2018 Fiscal Year Research-status Report
気管支喘息における上皮間葉転換の発現機序に関する研究
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15K09225
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
工藤 誠 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (80405000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気管支平滑筋 / EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
EMT評価のための気道上皮細胞へのTGF-bでの刺激を行い、EMT関連の細胞内タンパクの確認の系は確立できた。また細胞レベルでの生化学的なEMT発生に関して、細胞内でのアクチンの確認もでき実験系の安定が得られた。以上でEMTの確認とその評価法も確立している。現在EMTを引き起こす条件を様々に変えて観察している。 この実験系を用いて、これまでにTGF-bなどにIL-17などを共刺激した一部の条件で、細胞内シグナル、EMT関連の転写調節因子Snail、PIP1の発現増加が確認されている。EMT現象は確認できたことになるものの、これらの刺激での腫瘍性の上皮細胞を用いた検討ではEMT誘導は一時的で、転写因子の発現などは減退。消失してしまうなど持続しないことが明らかになった。このため、間葉系細胞への固定化、形態の変化などの観察が難しいところである。 その中で、細胞内カルシウム濃度に影響するメサコリンなどの刺激をさらに追加するとEMTが増強する効果が認められた。これまでの報告で、平滑筋収縮刺激で平滑筋の肥大が起こる可能性が示唆されていることの基礎的な機序を説明するものである可能性がある。この検討には上皮細胞でのGPCRの発現、シグナルの変化の確認も必要であるが、これらが確認できれば、上皮細胞のEMTのみならず平滑筋における増殖・肥大への影響も考えられ、平滑筋細胞を用いてメサコリン刺激の影響を見ていくことも検討している。メサコリンはGPCR経由で平滑筋細胞内の小胞体からのカルシウム放出を誘導する。そこで、上皮細胞にEMTを誘導した後にメサコリン刺激を追加してEMTの固定化が起こるかどうかについても現在検討しているところである。 一方、平滑筋細胞のprimary cultureの寿命が短く、METと思われる転写因子の変化や、アクチンの減少などの確認が困難な状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度までにprimary cultureの実験系を含めて、生化学的な分析などを行っていく予定であったが、現在までの知見のところで報告したように、細胞培養系の寿命の問題があり(自然に継代を繰り返していくと、形態変化などが生じてしまっている)、EMT維持やMETの誘導の可否を検討することに遅れが生じている。 一方、腫瘍化した上皮細胞からのEMTについては、短期間ではあるが再現性のある転写因子の発現が観察できており、この変化の固定化、つまり間葉系細胞への分化傾向を示すための条件をさらに検討していく必要が明らかになった。先にも述べたように、メサコリンなどの刺激でEMTが増強される(シグナルの変化が増大する)ため、繰り返す刺激で固定化できるかの検討を追加している。これまでの検討で新たな機序や、EMT固定化の可能性が見出されており、これらの現象の再現性、至適条件の設定、機序の解明など新たな検討課題も出てきており、問題の整理にも時間がかかっていることが遅れにつながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
残された時間でEMTの維持・固定化の解明に集中して再現性の確認、主にウエスタンブロットを使ったたんぱく発現などの生化学的な検討、EMT維持の条件を明らかにしていく予定である。 また平滑筋細胞のprimary cultureで、継代で細胞の様相が変化してしまうため、また寿命も短いため不死化が可能かTERTを用いて行っていくことも検討している。
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Causes of Carryover |
実験系の安定に時間がかかり、抗体を使用した金額のかかる実験が持ち越されていたため。
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