2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K09228
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
中込 一之 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60401113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / ライノウィルス / 好酸球 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
緒言: 喘息はコントロール良好な疾患となったが、喘息増悪は今でもしばしば見られ、増悪の予防及び治療法の確立は重要と考えられる。喘息増悪の誘因で、最も頻度の高いものとして、ライノウィルス(rhino virus; RV)感染があげられる。また重症喘息では「治療下でもしばしば増悪」するが、その過程で好中球性炎症が発動し、治療抵抗性を獲得する。本研究は、RV感染及び好中球性炎症の制御に重点をおき、喘息増悪の予防及び治療戦略を立てることを目的とする。今年度は、重症喘息患者の好中球と健常人好中球の好酸球基底膜通過反応の誘導能の違いを検討した。 方法: 重症喘息患者及び健常人の末梢血好中球・好酸球を使用した。好中球・好酸球は、デキストラン、Percoll液、及びimmunomagnetic beadsによるnegative selectionにて分離した。好酸球基底膜通過反応(trans-basement membrane migration; TBM)は、Boyden chamber変法を用い、下室にLPS及び好中球を配置し、好酸球の上室からの遊走反応を測定した。 結果: 健常人末梢血の好中球それ自身は、好酸球TBMを誘導しないが、LPSで刺激すると、好酸球TBMを誘導した。また重症喘息患者の末梢血好中球は、それ自身で、好酸球TBMを誘導した。またLPS刺激で、好中球による好酸球TBMは亢進し、健常人と比べ、より低濃度のLPS刺激で好酸球TBMを増強した。 考察: 今回の研究で、好中球機能は、重症喘息患者と健常人で異なることが明らかとなった。すなわち、健常人末梢血の好中球それ自身は、好酸球TBMを誘導しなかったが、重症喘息の好中球は、単独で好酸球TBMを誘導した。さらに健常者好中球と比べ、LPSに対する反応性も亢進していた。従って、重症喘息では健常人と比較して好中球機能が活性化しており、これらの機序が重症喘息における好中球性及び好酸球性炎症の連動に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の研究実績だけでなく、現在以下のプロジェクトが進行中である ①好酸球性炎症及び好中球性炎症がRV感染に与える影響(RV感染の重症化を規定する要因の解明): RV感染の系で、副鼻腔炎の種類(好中球優位、好酸球優位)で、ウィルス複製能や炎症惹起能力などに差があるか検討する。好酸球性副鼻腔炎及び好中球性副鼻腔炎から得られた副鼻腔上皮細胞を、air-liquid interfaceで培養し、完全に分化させたあと、臨床株RV(RV-A16, B52, C15)を感染させ、上皮細胞におけるウィルス量及び培養液のサイトカイン・ケモカイン濃度を、RT-PCRまたはELISAで測定する。 ②Cadherin related family member (CDHR)3の好酸球機能に対する影響: CDHR3は、重度の喘息増悪に関係するとされるRV-Cの受容体である。好酸球は、デキストラン、Percoll液、及びimmunomagnetic beadsによるnegative selectionにて分離する。CDHR3でcoatしたplateとincubateし、残存好酸球ペルオキシダーゼ測定法で接着反応を測定する。またチトクロームC還元法を用い、活性酸素産生能を測定し、CDHR3の好酸球のeffector機能に対する直接的効果を検討する。 ③抗コリン薬や糖尿病薬の好中球性気道炎症に対する効果: 喫煙や肥満は、重症喘息における好中球性炎症に関与する可能性が指摘されている。実地臨床では、喫煙の伴うCOPDには抗コリン薬が、肥満に伴う糖尿病には糖尿病薬が使用される。これらの薬のマウス好中球性気道炎症に対する効果を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
①好酸球性炎症及び好中球性炎症がRV感染に与える影響(RV感染の重症化を規定する要因の解明)。今年度は、臨床株RVのcDNAを組み込んだplasmid (RV-A16, B52, C15; Wisconsin大学Dr. Gernより供与)を大腸菌内で増殖させ、in vitro transcription及びtrasnsfectionを行い、コンビナントウィルスを作成した。今後、副鼻腔炎の種類(好中球優位、好酸球優位)で、ウィルス複製能や炎症惹起能力などに差があるか検討する予定である。 ②CDHR3の好酸球機能に対する影響。今年度は、gene synthesisにより、リコンビナント蛋白を作成した。今後好酸球機能に対する影響を検討する予定である。 ③抗コリン薬や糖尿病薬の好中球性気道炎症に対する効果。今年度は、BALB/cマウスとSJLマウスの脾細胞を混合する系(mixed lymphocyte reaction; MLR)を用い、これらの薬のマウス脾細胞からのIL-17産生に対する影響を検討した。今後マウス好中球性気道炎症モデルでこれらの好中球性炎症に対する効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
入金が遅れたこともあり、主要プロジェクトである①好酸球性炎症及び好中球性炎症がRV感染に与える影響(RV感染の重症化を規定する要因の解明)のスタートが遅れ、今年度はウィルス作成にとどまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①好酸球性炎症及び好中球性炎症がRV感染に与える影響(RV感染の重症化を規定する要因の解明):今後ウィルスを精製したのち、副鼻腔炎の種類(好中球優位、好酸球優位)で、ウィルス複製能や炎症惹起能力などに差があるか検討する予定である。②CDHR3の好酸球機能に対する影響:今後好酸球機能に対する影響を検討する予定である。③抗コリン薬や糖尿病薬の好中球性気道炎症に対する効果:今後マウス好中球性気道炎症モデルでこれらの好中球性炎症に対する効果を検討する予定である。
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Research Products
(6 results)