2015 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1の炎症原因遺伝子HBZによるHAM発症機構の解明とその制御
Project/Area Number |
15K09345
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
齊藤 峰輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40398285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HTLV-1 / HBZ / 慢性炎症 / 感染防御 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)による炎症形成の原因遺伝子HBZがHTLV-1関連脊髄症(HAM)の病態形成に及ぼす役割を明らかにするため、まずHTLV-1感染者末梢血単核球(PBMC)中のHBZ蛋白及び血漿中抗HBZ抗体の検出・定量系を構築し、PBMC におけるHBZ mRNA発現、HTLV-1プロウイルス量との関連を比較解析した。無症候性キャリアー、ATL患者及びHAM患者の血漿中に抗HBZ抗体が検出され、一部のHAM患者で高い抗体価を示したことから、感染者の生体内でHBZ蛋白が発現していることが示唆された。また、HTLV-1感染細胞株、感染者PBMCの双方において、HBZ蛋白発現量に検体間で大きな差があること、PBMC中のHBZ mRNA発現量とHBZ蛋白発現量、血漿中の抗HBZ抗体価との間に有意な相関が認められないことを見出した。これらの成果は論文として発表した(Retrovirology, 2016)。 一方、HAM患者で頻繁に検出される自己抗体の病因的意義解明と、HAMの病態を反映する新規バイオマーカーとしての有用性を検討するため、完全ヒト抗体産生ハイブリドーマ(SPYMEG細胞)を用いてHAM患者由来自己抗体産生細胞株の樹立を試みた。まず、HAM患者PBMCとSPYMEG細胞を融合してハイブリドーマを作製し、その培養上清をヒトT細胞の細胞抽出液と反応させることで陽性(即ち自己抗体産生)細胞集団を得た。さらに、限界希釈法によるクローニングを行い、多数のヒト単クローン抗体産生細胞株を得ることができた。今後、プロテインアレイを用いて標的抗原を同定し、HAM患者が産生する自己抗体と病態との関連を検討することで、新規バイオマーカーとしての有用性を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自家製抗HBZ単クローン抗体を用いて高感度なHBZ蛋白・抗HBZ抗体検出系を作製し、その有用性を多数のHTLV-1感染者患者検体(ATL患者42例、HAM患者120例、無症候性キャリアー48例)を用いて検証することができた。その結果、HTLV-1感染者(ATL患者、HAM患者、無症候性キャリアー)血漿中の抗HBZ抗体の検出頻度は、約10-17%と他のHTLV-1関連ウイルス蛋白質(90%以上)に比較して著しく低いこと、抗HBZ抗体価とTaxおよびHBZ mRNA発現量、HTLV-1プロウイルス量との相関が認められないこと、HBZ蛋白質は一部のATL患者のPBMCで検出可能であるが、HAM患者、無症候性キャリアーのPBMC中には検出できないことを明らかにして、論文として発表することができた(Retrovirology, 2016)。一方で、HAM患者由来自己抗体産生細胞株の樹立に関しても、想定よりかなり早く、かつ多数のHAM患者由来ヒト単クローン抗体産生細胞株を得ることができた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HBZ蛋白・抗HBZ抗体の発現量変動とHAM臨床病態との関連解析も進めたい。また、今回取得した多数のHAM患者由来ヒト単クローン抗体産生細胞株を用いて、HAM患者由来自己抗体の標的抗原を同定し、さらに病態との関連を検討することで、新規バイオマーカーとしての有用性を明らかにしたい。一方で、今年度行えなかったHBZ発現誘導に伴い誘導・抑制される宿主標的遺伝子群についても、HAM患者検体を用いて解析し、それら標的遺伝子の生体内における変動とHAM臨床病態との関連を明らかにしたい。一連の解析を通じて、HAMにおける慢性炎症形成や免疫異常(自己抗体産生を含む)の病態形成機序にHBZがどのように関与するのか、その分子メカニズムを解明し、HAMの新規診断法や治療薬開発につながるシーズの発見と将来の臨床応用に向けた研究基盤の構築を目指したい。
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Research Products
(6 results)