2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子化免疫調節剤の呼吸器疾患への治療応用の研究
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15K09224
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 隆 横浜市立大学, 医学部, 講師 (70510436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下里 剛士 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00467200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子細胞呼吸器学 / ナノ材料 / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、1.原発性肺がん長期生存モデル・安全性評価モデルの作成。および、2.炎症性肺疾患モデルの合成オリゴ核酸(ODN)治療介入による呼吸機能評価の検証を行った。原発性肺がんモデルに関して、治療効果を担うナノ粒子化Th1 potentiator ODNの経気道投与による致死的原発性肺がんモデルの長期生存に関する報告を行った(米国胸部疾患学会総会;Am J Respir Crit Care Med 191;2015:A2426および第13回US-JAPAN Symposium on Drug Delivery Systemにて口演発表)。さらに論文化も行い、米国癌学会(American Association for Cancer Research)のMolecular Cancer Therapeutics誌(Sato T, et al. 2015;14:2198)での報告を行った。この成果の発表・報告により、国内外で興味関心を惹起し、臨床応用に向けて有益な情報を得ることができた。平成27年度に予定していた長期生存モデルの作成も終了し、サンプルの解析にすすんでいる。 炎症性肺疾患モデルの解析においては、肺気腫モデルの検討を精力的にすすめた。特に、創傷治癒にも関係があるToll-like receptor 9欠損マウスの肺気腫モデルは、野生型における肺気腫モデルと比較して、呼吸機能の低下が高度であることを見出した。この結果は、気道細菌叢に対する自然免疫応答と肺組織破壊の関連を示唆する興味深いもので、2016年5月開催の米国胸部疾患学会総会(Am J Respir Crit Care Med 2016:A6324)で発表予定である。また、pH依存性ナノ粒子の臨床応用をすすめるに際して、病巣における気道酸性化の臨床研究を報告した(PeerJ 2015;3:e1448)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度研究実績の概要でも述べたように、原発性肺がん長期生存モデルの作成および解析は予定通り進行している。現在解析が終了している治療後1年生存モデル(n = 8)では、平均8.2個/最大肺冠状断面の残存腫瘍結節を確認している。本研究で使用する原発性肺癌モデルは腫瘍関連傍気管支リンパ組織(Tumor-induced bronchus associated lymphoid tissue;T-BALT)の発達がみられ、ヒト原発性肺癌のモデルとして最適であるが、治療早期モデル(治療後20日)の残存腫瘍結節の解析と比較して、興味深い差異が確認された。すなわち、治療後1年生存モデルではCD3(-)Foxp3陽性細胞を多く認め、治療後早期にみられるCD3(+) Foxp3陽性細胞との機能上の差異が示唆される。現在、これらのFoxp3陽性細胞がB細胞由来との仮定に基づき、平成28年度の継続研究内容として、その検証と機能解析を行っている。 炎症性肺疾患モデルの解析においては、平成27年度の研究実績の概要でも述べたように、興味深い結果が得られたToll-like receptor 9欠損肺気腫モデルに焦点を絞り、治療介入に用いるODNの選定を終え、呼吸機能の低下をきたす要因について分子生物学的・病理学的解析を開始し、平成28年度の継続研究内容として実施中である。 上記経過にて、現在までの進捗状況は当初予定通りおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果に基づき、当初予定通り平成28年度は、1.原発性肺がん治療後長期生存モデルの組織学的評価・安全性評価。および、2.炎症性肺疾患モデルの組織学的評価を行う。原発性肺がんモデルに関しては、研究の主要成果でもあるTh1 potentiator ODNの局所投与による腫瘍微小環境の改変に基づく抗腫瘍効果について、平成27年度は積極的に国内外の研究会・学会で報告し論文発表を行った。その結果、国内外で興味関心を喚起し、臨床応用に向けて有益な情報を得ることができた。特に、ピエゾ素子を用いた噴霧式経気道投与法は本研究で使用するナノ粒子の投与デバイスとして最適と考えられ、平成28年度より新たに研究開発に加える方針とした。また、平成27年度は炎症性肺疾患モデルの研究に関して、特に肺気腫モデルの解析を精力的に行った結果、創傷治癒過程にも関与があるToll-like receptor 9の欠損マウスを用いた肺気腫モデルでは、野生型マウスの肺気腫モデルと比較して呼吸機能の低下が有意に大きいという興味深い結果が見出された。2016年5月開催の米国胸部疾患学会総会・ディスカッションセッションでの報告と討議を踏まえて、今後の方策を検討する方針であるが、現時点ではこの結果を受けて、平成28年度は肺気腫モデルも含めた呼吸器疾患モデルにおけるuncultured bacteriaを含む気道細菌叢の解析も加える方針とした。Uncultured bacteriaを含む常在細菌叢の解析は、共同研究機関である信州大学・下里研究室との共同研究として実施する。
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Causes of Carryover |
当該助成金は、平成27年度実施内容の一部を、平成28年度にまたいで実施する計画としたことで、研究室における現有物品の活用が図られたことで生じた。具体的には、研究継続に必要なナノ粒子の作成更新を平成28年6月に行うこととしたことと、サンプル組織標本の追加作成・免疫組織染色試薬の更新を同じく平成28年6月に行うこととしたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成27年度中に採取したサンプルの詳細解析を実施するため、特に免疫組織染色試薬の新規取得および更新で繰越し分を使用する計画である(標本作成(HE染色標本40枚および未染スライド160枚で120,000円、1次/2次抗体取得・更新各5種類で500,000円、免疫染色備品で80,000円)。さらに炎症性肺疾患モデルの研究過程で発生した課題である気道細菌叢の解析に関しては、平成28年度に共同研究者と行うことで費用の軽減を図り、マウスモデルにおける気道のuncultured bacteriaの解析を50検体施行する予定で750,000円を計上している。
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Research Products
(10 results)