2015 Fiscal Year Research-status Report
小細胞肺がん治療のパラダイムシフトを指向した治療研究
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15K09174
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
礒部 威 島根大学, 医学部, 教授 (70284198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津端 由佳里 島根大学, 医学部, 助教 (50643417)
須谷 顕尚 島根大学, 医学部, 講師 (80306290)
沖本 民生 島根大学, 医学部, 助教 (00733586)
濱口 俊一 島根大学, 医学部, 助教 (70609354)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小細胞肺癌 / 薬剤耐性 / 塩酸イリノテカン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのがんを研究するために最もよく使用される一般的な実験モデルは、マウス皮下に腫瘍を形成させ、結果として得られた異種移植片に人のがんに有効と思われる様々な薬を投与したものである。この方法では、患者の実際の腫瘍の反応をほとんど予見できない。われわれが作成した肺がんの同所性移植モデルは、移植したヒト肺癌がマウスの肺の局所で増大・転移を生じ、マウスは呼吸不全のため死亡するという、臨床に類似したモデルである。限局型小細胞がんは、化学療法と放射線療法の併用によって約20%の症例で長期生存を得ることが可能であるが、80%の症例では再発、転移によって死に至っていることになる。初回治療に不応または治療終了から90日以内の再発(refractory relapse)を認める症例は、初回治療中に薬剤耐性を獲得し、二次治療への反応が乏しいため、治療には難渋する。小細胞肺癌に対する薬物療法は現時点でプラトーに達しており、新たな治療戦略の検討、開発が急務と考えられる。塩酸イリノテカン(CPT-11)は抗血管療法が期待される新規抗がん薬であり、連日投与によって毒性の回避と抗血管、抗血管新生作用が期待される。今年度は、ヒト小細胞がん細胞を用い、ヌードマウスの同所性移植モデルにおいてイリノテカンの抗腫瘍効果と血管新生阻害作用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヌードマウスにペントバルビタール 50 mg/kg を腹腔内投与し、麻酔下にヌードマウスの左胸部皮膚を約1 cm 切開し、壁側胸膜を露見させた後にシリンジおよび30Gの注射針にてマトリジェルと混合した癌細胞をヌードマウスの左肺に1.5x106個注入し、移植後1-2週間後に、コントロール(無治療)、各薬剤の単独、併用(投与方法を変えた群を設定)での比較試験を行った。移植後50日目にペントバルビタール 100 mg/kg 腹腔内投与安楽死させたのち、左肺への腫瘍生着、縦隔リンパ節転移、腹膜播種、胸水の有無を肉眼的に観察し肺を腫瘍と共に摘出し、肺重量を計測する。摘出した腫瘍組織を一部は凍結保存、残りはホルマリン固定し、分子生物学的、免疫組織学的検討を行った。治療後に得られたヌードマウスの癌組織を用いて、以下の免疫組織学的な検討を行った。検討項目は、血管新生促進因子であるVEGF、bFGF, IL-8、腫瘍における血管新生の評価としてCD31、細胞増殖能としてBrdU, アポトーシスとしてTUNELの各因子とした。染色性の検討は,VEGF、bFGF, IL-8については、陽性細胞率(<10%, 25%, 50%, 75% and 100%), 染色強度(none, 0; weak, +1; moderate, +2; and strong, +3),両者の合計スコア(Histrogical score)で判定した。CD31は、の平均血管密度(MVD)の定量のために、10箇所の無作為に選択した視野を、×100倍率で検討し、微小血管を定量した
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト小細胞肺癌の細胞株(N417)を用いて肺小細胞癌の塩酸イリノテカン(CPT-11)の耐性株を作成し、基礎的検討を継続する一方で、再発小細胞肺癌に対し、シスプラチン、エトポシド、少量イリノテカンの併用化学療法の容量設定する臨床試験を計画する。
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Causes of Carryover |
ヒト小細胞肺癌の細胞株(N417)を用いて肺小細胞癌の塩酸イリノテカン(CPT-11)の耐性株を作成中であり、そのための試薬、プラスチック製品として、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養の試薬、プラスチック製品、耐性判定(WST-8 assay)の購入に使用する。
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