2016 Fiscal Year Research-status Report
老化関連肺疾患におけるエクソソーム中 microRNAによる細胞間情報伝達
Project/Area Number |
15K09232
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
桑野 和善 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40205266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90468679)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エクソソーム / microRNA / オートファジー / 細胞老化 / 慢性閉塞性肺疾患 / 特発性肺線維症 / 気道上皮細胞 / 繊維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)閉塞性肺疾患における気道上皮由来エクソソーム中マイクロRNAの解明 喫煙刺激し老化した気道上皮由来エクソソームを線維芽細胞に添加すると,筋線維芽細胞へ分化した.マイクロRNAマイクロアレイ解析を用いて,エクソーム内マイクロRNA発現プロファイルを検討した.変化のあったマイクロRNAのうち,miR-210はオートファジーに関与するATG7の発現を抑制した.オートファジーの低下は筋線維芽細胞分化に関与した.以上の結果より,閉塞性肺疾患の病態において,気道上皮細胞由来エクソソーム内miR-210はオートファジーを介し気道線維化に関与すると考えられた.この結果は,新たなエクソソームを介した気道上皮細胞-線維芽細胞間の情報伝達の発見であるとともに,新規治療法の開発の可能性を示唆した.本研究はすでに論文として報告した. (2)特発性肺線維症(IPF)における線維芽細胞由来エクソソームのパラクライン作用の解明 線維芽細胞由来エクソソームが,IPF病態形成において重要な役割を担う気道上皮細胞に取り込まれることを確認した.TGF刺激で誘導した筋線維芽細胞由来エクソソームによる気道上皮細胞における細胞老化への関与を検討した.さらに,マイクロRNAマイクロアレイ解析にて筋線維芽細胞由来エクソソーム内マイクロRNAの発現プロファイルを検討したところ,複数のマイクロRNAで変化を認めた.同時に,疾患肺検体及び患者血清からエクソソームを抽出し,網羅的解析及び標的分子の同定を行っている.臨床検体は,近隣の他施設の協力を得たことで,定期的な収集が可能となった.In vitroで得られた結果を,動物モデルで評価するための実験を計画中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化関連肺疾患の一つである閉塞性肺疾患における気道上皮由来エクソソーム中マイクロRNAの気道線維化への関与をすでに論文にて報告した.同じく老化関連肺疾患である特発性肺線維症での筋線維芽細胞由来エクソソームの検討を行なっており,すでにエクソソーム内マイクロRNAの網羅的解析は終了している.培養細胞を用いた検討が比較的順調に進行している一方,動物モデルを用いたエクソソームの解析は遅れている.しかし,すでに今後必要と考える研究手法は確立している.臨床検体に関しては,IPF患者臨床検体の収集が問題であったが,近隣他施設の協力を得られたことで解決した.現在は定期的な臨床検体の収集が可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
1)慢性閉塞性肺疾患:気道の線維化機序の解明を目的に、これまでに解明した老化した気道上皮細胞由来のエクソソームが繊維芽細胞に与える影響に対して、繊維芽細胞由来のエクソソームが気道上皮に与える影響、例えば、細胞老化、細胞死、修復などについて検討する。エクソソーム中の有意なmicroRNAが同定されれば、その修飾による効果を検討する。 2)特発性肺線維症:肺線維芽細胞やTGFを用いて分化させた筋線維芽細胞由来のエクソソームを抽出し、気道上皮細胞の細胞死、細胞老化、細胞増殖、修復に対する影響を検討する。また、特発性肺線維症の患者より得られた線維芽細胞由来のエクソソームを抽出し、正常肺より得られた線維芽細胞由来のエクソソームと、気道上皮細胞に与える影響について比較検討する。
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