2016 Fiscal Year Research-status Report
脊髄小脳変性症の遺伝背景の解析と新規遺伝子同定に基づく病態解明
Project/Area Number |
15K09344
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
田中 健一 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50722881)
國井 美紗子 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80725200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / エクソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration: SCD)は、およそ60%は孤発性、30-40%は優性遺伝性、数%が劣性遺伝性である。孤発例の大部分は原因不明であり、家族例においても依然原因不明な一群が存在する。申請者らは近年、新型DNAシーケンサーを使用した脊髄小脳変性症家系例の解析を行い、新規遺伝子や新規表現型の報告を行ってきた。その解析を通じて、常染色体優性(家系および劣性遺伝性脊髄SCD家系において有力な新規責任遺伝子候補を複数同定している。そこで本研究では、新規責任遺伝子候補の孤発例、家族例における変異・多型の遺伝子解析、機能解析、剖検を得た家系における病理学的解析を通じて、SCDの責任遺伝子、疾患関連遺伝子を解明し、新たな疾患メカニズム、治療ターゲットを明らかにすることを目的とする。 平成27年度は我々が同定した新規責任遺伝子候補の中でも、優性遺伝性家系で同定したカルシウムチャネル遺伝子のミスセンス変異について、ミスセンス変異が細胞局在、タンパク凝集性については影響を与えないことを哺乳類培養細胞を用いて確認した。構造予測の面からミスセンス変異が、電位依存性チャネルの電位センサードメインに位置するgating charge residueであることを明らかにした。そのため、培養細胞を用いたパッチクランプを行い、変異によりカルシウム電流が変化することを確認した。また、剖検例が得られているため、当該カルシウムチャネルに対する抗体を用いて、詳細な病理学的検討を行った。 平成28年度は作成した変異のノックインマウスの表現型解析を行っている。上記のような解析を通じて現在論文投稿中である。 また劣性遺伝性の4家系について新規ではないものの、ほとんど報告のない遺伝子変異が判明し、論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初我々が主要なターゲットとして解析を行う予定であったチャネル遺伝子のうち一方であるカルシウムチャネルについては、前述のように細胞モデルを用いた機能解析、病理学的解析を順調に行うことができ、現在論文投稿中である。他グループから同遺伝子変異の報告もあり、脊髄小脳変性症の原因遺伝子であることが確実となっている。現在変異ノックインマウスを用いて、疾患発症に至る病態解析を行っており、おおむね予定通りに研究が進んでいる。もう一方の劣性遺伝性家系においてはホモ接合性ナンセンス変異が認められたチャネル遺伝子(遺伝子Y)については研究が進捗していない面もある。しかしながら、劣性遺伝性家系の解析を通じては、遺伝子Y変異家系以外に4家系で原因が判明しており、論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は優性遺伝性家系において同定されたカルシウムチャネルの変異について、ノックインマウスを用いた表現型解析を行っていくことを中心的な研究テーマとする。ノックインマウスの表現型解析、病理学的所見のヒト剖検例との比較、検討を継続する。また、野生型およびノックインマウススライスカルチャー上において、current clamp法ならびにvoltage clamp法を用いて神経細胞の発火活動を記録する。優性遺伝性家系においては高次脳機能障害を呈する例があることが分かっており、マウススライスカルチャー上ではlong term potentiation(LTP)誘導刺激を与えLTP成立に対する影響についても検討する。上記解析系を用いて、病態を阻害する薬剤同定も目指したい。上記解析系を用いて、カルシウムチャネル変異が引き起こす病態を阻害する薬剤同定を目指したい。 新型DNAシーケンサー既知SCD責任遺伝子の解析も引き続き進めていく。
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Causes of Carryover |
当初我々が主要なターゲットとして解析を行う予定であったチャネル遺伝子のうち一方であるカルシウムチャネルについては、前述のようにおおむね予定通りに研究が進んでいるが、モデルマウスである、変異ノックインマウスの完成に時間を要し、納入が2016年4月以降にずれ込んでしまったため、マウス解析用の前年度予算の一部を次年度に使用する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はカルシウムチャネルの変異について、ノックインマウスを用いた表現型解析を行っていくことを中心的な研究テーマとしていく。ノックインマウスは完成し、十分解析に耐えうるよう、繁殖もできており、作成費用、表現型解析、病理学的所見のヒト剖検例との比較、初代培養神経細胞およびマウススライスカルチャー上において、current clamp法ならびにvoltage clamp法を用いて神経細胞の発火活動の記録を行っていく。
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[Journal Article] MTCL1 plays an essential role in maintaining Purkinje neuron axon initial segment.2017
Author(s)
Satake T., Yamashita K., Hayashi K., Miyatake S., Tamura‐Nakano M., Doi H., Furuta Y., Shioi G., Miura E., Takeo YH., Yoshida K., Yahikozawa H., Matsumoto N., Yuzaki M., Suzuki A.
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Journal Title
The EMBO Journal
Volume: 36
Pages: 1227~1242
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Relationship between cortex and pulvinar abnormalities on diffusion-weighted imaging in status epilepticus.2016
Author(s)
Nakae Y, Kudo Y, Yamamoto R, Dobashi Y, Kawabata Y, Ikeda S, Yokoyama M, Higashiyama Y, Doi H, Johkura K, Tanaka F.
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Journal Title
J Neurol.
Volume: 263
Pages: 127-132
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The clinical and pathological features of autosomal-dominant SCA with CACNA1G mutation.2016
Author(s)
Doi H, Koyano S, Shiina M, Ogata K, Hirashima F, Inoue Y, Hashiguchi S, Kunii M, Kishida H, Yokota T, Mizusawa H, Mitsui J, Tsuji S, Matsumoto N, Ishikawa K and Tanaka F.
Organizer
第57回日本神経学会学術大会
Place of Presentation
神戸国際会議場(兵庫)
Year and Date
2016-05-21 – 2016-05-21
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