2015 Fiscal Year Research-status Report
腎疾患におけるmicroRNAの発現調節機序とバイオマーカーとしての有用性の検討
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15K09240
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今田 恒夫 山形大学, 医学部, 准教授 (60333952)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | microRNA / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.尿中総microRNA濃度と尿蛋白・腎生検組織変化との相関:現時点までに130症例の腎生検症例の尿からmicroRNAを抽出し、ほぼ全例で尿中microRNAが検出可能であった。尿中microRNA濃度は尿蛋白と正相関したが、腎組織変化(糸球体内増殖性変化、硬化病変、間質線維化)との相関は有意ではなかった。さらにIgA腎症88例のみを対象として1年間の腎機能(推定GFR)変化と尿中総microRNA量の関連を検討したところ、尿中microRNA濃度は1年間のeGFR変化との関連は有意ではなかった。 2.個々のmicroRNA濃度と腎病変、腎予後との関連と腎組織内局在:予備的検討で腎組織変化と相関を認めた各microRNA(miR-133b, miR-192, miR-200c, miR-30c)/RNU48比と1年間eGFR変化との関連を検討したところ、miR-133b/RNU48が有意な逆相関を認めたが、他のmicroRNAは有意な相関を示さなかった。In situ hybridization法ではmicroRNAは尿細管上皮細胞での発現が強く、糸球体内細胞、血管壁、間質細胞での発現は軽度であった。 3.コホート研究での成果:一般住民コホートにおいて、総死亡や心血管死亡との関連は、尿中蛋白濃度よりも、尿中アルブミン濃度の方が強いことを明らかにした(Sato H, et al. Clin Exp Nephrol 2016)。血中尿酸血値が、特に女性において総死亡、心血管死亡の独立した因子であることを明らかにした(Kamei K, et al. Clin Exp Nephrol 2016)。これらのことから、尿中アルブミン排泄、尿酸代謝に関わるmicroRNAが予後指標として検討対象となりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ヒト腎疾患症例における腎組織・尿microRNAと腎病変の関連についての解析:当初計画した腎生検400症例中、現時点で約130例まで解析が進み、腎組織病変(炎症、細胞増殖、硬化)や腎障害指標(蛋白尿、腎機能など)と腎組織・尿microRNAの関連を検討した。 (1)腎生検組織中microRNA定量・局在評価:In situ hybridization法にて腎生検組織における各microRNA発現の局在を検討したところ、主に尿細管上皮、さらに糸球体と間質の一部の細胞でmicroRNA発現を確認した。このことから、一定の発現量があるmicroRNAについては、現在の手法で局在の確認と半定量的評価は可能であることが明らかになった。(2)尿中microRNAの定量評価と分泌細胞の同定:腎疾患患者の新鮮尿からmicroRNA抽出後、microRNAを定量したところ、ほぼ全例で検出・定量が可能であったことから、本手法で研究を遂行することが可能であることが確認された。しかし、現段階では総microRNAについての解析が中心で、個別のmicroRNAについての定量評価はまだ不十分である。(3)microRNAの網羅的解析:ネフロン部位別のサンプル採取ができていないために、microRNAマイクロアレイ解析はまだ行われていない。 2.コホートにおける尿microRNAの腎疾患・心血管疾患リスクのバイオマーカーとしての有用性の検討:現時点までに、腎疾患患者約130人(平成20~24年採取)の尿検体からmicroRNA抽出後、総microRNA、腎病変との関連が想定される各microRNA(miR-133b, miR-192, miR-200c, miR-30c)を定量し、1年間のeGFR変化との相関を検討した。コホートを用いた解析は3年目に行う予定であったが初年度から繰り上げて開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ヒト腎疾患症例において、腎病変と腎組織・尿microRNAの関連を網羅的に解析する。当初計画した腎生検400症例まで、解析症例数を増やす予定である。また、原疾患別に(糖尿病性腎症、IgA腎症、ループス腎炎など)分類し、総microRNA、個別microRNAと腎病変、予後との関連を解析する予定である。腎生検組織中microRNA定量・局在評価:In situ hybridization (ISH)法にて尿細管上皮優位にmicroRNAは発現していることが示唆されており、さらにlaser microdissection法によるネフロン部位別切り出しで、詳細に解析する予定である。尿中microRNAの定量評価と分泌細胞の同定:exosome表面の分泌細胞のマーカー(NPHS2, AQP2など)標識により分別可能かを確認しその後microRNAの解析を行う予定である。microRNAの網羅的解析:laser microdissection法またはexosome表面マーカー標識による部位別サンプル採取が確立後にmicroRNAマイクロアレイ解析を行う予定である。 2.コホートで尿microRNAが腎疾患・心血管疾患リスクのバイオマーカーとなるか検証する。尿検体からのmicroRNA抽出・評価件数をさらに増やし、腎機能(eGFR変化)、心血管疾患、生命予後との関連を検討する予定である。 3.進行性腎障害動物モデルを用いた腎病変と腎組織・尿microRNA変化の関連の検証:上記1.2.の進捗状況に合わせて、5/6腎摘による進行性腎障害モデル、ストレプトゾシンによる糖尿病性腎症モデルのいずれかを用い、ヒト腎疾患症例で関連が示唆されたmicroRNAの関与を腎組織・尿検体で検証する予定である。
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Causes of Carryover |
予定されていた予算はほぼ使用したが、49,666円わずかに残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に消耗品購入に使用する予定である
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Serum uric acid levels and mortality in the Japanese population: the Yamagata (Takahata) study.2016
Author(s)
Kamei K, Konta T, Ichikawa K, Sato H, Suzuki N, Kabasawa A, Suzuki K, Hirayama A, Shibata Y, Watanabe T, Kato T, Ueno Y, Kayama T, Kubota I.
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Journal Title
Clin Exp Nephrol
Volume: Jan 16
Pages: -
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Comparison of the predictive ability of albuminuria and dipstick proteinuria for mortality in the Japanese population: the Yamagata (Takahata) study.2015
Author(s)
Sato H, Konta T, Ichikawa K, Suzuki N, Kabasawa A, Suzuki K, Hirayama A, Shibata Y, Watanabe T, Kato T, Ueno Y, Kayama T, Kubota I.
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Journal Title
Clin Exp Nephrol
Volume: Nov 5
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant