2016 Fiscal Year Research-status Report
普及版COPD身体活動性評価法の確立とテーラーメイド治療の構築
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15K09187
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
南方 良章 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80295815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早田 敦志 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20458061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | COPD / 身体活動性 / 3軸加速度計 / 歩行速度 / 呼吸困難 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における身体活動性の評価と向上策の検討は、極めて重要な課題である。身体活動性の改善効果の評価には、客観性と再現性が重要であり、測定精度としては3軸加速度計を用いた方法が最も高い。我々は、これまで天候や休日を除く3日間のデータの分析が再現性の高い抽出法であることを確認し、また、気管支拡張薬追加投与による身体活動性の改善効果を確認してきた。しかし、従来使用してきた小型3軸加速度計であるActimarker (AM)が発売中止となり、新たにActive Style Pro HJA-750 (HJA)を用いて検証を行っている。まず健常者において、従来妥当性検証済みのAMとDynaPort Move Monitor (DMM)をHJAと同時に装着し、機器の妥当性を検証し、日本ケア・リハビリテーション学会や日本呼吸器学会にて報告した。現在、医学雑誌への採択を目指して追加検討を実施中である。 また、今年度は、COPD患者の種類別活動時間を健常者と比較し、歩行時間が有意に低下していることを示した。さらに、歩行パターンとして、COPDでは1日総歩数、歩行距離は有意に低下しているものの、歩行速度は健常者と変わらないことを示した。これは、距離当たりのエネルギー消費量の少ない速度で歩行している可能性が考えられた。この内容の論文はRehabil Nurs誌に採択された。 さらに、COPD患者の身体活動とmMRC呼吸困難スコアの関係を詳細に分析した。その結果、mMRCグレードが上昇する程身体活動性は低下するが、1.5METs・時/日以下を身体非活動とした場合、mMRC 2以上が最も感度の良い身体非活動性の予測指標であることを見出した。この内容の論文はInt J Chron Obstruct Pulmon Dis誌に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者において、新たな3軸加速度計であるHJAを、従来COPDに対する妥当性が検証されているAM(以前本邦使用可)およびDMM(主に欧州で頻用)との間で比較し、機器の妥当性は確認できた。論文作成に関してはまだ追加検討を実施中ではあるが、学会報告はおこないある程度の目的は達成できた。 さらに、COPD患者の活動性低下の特徴として、歩行に関する詳細な特徴を抽出することができた。すなわち、歩行時間や歩行距離は短縮しているが、歩行速度に関しては有意な低下を認めなかった(COPD: 1.05 m/sec、健常者: 1.06 m/sec)。この点は、筋力低下により歩行速度の低下(0.8 m/sec以下)がみられるサルコペニアとは一部異なる因子が存在する可能性が示唆され、今後検討が必要な新しい研究テーマが発掘されたと考える。 COPD患者の身体活動性、特に身体非活動の状態をより簡便に推測できる指標として、mMRC呼吸困難スケール 2以上を示すことができた。これにより、COPDの身体活動性の一つの特徴を抽出できたと同時に、mMRC呼吸困難スケールを用いることで身体非活動状態の患者の抽出が容易となり、臨床現場への有用な情報を提示できた。 身体活動性標準式の作成に向けて、関連候補因子として、①研究対象者背景、②呼吸機能検査、③運動耐容能、④体格、⑤併存症(糖尿病、貧血、心不全、低栄養、筋力低下など)、⑥不安・うつ、⑦呼吸困難感などをリストアップし、それぞれの指標と身体活動性との関係の検討をH28年1月より開始しており、順調に進みつつある。次年度以降も継続して測定を続け、関与因子の抽出をおこない、標準式作成を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、COPD患者において、HJAとAMやDMM等との間での妥当性を検討する。また、COPD患者の身体活動性を測定し、天候、休日等の影響ならびに、反復性が確保できる最低測定日数の検証を行い、結果を論文化する。 身体活動性標準式作成に対しては、リストアップした各因子の測定と身体活動性測定を行い、多数症例集積時点で多変量解析を用いて関与因子の抽出をおこない、抽出された関与因子を用いた重回帰式を作成し標準式とする。引き続き症例の集積に努める。 身体活動性維持・向上を目指した医療介入として、継続型運動療法でありモチベーション向上も期待できるフライングディスクアキュラシー競技の導入を推進する。競技の安全性確保の観点から、競技実施時のSpO2の低下や心拍数の増加を少数のCOPD患者において探索的検討を行ったところ、運動中止基準に到達しない範囲で実施できる傾向が確認できた。今後は症例数を増加させ、安全に実施可能かを分析し、さらに競技時における口すぼめ呼吸等の指導・導入などがSpO2や心拍数の変動を圧縮できるかどうかを検討する。 昨年度の検討で、COPD患者では歩行速度の低下を認めない結果を得たが(COPD: 1.05 m/sec、健常者: 1.06 m/sec)、これはサルコペニアの定義(歩行速度0.8 m/sec以下)と合致しない。老化に伴うサルコペニアとCOPDでは両者とも筋力低下、身体活動性低下を伴い、見かけ上同様の現象をとらえている様にも見えるが、サルコペニアは筋力低下が出発点であるのに対し、COPDでは呼吸機能低下が出発点である。すなわち、COPD特有の身体活動性低下の特徴が存在する可能性も考えられる。今後は、この点に関しても注目して検討を進めていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、国内学会には参加したが、国際学会へは出席できなかった。そのため、海外出張用の費用が多少残り、次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には国際学会も含めた学会発表を予定する。
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