2015 Fiscal Year Research-status Report
気道粘液線毛輸送の攪乱因子となる肺microbiome由来抗原の同定とその制御
Project/Area Number |
15K09207
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉田 勉 東北大学, 大学病院, 講師 (80396473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 聡士 東北大学, 大学病院, 助教 (30732549)
奈良 正之 東北大学, 大学病院, 教授 (70374999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気道粘膜下腺 / パッチクランプ / Toll様受容体 / COPD増悪 / 難治性喘息 / 過分泌 / 微生物叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者喘息やCOPD 合併喘息などの難治例の存在が喘息死減少を妨げる大きな要因となり、また喀痰の多いCOPD症例では呼吸機能の経年低下が大きく、増悪の頻度を増やし、健康関連QOL を悪化させ、医療費の過剰な消費をもたらす。これらの病態には気道過分泌の持続および粘液線毛運動の破綻が深く関与しており、近年注目される肺微生物叢(microbiome) の質的・量的変化が影響していることが予想されるが詳細は未解明である。申請者らは気道分泌と粘液線毛運動の2 つの解析法を用いたアプローチにより、病的に変化する肺microbiome によって破綻する気道防御調節機構の病態生理の解明を行う。本研究成果により難治性喘息やCOPD 増悪頻回例に対する新規治療戦略の基礎を提供することが可能である。 今年度は、微生物抗原を認識するToll様受容体(TLR)7シグナルについて、その気道分泌に対する機能解析、気道分泌上皮細胞・分泌腺細胞上での発現および細胞内メカニズムを解析した。ブタ気道粘膜下腺細胞に対して生理的水分分泌を再現するため低濃度アセチルコリン(ACh 30nM)刺激下でパッチクランプ法(Whole cell mode)を適用することで分泌反応をCl-イオン電流量に変換し、TLR7リガンドの効果を確認したところ、細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)低下を伴ってイオン電流を抑制することが分かった。気道粘膜下腺細胞におけるTLR7発現はWestern blotting法およびRT-PCR法を用いてそれぞれ蛋白およびmRNAレベルでの十分な発現を確認した。近年、慢性好酸球性気道炎症を伴う喘息気道粘膜において、TLR7の発現低下および機能不全が病態増悪に寄与することが報告されており、今回明らかとなったTLR7による気道分泌抑制効果は、喘息気道におけるTLR7機能不全が気道過分泌を惹起する可能性を示唆する。以上の研究結果は平成28年4月の日本呼吸器学会総会および同年5月の米国胸部疾患学会国際会議で成果発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の当初の計画であった、TLR7シグナルの気道分泌に対する機能解析、気道分泌上皮細胞・分泌腺細胞上での発現および細胞内メカニズムの解析を行うことができた。細胞内メカニズムとしてFura-2を[Ca2+]i 蛍光プローブして検討することもできた。また、気道上皮細胞の線毛輸送運動の観察および周波数、振幅などを観察し定量化が可能な高速度カメラ付き顕微鏡システムを用いて、肺microbiomeに多く含まれると推測されるTLR2, 3, 5, 7の各リガンドによる攪乱効果を予備実験にて確認し、今後更なる研究進展のための基礎も構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
TLR7シグナルの気道分泌に対する機能解析、気道分泌上皮細胞・分泌腺細胞上での発現および細胞内メカニズムの解析については概ね当初計画通りに進んだ。しかし、高速度カメラ付き倒立顕微鏡を用いた気道上皮細胞の線毛輸送運動の観察およびTLR2, 3, 5, 7の各リガンドによる攪乱効果については、実施数がまだ少なく統計学的解析を行うのに必要な数を満たしていない。このため、平成28年度はTLR リガンド刺激の粘液線毛輸送能に対する影響を検討し、さらには既に臨床使用されている吸入長時間作用性β2 刺激薬や抗コリン薬による影響も検討を加えることで、最終的には肺microbiome 由来の抗原による影響を確認する。 本研究は肺microbiome に含まれる抗原が粘液線毛輸送能を中心とした気道粘膜防御機構を攪乱・破綻させるメカニズムを解明し、難治性喘息やCOPD 増悪頻回例への創薬の新規ターゲットを提供する可能性が高い。
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Causes of Carryover |
当初予定の人件費・謝金が、研究の進捗状況により今年度は使用しなかったことが原因と考えられる。ただし、平成27年度の研究成果は概ね達成できており、次年度使用額として使用することで研究に支障はきたさない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は当初の予定である高速度カメラ付き倒立顕微鏡を用いた気道上皮細胞の線毛輸送運動の観察およびTLR2, 3, 5, 7の各リガンドによる攪乱効果を優先的に確認するが、それと並行して平成28~29年度に予定していた菌特異的リボソーム16s rRNA に対する網羅的な定量的PCR により、健常人、喘息、COPD でのmicrobiome 解析を行う。ヒト気道は手術検体を用いた研究(東北大学大学院医学系研究科倫理委員会承認済:2012-1- 182)の一環として入手可能であり、肺癌や肺移植による切除肺除肺からの健常部および喘息やCOPD 併存例の気道を分けて採取し解析する。次年度の研究費はこれらの研究遂行に使用する予定である。
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[Journal Article] Possible role of Krüppel-like factor 5 in the remodeling of small airways and pulmonary vessels in chronic obstructive pulmonary disease.2016
Author(s)
Abe. K., H. Sugiura, Y. Hashimoto, T. Ichikawa, A. Koarai, M. Yamada, T. Numakura, K. Onodera, R. Tanaka, K. Sato, S. Yanagisawa, T. Okazaki, T. Tamada, T. Kikuchi and M. Ichinose.
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Journal Title
Respir Res
Volume: 17
Pages: 7
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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