Nomura S, Fujita T, Morita H, Asano Y, Onoue K, Ito M, Imai Y, Suzuki A, Ko T, Satoh M, Fujita K, Naito AT, Furutani Y, Toko H, Harada M, Amiya E, Hatano M, Takimoto E, Shiga T, Nakanishi T, Sakata Y, Ono M, Saito Y, Takashima S, Hagiwara N, Aburatani H, Komuro I.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 8
Pages: 20114-20119
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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