2015 Fiscal Year Research-status Report
動脈瘤の進展における石灰化因子OPG・RANKL・TRAILネットワークの解明
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15K09155
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三宅 隆 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (40219746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 竜一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (40291439)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 石灰化 / Osteoprotegerin / RANKL |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈瘤の進展・破裂における血管壁の石灰化の影響を明らかにするために、動脈に石灰化を誘導するOsteoprotegerin(OPG)-Receptor activator of NFкB ligand(RANKL)-TNF related apoptosis-inducing ligand(TRAIL) ネットワークの解析を行い、動脈瘤治療の標的分子としての可能性を検討した。 生体内でOPGは石灰化を促進するRANKLと細胞死を誘導するTRAILを抑制している。そのためOPG遺伝子を欠損させたOPG欠損マウスは、中膜の石灰化が加齢とともに進行する。このマウスを用い、塩化カルシウム(Cacl2)で誘発する腹部動脈瘤モデルを作製した。野生型マウスの動脈瘤に比べ、OPG欠損マウスは著明な動脈瘤の進行を示し、動脈壁の弾性線維は強く破壊されていた。摘出サンプルの検討では、OPG欠損マウスでは、RANKLの発現が亢進し、エラスチンなどの細胞外基質を分解するプロテアーゼ(MMP-2、MMP-9)活性が野生型マウスより高値を示していた。これらのことからOPGの欠損によるRANKLの活性化は、石灰化の誘導とともに動脈瘤の進展に強く関与することが示唆された。一方、動脈瘤の発症に大きく関与する因子にレニン・アンジオテンシン系がある。そこで、アンジオテンシンIIの全身投与による動脈瘤の形成をOPG欠損マウスで検討した。OPG欠損マウスは高濃度アンジオテンシンⅡ投与により、腎上部大動脈で壁内出血(動脈解離)を高頻度で発症することが判った。高濃度アンジオテンシンⅡ投与により血圧は上昇するが、動脈解離の発生頻度の低い野生型マウスや低濃度アンジオテンシンIIの血圧上昇と差はなく、OPG欠損が発症に関与すると考えられた。 細胞培養実験は、適度な石灰化を誘導する条件設定が終了し、機序の解析に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OPG欠損マウスはメスに比べ、オスの出産が少なく、研究開始時には必要数の確保が困難であった。しかし、繁殖の拡大によりサンプルの確保が可能となり、動物実験は順調に進むようになっている。細胞培養実験は、石灰化を誘導する条件設定に時間が掛かったため、若干遅れている。 これらの事から、本研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究を進める予定である。
1. 培養実験は条件設定が終わったので、分泌される蛋白や酵素の発現プロファイルと転写因子ネットワークの解析を行う。また、抗RANKL中和抗体、抗TRAIL中和抗体または標的となる転写因子の阻害剤を投与し、石灰化に伴う炎症反応の制御ポイントを検討する。これらの実験を通して、OPG/RANKL/TRAILネットワークで、動脈瘤の形成・破裂が制御可能な標的因子を同定する。 2. 動物実験では、OPG欠損が及ぼす動脈瘤への影響は評価できたので、石灰化因子と炎症性因子の関係の解明を進める。また、PETを使った実験系で、生体内での動脈の石灰化(17F-NaF)と炎症(17F-FDG)の活性化の関係を明らかにする。 3. アンジオテンシンIIの全身投与による動脈解離の検討では、血圧上昇の影響を排除するため、ヒドララジンで血圧を正常化する必要がある。これらの摘出サンプルで機序の解明を行う。
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Causes of Carryover |
細胞培養実験で、石灰化を誘導する条件設定に時間が掛かったため、予定していた関連因子の発現プロファイルの検討が年度内に実施できなかった。また、外注を予定していた標本の製作は、サンプルの揃う次年度の実施に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実施できなかった上記実験は、次年度に予定しているので、試薬などの物品費として使用する。また、次年度の助成金は、計画時に予定している実験で使用する予定である。
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