2015 Fiscal Year Research-status Report
心室細動発症に関連する遺伝子変異のゲノムワイド探索とその分子機序の解明
Project/Area Number |
15K09136
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 不整脈 / 遺伝子変異 / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性に致死性不整脈を生じている家系の血液サンプルを用いて、次世代シーケンサーによるエキソーム解析を行ったところ、不整脈発症者特異的にTMEM168遺伝子に未知の変異が生じていることを見出した。その結果、アミノ酸変異(R539Q)も生じていることが分かった。この変異については、サンガー法によるシークエンスでも確認した。また、R539は動物種にかかわらず保存されているアミノ酸である。次に、野生型および変異型TMEM168の発現ベクターを作製し、このベクターをCos7細胞またはマウス培養心筋細胞(HL-1細胞)に発現させ、その細胞内局在を調べたところ、両細胞において、野生型および変異型TMEM168共に、核膜に局在していた。HL-1細胞を用いて電気生理学的実験を行ったところ、変異型TMEM168を発現させた場合、野生型TMEM168を発現させた場合と比較して、有意にナトリウムチャネル電流が減少していた。一方、カリウムチャネル電流については、変異型と野生型の間で差は認められなかった。そこで、ナトリウムチャネルに着目してさらに検討を行った。ナトリウムチャネルの一つであるNav1.5のαサブユニットの発現量に関して、HL-1細胞に変異型TMEM168を発現させた場合、野生型TMEM168を発現させた場合と比較して、その発現量が低下していた。このことが、変異型TMEM168によるナトリウムチャネル電流の減少につながっていると考えられた。以上のin vitro実験を踏まえて、TMEM168の変異が不整脈の原因となるメカニズムを個体レベルで解析するため、遺伝子編集技術TALEN法を利用して、TMEM168のヘテロノックアウトゼブラフィッシュを作製した。現在、このゼブラフィッシュの心臓の形態および電気生理学的解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーによる遺伝子解析は、膨大な塩基配列データ(1症例30億bp以上)のため非常な困難が伴うが、「研究実績の概要」で述べたように、致死性不整脈発症者特異的にTMEM168遺伝子に変異があることを見出すのに成功した。その機能解析についても想定以上に順調に進み、ナトリウムチャネル電流の異常およびナトリウムチャネル分子の発現量低下を明らかにすることが出来た。さらに、当初は2年目以降になると予想していた個体レベルの実験を初年度から開始することが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
TMEM168ヘテロノックアウトゼブラフィッシュについて、個体レベルでの電気生理学的実験を行う予定にしている。また、変異TMEM168ノックインマウスの作製に取りかかり、その個体を用いることでもTMEM168のR539Q変異が致死性不整脈を引き起こす機序を明らかにする。また、分子レベルでは、TMEM168がNav1.5の発現を制御するメカニズムについて解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
次世代シーケンサーによる解析が、想定していたよりもスムーズに進行し費用を節約できた。また、ゼブラフィッシュを利用した実験においても、他大学の研究者の協力を得ることで飼育費を抑制することが出来た。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
不整脈に関する電気生理学的実験を充実させるために使用する予定である。また、多くの経費がかかるマウス実験にも重点的に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)