2015 Fiscal Year Research-status Report
ALS/FTLDの治療ターゲット同定を目指した分子病態の解明
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15K09323
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80286450)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 前頭側頭葉変性症 / 筋萎縮性側策硬化症 / FUS / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
(Aim1, 2) 我々は家族性ALSに関与する2つの異なる分子UBQLN2、OPTNが共に蛋白分解に関わるendosomal vesicleに関与しており、endosomeとautopahgyをつなぐ機能を持ち、late-endosomeとは独立したendosomeの新規の蛋白品質管理機構を形成していることを確認した。UBQLN2、OPTNそれぞれの変異が、同一のendosomal vesicleの形成に障害をおよぼすことは、ALSの病態分子カスケードへの関与の可能性を示すとともに、OPTNとUBQLN2がALSの新規病態スペクトルをなしていることを示唆している。 (Aim3, 4) C9orf72遺伝子変異より生じるDRPはタンパク質品質管理機構を障害し、TDP-43の凝集を引き起こして神経を変性させるという病態機序が示唆された。また塩基性DRPであるpoly-GRおよびpoly-PRはRNA結合タンパク質と共局在し、RNA代謝に干渉している可能性も同時に示唆された。C9orf72遺伝子変異による病態仮説には未知の点が多いが、現在ALS/FTLDの病態機序として考えられているタンパク質品質管理機構およびRNA品質管理機構の両方に、DRPを介して影響を及ぼしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、下記4つの国際誌に掲載され、十分な成果が得られた。本論文1)はすでに、10の国際誌に引用され,国際的に高い評価を得るとともにALSの病態解明に確かな進捗を認めている。 1)Yamakawa M, et al. Hum Mol Genet. 2015;24(6):1630-45. 2)Osaka M, et al. Hum Mol Genet. 2015;24(6):1617-29. 3)Osaka M, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2016;472(2):324-31. 4)Yagi T, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 2016 in press
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Strategy for Future Research Activity |
急速な高齢社会の進行により認知症を含む神経変性疾患の医療費の高騰はとどまるところを知らず、わが国の医療財政を圧迫している。神経変性疾患における医療、介護はわが国おいて最も大きな課題の一つといえる. その中の一つALSは進行性に運動神経が障害をしめし、数年のうちに呼吸不全に陥る致死性の疾患で、もっとも悲惨な疾患の一つとして認知されている。しかし、疾患の診断法、重症度を反映するバイオマーカーも確立しておらず、本疾患の患者、介護者の不安、絶望感は計り知れない. 一方、近年原因遺伝子が次々と同定されたことにより、ALSと若年性認知症の代表であるFTDが共通の分子基盤をもつ疾患スペクトラムであることが明らかとなった。さらに、神経変性疾患は病因蛋白の異常蓄積と伝播といった共通の病態メカニズムをもつことがわかり、ALS/FTDの病態メカニズムの理解は、他の神経変性疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病の理解へと展開が可能である。 特記すべきことは、同定されたほとんどのALS関連遺伝子はTDP-43を首座とするRNA品質管理機構とOPNLとp62を中心とした蛋白品質管理機構に集約されている点である。本我々は、2つの経路はクロストークし相互関連する病態経路を構成しているものと仮説している。プロジェクトの次の目標として、二つのパスウェイのクロストークを明らかとする. とくに、OPNL、UBQLN2、C9orf72反復配列異常伸長は、この2経路を結び付ける重要な分子と考えており、in vitroにのみならず、in vivoへと解析対象を展開させ、これら神経変性カスケードの解明と新規治療ターゲットを見出すことをめざしたい。
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Research Products
(7 results)