2015 Fiscal Year Research-status Report
メタボ関連疾患における網羅的ゲノム・エピゲノム制御機構
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15K09409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
庄嶋 伸浩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00447393)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内科 / 糖尿病 / メタボリックシンドローム / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドローム・糖尿病は、内臓脂肪の蓄積が病態の根本にあり、エピゲノムの重要性が示唆されている。申請者は、2型糖尿病の全ゲノム解析により、ノンコーディングRNAを疾患感受性遺伝子として見出した。さらに、ヒト脂肪組織のノンコーディングRNA の網羅的検討により、インスリンシグナルに関与し、内臓脂肪において皮下脂肪と比較して発現が高いマイクロRNAを見出した。本研究では、日本人の皮下・内臓脂肪を用いて、ゲノムワイドにメチル化状態やマイクロRNA の発現量を調べ、細胞やマウスを用いた機能解析を行い、糖尿病・メタボリックシンドロームにおけるエピゲノム制御を統合的に解明する。 エピゲノム制御に関して、安定なゲノム修飾であるDNA のメチル化と、比較的動的なヒストン修飾の組み合わせが重要と考えられている。なかでも、DNA メチル化は、現在の遺伝子調節機構のほか、過去、未来のゲノム機能を含有する情報である。そこで、実際のヒト組織を利用した解析を行って,DNA のメチル化による遺伝子発現の変化を、網羅的に明らかにする基盤となる研究を行う。 マイクロRNA は配列により、ターゲットとなる遺伝子が予測できるが、詳細な分子メカニズムの詳細は不明である。脂肪分化への効果や、脂肪負荷時の発現制御、アディポカイン産生について、培養脂肪細胞やマウスでの検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織について同意を得た上で採取し、マイクロRNA およびDNA を抽出し、腹囲や血糖値などの糖尿病・メタボリックシンドローム関連の臨床的諸指標とあわせて相関解析を行った。糖尿病・メタボリックシンドローム関連の臨床的諸指標として、腹囲、空腹時血糖値、空腹時インスリン値、HOMA(homeostasis model assessment)によるインスリン抵抗性指標{空腹時インスリン(IU/ml)×空腹時血糖値(mg/dl)/405}、総コレステロール値、HDL-コレステロール値、中性脂肪値、収縮期・拡張期血圧、糖尿病・高血圧・高脂血症・肥満の家族歴など)を収集しロジスティック回帰分析に用いるデータセットを作成した。メチル化DNA 結合ドメイン(MBD)タンパク質を使用して、メチル化DNA 領域を特異的に濃縮した後、シーケンス解析を行う手法(MBD-based Methylation Sequencing)にてゲノムワイドにメチル化DNA 領域を検出した。データ処理に関しては、クオリティの確認、リファレンス配列へのアライメントを行った。その後、多型・変異の検出、アノテーションを行い、疾患候補変異の絞り込みを行った。その結果、糖尿病や肥満の早い段階で、メチル化をうけやすいマーカーとなる新規の遺伝子を認めた。また、内臓脂肪と皮下脂肪での肥満や代謝におけるメチル化の場所や数などを調べて、エピゲノム制御における違いを明らかにした。さらに、PPARγ やアディポネクチンのプロモーター領域において、メチル化の部位や度合いと糖尿病や肥満の関連を検討し、関連する部位を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られたエピゲノム制御の結果を基にして、メタボリックシンドローム・糖尿病に関連する遺伝子やノンコーディングRNA について、脂肪細胞の分化や成熟や肥満・糖尿病へ関与する分子メカニズムを検討する。マイクロRNA は、前駆マイクロRNA が切断されて、成熟マイクロRNA になる。その発現調節は、近傍のDNA のメチル化や、近傍の遺伝子とともに発現調節を受けることが多い。ノンコーディングRNAや遺伝子 のプロモーター領域におけるメチル化による発現制御を明らかにする。さらに、初代培養脂肪細胞等において、栄養状態を変化させることなどによりノンコーディングRNA や遺伝子の転写が増加するか検討する。 ノンコーディングRNA は、メッセンジャーRNA の切断と分解、蛋白質の翻訳抑制、DNA メチル化による転写制御により、遺伝子発現を制御している。ノンコーディングRNA のターゲットと予測される分子のプロモーター領域において、ルシフェラーゼアッセイ等で転写調節を確認する。また、脂肪細胞分化との関連を、マイクロRNA の過剰発現または発現抑制により、脂肪細胞分化マーカーの変化を調べる。褐色脂肪の関与についても、褐色細胞マーカーの変化を検討する。また、遺伝子を過剰発現や抑制したマウス等を用いて生体での役割を検討する。体重や血糖値・脂質への影響を検討する。さらに、1000ゲノムプロジェクトの集団内頻度情報、ENCODE の情報を参考として遺伝子のエピゲノム制御に関する機能を検討する。
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Research Products
(15 results)