2015 Fiscal Year Research-status Report
プロトン感知性受容体OGR1の慢性気道炎症、気道分泌への関与に関する研究
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15K09213
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
石塚 全 福井大学, 医学部, 教授 (50302477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気管支平滑筋細胞 / プロトン / OGR1 / IL-8 / NF-kB / デキサメタゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト気管支平滑筋細胞(Bronchial smooth muscle cells:BSMC)から細胞外酸性刺激(プロトン刺激)により、産生される因子を検索した。私たちが今まで報告してきたIL-6、connective tissue growth factor (CTGF)のほか、ケモカインとしてIL-8、MCP-1、マトリセルラー蛋白質トロンボスポンジン-1(TSP-1)、増殖因子のアンフィレグリン(AREG)が産生されることを見出した。これらの中で、IL-8の産生メカニズムを中心に研究を進めた。BSMCが細胞外酸性(プロトン)を感知する場合、プロトン感知性G蛋白質共役型受容体Ovarian cancer G protein-coupled receptor 1 (OGR1)を介していると予想されたので、siRNAを導入してOGR1発現を低下させると、細胞外酸性刺激によるIL-8産生は有意に抑制された。各種細胞内シグナル伝達因子阻害薬を用いて、細胞外酸性刺激によるBSMCのIL-8産生に対する効果を検討した結果、MEK1/2阻害薬、Protein kinase C(PKC)阻害薬、IkB kinase阻害薬によってIL-8産生が抑制された。細胞外酸性刺激によるNF-kB p65(Ser536)のリン酸化をウェスタンブロットで解析すると、刺激によるリン酸化の増強はわずかであったが、IkB kinase阻害薬の前処置によって、リン酸化が強力に抑制されたことより、IL-8産生にはNF-kBの基底状態での活性が必要であると考えられた。また、デキサメタゾンは30分間の前処理で濃度依存性に細胞外酸性刺激によるBSMCのIL-8産生を抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト気管支平滑筋細胞からのプロトン感知性受容体OGR1を介するIL-8産生メカニズム、特に産生に関与する細胞内シグナル伝達因子を明らかにした点では研究は進展していると言える。さらにデキサメタゾンが、おそらく別の蛋白質の誘導を介さずにIL-8を遺伝子転写レベルで抑制することを発見し、この機序についても研究を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト気管支平滑筋細胞 (BSMC)からのプロトン刺激によるOGR1を介するIL-8産生の細胞内メカニズムを検討している過程でデキサメタゾン(DEX)が強力にこのIL-8産生を抑制することを発見した。対照として用いたTumor necrosis factor (TNF)刺激によるIL-8産生については一般にDEXによって抑制されることが知られているが、その場合の抑制は部分的であり、一方、プロトン刺激によるIL-8産生はDEXにより強力に抑制された。そこで、DEXによるIL-8産生抑制メカニズムについてNF-KBや他の転写因子への影響について解析を進める予定である。また、BSMCだけでなく、気道上皮細胞を用いた研究に着手していきたい。
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