2015 Fiscal Year Research-status Report
成人RSV感染症の重症化と血漿中LL-37の関連性について
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15K09190
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
倉井 大輔 杏林大学, 医学部, 助教 (60530665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 博一 国立感染症研究所, その他部局等, 室長 (20391807)
石井 晴之 杏林大学, 医学部, 准教授 (30406970)
皿谷 健 杏林大学, 医学部, 助教 (40549185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | RSV |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、成人RSV(Respiratory syncytial virus)感染症の重症化と自然免疫に作用するLL-37(カテリシジンファミリーに属するペプチド)の関連性の調査である。そのため、RSV感染患者を適切に診断する必要がある。小児においては、迅速RSV抗原検査の有用性が確認されている。しかし、成人では気道検体中のウイルス量が少ないため、成人では本検査の偽陰性がかなり多いことが判明してきた。そのため、成人では小児と異なり、RSV抗原検査を診断に用いることが困難である。PCR(polymerase chain reaction)法などの遺伝子を用いた検査が感度で優れ、本研究での確定診断に用いている。しかし、PCRは迅速性に欠け、コストの点でも劣っている。そのため、RSVが検出されやすい患者の特徴を調べることを行うことが必要と考えられた。 杏林大学病院に入院が必要な下気道感染疑い患者431人の検討において、下気道感染患者の約3%にPCR検査でRSVが陽性であった。RSVが検出された患者はすべて40歳以上で65歳以上の高齢者が全体の75%を占めた。COPD増悪が入院原因の50%を占め、残りは喘息発作か肺炎であった。また、同じ慢性呼吸器疾患患者でも間質性肺炎急性増悪時には、RSVは検出されなかった。 なお、Human rhino virus(HRV)検出患者とは異なる結果であった。HRV患者は喘息発作時に多く認め、40歳以下の成人にも検出され易かった。RSVが検出された期間は8月から3月であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下気道感染の約3%にRSVが検出され、特に、呼吸不全を呈したCOPD増悪患者にRSVが検出されやすい事がわかった。また、成人のRSVの検出時期は、小児のRSV流行時期と大きな差を認めなかった。なお、RSV感染の迅速抗原診断法は、成人では感度が極めて悪く、RSVの診断に適さないことがわかった。 上記より、効率的にRSV患者の集積のためには、RSV流行期にCOPD患者を中心に検体をすることが望ましいことがわかった。 現在までに、本研究のためにRSV気道感染が疑われる患者12人の検体(気道・血漿)を採取した。今後、PCR検査及びLL-37の測定に用いる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
成人RSV感染患者の精度の高い診断方法が存在しない。そのため、RSV感染の可能性の高いCOPD患者や呼吸不全を呈した高齢者など流行期を中心に検体採取を行うようにする。流行期は、小児の流行時期と大きな差がないことが予想されるため、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考にする。また、関連施設での検体採取を行うようにし、症例集積を継続する。 血漿LL-37の基準値が明確でないため、ウイルス感染・抗酸菌感染患者などで血漿でのLL-37の測定を行う。
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Causes of Carryover |
RSV感染を疑う症例にしぼり臨床検体を採取した。そのため、採取した臨床検体数が少なく、予定よりも少ない金額の使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
気道検体採取のための保存容器(培地入り)および、LL-37測定のための試薬を購入予定である。 また、結果については、学会での発表を予定しており、旅費使用を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Pathogen profiles and molecular epidemiology of respiratory viruses in Japanese inpatients with community-acquired pneumonia2016
Author(s)
Daisuke Kurai, Yoshiko Sasaki, Takeshi Saraya, Haruyuki Ishii, Hiroyuki Tsukagoshi, Kunihisa Kozawa, Akihide Ryo, Taisei Ishioka, Makoto Kuroda, Kazunori Oishi, Hajime Takizawa, Hirokazu Kimura
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Journal Title
Respiratory Investigation
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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