2016 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞における食事誘導性O-結合型糖修飾調節異常と、膵β細胞機能不全との関係
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15K09383
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
関根 理 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00402719)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | O-結合型糖修飾 / 膵臓 / インスリン分泌 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
タモキシフェン誘導性膵島特異的OGT遺伝子ノックアウトマウスを作成した。 これまでの検討にて、膵島特異的OGT遺伝子ノックアウトマウスは、タモキシフェン誘導後4-5週(早期相)より一過性に体重及び血中インスリン値の上昇を認めたが、その後血中インスリン値は減少していき、タモキシフェン誘導後10週(後期相)では血中インスリン値は対象マウスと比較して有意に低下していた。それと同時に空腹時血糖値の上昇及び体重減少を認め、糖尿病と同様の表現系を呈した。また、組織学的検討にて早期相並びに後期相の膵島におけるOGTやO-GlcNAc修飾蛋白の蛋白発現は低下していた。また、早期相では膵島内インスリン量の増加やIns2、Pdx1発現が増加していたが、後期相では膵組織に対する膵島面積は減少しており、膵島内インスリン蛋白発現の低下やIns1,2, MafAの発現が低下していた。また、透過型電子顕微鏡ではβ細胞においてインスリン顆粒の減少及び形態の乱れが認められた。さらにアポトーシスの評価のために行ったTUNEL染色では陽性細胞の増加を認めた。そして後期相ではND3-5, Mtco1, Cycなどミトコンドリア関連の遺伝子が増加しており、Ho1, Nqo1, Catalase, MnSODなどの酸化ストレス、抗酸化関連遺伝子も有意に増加していた。また、小胞体ストレスの増加が観察された。 一方、全身で作用するタモキシフェン誘導性OGT遺伝子ノックアウトマウスを作成した。このマウスは肝臓や骨格筋、膵臓や脂肪組織でのO-GlcNAc修飾蛋白の蛋白発現が減少していた。また、血糖低下を伴う致死性表現系を示した。 また、膵 β 細胞由来細胞株 MIN6に対してOGTのsi-RNAを投与したところ、OGT遺伝子発現の減少を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画のうち、「1)膵島特異的OGT遺伝子ノックアウトマウスにおける検討」については、タモキシフェン誘導後4-5週(早期相)では膵島内インスリン量の増加やIns2、Pdx1発現が増加を確認し、タモキシフェン誘導後10週(後期相)では膵島面積の減少やインスリン蛋白発現の減少を確認した。また、細胞内でのアポトーシスの存在を明らかにし、酸化ストレスや小胞体ストレスが関与していることが考えられた。 「2)膵島特異的OGT遺伝子ノックアウトモデルマウスから単離した膵島細胞における検討」については、タモキシフェン投与後10週のマウスにおいて実験に必要な単離膵島細胞の数が少なく、多くの匹数を用いて検討を行っていく。また、タモキシフェン誘導後5週におけるグルコース応答性のインスリン分泌能の評価を行ったが、結果の再現性が低いことなどから実験条件を検討している。 平成28年度以降の研究実施計画のうち、「1)2型糖尿病モデル動物を用いた検討」では、2型糖尿病モデルであるOLETFラットの52週令で、膵島面積の減少やインスリン遺伝子発現の減少の他に、O-GlcNAc修飾蛋白の発現が低下していたことより、O-GlcNAc修飾の調節異常がインスリン分泌不全や糖尿病発症に関係していることが考えられた。 「2) 単離した膵島細胞におけるO-GlcNAc調節酵素(OGT、OGA)の役割」については、単離膵島細胞へのsi-RNA導入効率が不安定のため、膵β細胞由来細胞株MIN6に対してOGTのsi-RNA導入を行ったところ、OGT遺伝子発現の低下を認めた。 「4) タモキシフェン誘導性に全身でのOGT遺伝子をノックアウトさせたマウスの作成」に成功しており、このマウスは血糖低下を伴う致死性表現系を示した。O-GlcNAc修飾は全身での細胞恒常性維持において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究実施計画の内容を継続することと、平成28年度以降の研究実施計画「1)2型糖尿病モデル動物を用いて、糖尿病発症における膵β細胞でのO-GlcNAc修飾の調節異常の評価」、および「2)単離膵島細胞におけるO-GlcNAc修飾酵素の阻害剤などの投与による膵β細胞機能やインスリン分泌能への影響の評価」を継続し、膵β細胞機能へのO-GlcNAc修飾の役割をさらに明らかにしていく。また、「4) タモキシフェン誘導性に全身でのOGT遺伝子をノックアウトさせたマウス」糖代謝への機構や生存に影響した因子の評価などを行っていく。
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[Journal Article] O-GlcNAcylation plays a physiologically important role in glucose homeostasis in pancreatic β cells rather than in insulin target tissues2017
Author(s)
Shogo Ida, Katsutaro Morino, Osamu Sekine, Natsuko Ohashi, Shinji Kume, Tokuhiro Chano, Kanako Iwasaki, Norio Harada, Nobuya Inagaki, Satoshi Ugi, Hiroshi Maegawa
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Journal Title
Diabetologia (in press)
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] O-linked β-N-acetylglucosamine modification of proteins is essential for foot process maturation and survival in podocytes.2017
Author(s)
Ono S, Kume S, Yasuda-Yamahara M, Yamahara K, Takeda N, Chin-Kanasaki M, Araki H, Sekine O, Yokoi H, Mukoyama M, Uzu T, Araki SI, Maegawa H
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Journal Title
Nephrol Dial Transplant
Volume: Feb 27
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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