2015 Fiscal Year Research-status Report
Txnipとp53を介した膵β細胞翻訳制御機構解明に基づく2型糖尿病治療の研究
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15K09390
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
幡中 雅行 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60572534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / β細胞 / 翻訳 / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
C57BL/6Jマウスに高脂肪食を16週間投与し、膵島を用いたポリリボゾームプロファイル(PRP)解析を行った。高脂肪食飼育マウス膵島では、通常食飼育マウスと比較して、Polysome/Monosome (P/M)比が減少しており、翻訳が全般的に抑制を受けていた。β細胞機能に重要であるinsulin, pdx1, Slc2a2, GcKのmRNAは高脂肪食飼育マウス膵島ではmonosome側にシフトしており、これらの分子の翻訳が抑制を受けることが示された。このとき、小胞体ストレスマーカー(Chop, Atf4, Bip, sXbp1)のmRNAレベルは増加しておらず、またChopやAtf4の翻訳促進は確認されなかった。これらの結果から、高脂肪によるβ細胞翻訳抑制のメカニズムは小胞体ストレス以外にあると考えられた。対照的に酸化ストレスマーカー(Gpx1, Sod1, Nrf2)は高脂肪食により増加することが確認された。膵免疫染色では、高脂肪食マウスβ細胞においてp53が核内へ局在化を示した。さらにp53の下流標的であるp21の発現は増強していた。これらのβ細胞ではDNA損傷マーカーであるγH2AXや酸化ストレスマーカーであるNitrotyrosineの発現は増加していた。高脂肪食により膵β細胞に酸化ストレスとそれに関連するDNA損傷をきたし、p53経路が活性化していることが想定された。次にMIN6細胞に対してdoxorubicin処理を行うことでDNA損傷ストレスを誘導した。doxorubicin処理によりp53発現量とp53リン酸化レベルが増加すること、P/M比は減少し、翻訳抑制をきたすことが確認された。近年p53が全般的翻訳抑制に寄与することが示されており、糖尿病病態においても、活性化したp53経路が翻訳抑制の重要メカニズムとして寄与することが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説に合致して、高脂肪食投与マウスの糖尿病病態における、p53の重要性が想定される実験結果が得られた。in vitroの実験結果と併せ、p53が本糖尿病モデルマウスの病態において、翻訳抑制に寄与し、β細胞不全の重要メカニズムであることに合致する研究結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、糖尿病病態における、β細胞翻訳制御破綻の分子機構と細胞機能障害との関連性を明らかにし、新たな2型糖尿病に対する治療戦略の分子基盤を創出することである。高脂肪食飼育マウスに加え、Wfs1欠損マウス、Txnip欠損マウスを解析することで、糖尿病病態におけるTxnipおよびp53の役割について追求していく。酸化ストレスおよびDNA損傷、p53経路、β細胞翻訳機能を解析する。ピオグリタゾン投与により、これまでの実験結果にて高脂肪食投与マウスの膵島翻訳効率が回復することが確認されている。高脂肪摂取、小胞体ストレス下の病態におけるピオグリタゾンによるTxnipやp53の制御および糖尿病治療効果、さらにはその翻訳改善のための分子メカニズムを解明していく。
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Causes of Carryover |
平成27年度は主に高脂肪食飼育マウスを用いた研究を行ったため、p53およびTxnip遺伝子改変マウスの作成・解析が次年度以降の見通しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後p53およびTxnip遺伝子改変マウスの作成を行う。必要十分数のマウスを確保した後、実験計画に沿って解析を行う。
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