2016 Fiscal Year Research-status Report
アデノシンA2a受容体ノックアウトによるα-シヌクレイン神経毒性緩和機序の解明
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15K09308
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
荒若 繁樹 山形大学, 医学部, 准教授 (00344789)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経内科 / 分子病態 / 生化学 / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / α-シヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、パーキンソン病治療におけるアデノシンA2a受容体抑制の神経保護作用を明らかにすることを目的としている。アデノシンA2a受容体ノックアウトマウス脳にα-シヌクレインを発現させることにより、α‐シヌクレインによって惹起されるドパミン神経細胞変性および炎症細胞の集簇に対するアデノシンA2a受容体抑制の効果を解析する。α‐シヌクレインの発現は、2つの方法で行う。ひとつはアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて黒質ドパミン神経細胞にA53T変異型α‐シヌクレインを発現させる方法である。もうひとつは、予め調製しておいたα‐シヌクレイン凝集物を外部からマウス線条体に接種し、α‐シヌクレインのプリオン様伝播を引き起こさせる方法である。これらの動物モデルにおいて、運動機能、ドパミン神経細胞の脱落、ミクログリア・アストロサイト集簇の変化を経時的に評価する。 平成28年度には、前年度から引き続き実験材料の作製を行い、入手したアデノシンA2a受容体ノックアウトマウスの戻し交配を行い、遺伝背景をC57BL/6に変換した。また、目的遺伝子を高い効率でドパミン神経細胞に発現させるため、AAVベクターを従来の血清型2から血清型9に改変したウイルスの作製を行った。実験材料の準備が整ったので、ホモのアデノシンA2a受容体ノックアウトマウスとコントロールである野生型マウスの黒質ドパミン神経細胞にAAVを用いてA53T変異型α‐シヌクレインを発現させるところから本実験に着手した。経時的な変化を観察するため、ウイルス接種後2週、4週、8週などで脳を採取し、α‐シヌクレインによって惹起されるドパミン神経細胞の変性・脱落について、アデノシンA2a受容体の発現欠損が与える影響の有無を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
具体的な進捗状況として、本実験を開始する前に、局所接種の座標及びウイルス接種量を確認する実験を行った。新たに作製したA53T変異型α‐シヌクレインを発現する血清型9のAAV を、マウスの中脳黒質に接種した。2~3週間後に脳を採取し、α‐シヌクレインに対する抗体を用いて免疫組織学的に検討した。α‐シヌクレインの発現が、一側の黒質にできるだけ限局し、十分に観察されているか評価し、局所接種の座標及び接種ウイルス量の調節を行った。この予備実験を何度か繰り返し、局所接種の座標とウイルス接種量を決定した。次に、予備実験の条件に従い、C57BL/6に戻し交配したホモのA2a受容体ノックアウトマウス及びコントロールである野生型マウスに、このAAVを接種した。現在、経時的に脳を採取し、ドパミン神経細胞変性に違いがあるか解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の行動計画では、予備実験をふまえてアデノシンA2a受容体ノックアウトマウスにAAVを接種し、α‐シヌクレインを中脳黒質に発現させる本実験へ進むことを目標とした。さらに、採取した脳を用いて免疫組織学的に残存するドパミン神経細胞数を定量的に計測し、ミクログリア・アストロサイトの集簇を組織学的に評価するところまでを目標とした。しかし、C57BL/6への戻し交配に時間を費やした影響から、計画にやや遅れが生じている。平成28年度は、経時的な脳の採取を行い、ドパミン神経細胞数の解析を行っている段階である。平成29年度は、この解析を進め、さらにミクログリア・アストロサイトの集簇について評価を加える予定である。また、この実験が終了したら、直ちにプリオン様伝播を引き起こさせたノックアウトマウスの解析に移る予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進行状況の影響で平成28年度には、解析に使用する物品の購入、マウスの使用引数が、予定より下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本実験の開始とともに、経時的に観察するためのアデノシンA2a受容体ノックアウトマウス及びコントロールである野生型マウス(それぞれ1グループあたり7~8匹)の相当数を使用する予定です。そのため、飼育費などに支出が増える見込みです。ドパミン神経細胞の定量解析及びクログリア・アストロサイトの集簇を解析するため、免疫組織学を行うための抗体などの試薬に支出が増加する見込みです。また、使用に伴いウイルスの再作製が必要になると思われます。そのための支出も増加が見込まれます。
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