2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K09304
|
Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
徳本 正憲 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (80404010)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 血管石灰化 / リン / 血管平滑筋細胞 / 石灰化蛋白粒子 / 石灰化抑制因子 / ビスフォスフォネート |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病において高頻度に認められる血管石灰化は、生命予後に影響を及ぼすことが知られており、血管石灰化の治療は慢性腎臓病患者を含む動脈硬化症患者の生命予後の改善に有用であると考えられる。慢性腎臓病において蓄積するリンによって用量依存的に石灰化が誘導され、その進展メカニズムとして、骨軟骨形成性分化、細胞外基質の分解、アポトーシスおよび基質小胞の放出などが関与することが既に知られているが、発症に関与するメカニズムは明らかになっていない。 今回我々は、ヒト血管平滑筋細胞を用い、リンを負荷して石灰化を誘導し、リン負荷2週後の石灰化量と石灰化がまだ誘導される前のリン負荷1日後の石灰化関連因子の発現変化を比較検討した。リン負荷1日後にはまだ骨軟骨形成性分化は認められず、細胞外基質分解酵素の発現も増加していなかったが、リン負荷1日後の培養液中の石灰化蛋白粒子のカルシウム含量はリン負荷依存的に増加し、リン負荷2週後の石灰化量と正に相関することが明らかになった。また、リン負荷1日後のオステオプロテジェリンなどの石灰化抑制因子の発現や石灰化抑制因子の一つであるピロリン酸を産生する酵素であるENPP1の発現もリン負荷依存的に減少し、リン負荷1日後の培養液中の石灰化蛋白粒子のカルシウム含量およびリン負荷2週後の石灰化量は石灰化抑制因子やENPP1の発現と負に相関することも明らかになった。したがって、培養液中および血管平滑筋細胞表面の石灰化抑制因子の減少が、リン負荷による血管平滑筋細胞の発症に寄与している可能性が示唆された。実際、ピロリン酸様構造を有するビスフォスフォネート製剤を用いると石灰化の発症が抑制された。 現在、上市されている薬剤で石灰化の発症および進展の抑制に有用な薬剤を探索するとともに、血管石灰化に対する糖の影響を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
石灰化を誘導するのに最適なリンの負荷方法および量や培養ヒト血管平滑筋細胞を決定するためのPreliminaryな実験に時間を要したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、カルシフィラキスの治療に有効であると言われているカルシウム受容体刺激薬やチオ硫酸ナトリウム、CKD-MBDの治療に用いられ生命予後を改善する可能性が示唆されているビタミンD受容体刺激薬の石灰化に対する効果とそのメカニズムを検討している。 また、動脈中膜の血管石灰化は慢性腎臓病および糖尿病において特徴的で、栄養障害によっても増悪するため、糖負荷あるいは糖制限の石灰化に対する影響およびそのメカニズムについても検討中である。 今後は、石灰化の発症および進展に有効であった治療が、石灰化の退縮に有効であるか否か検討する。 さらには、一旦形成された石灰化を退縮させるためには、破骨細胞の存在が重要であると考えられるため、石灰化の進行抑制に有効な治療が単球を破骨細胞に分化誘導させることができるか否か検討していく。
|
Causes of Carryover |
昨年度以前に購入していた物品の残りがあり、有効期限の関係などもあって先にそちらを使用したことと、Preliminaryな実験に時間を要し、少し実験の進行が遅れたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に得られた知見から、石灰化治療に特に寄与する分子も明らかになってきたため、それらの分子の過剰発現やノックダウンを行い、その分子の寄与度を検討する必要があり、まずそれらの実験に必要な物品を購入する必要がある。 また、今年度は単球から破骨細胞を誘導する実験を行う予定であるため、単球および培養液、増殖因子などを購入する予定である。 同時に今年度に得られた研究成果を論文発表するための費用や学会発表のための旅費や参加費も必要となる予定である。
|