2015 Fiscal Year Research-status Report
雌性の制御性T細胞の機能と組織分布に関わる分子機構の解明に基づく代謝改善法の確立
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15K09410
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 講師 (00419334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 慢性炎症 / インスリン抵抗性 / エストロゲン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
内臓脂肪蓄積に伴い、脂肪組織では慢性炎症が進展しインスリン抵抗性が誘導される。近年、肥大化脂肪組織では、免疫抑制能を有する制御性T細胞(Treg) が減少し慢性炎症が促進される結果、肥満に伴う糖代謝の悪化が助長されることが雄性マウスを用いた検討により報告された。一方エストロゲンはTregの分化を促進し、Tregを増加することから、肥満に伴うTregの変化が糖代謝に及ぼす影響とこれらにかかわる因子の同定を目的に研究をすすめた。 雄性、雌性および卵巣摘出による偽閉経マウス(OVX)に3か月間の高脂肪食負荷(HFD)を行い、脾臓と内臓脂肪におけるTreg数、慢性炎症および糖代謝を評価した。脾臓のTreg数は、雌雄差、OVXおよびHFD負荷による影響を認めなかった。一方、内臓脂肪のTregは、雄性では減少し、雌性では逆に増加が認められた。このHFDによる雌性のTreg増加は、OVXマウスでは認められず、何らかの性ホルモンの影響が考えられた。内臓脂肪のTregにおける遺伝子解析を行ったところ、内臓脂肪のTreg数の変化に一致して、雌性のHFDマウスではPPARgとST2の増加傾向を認めた。その他、脂肪にTregを局在化させる可能性のある分子の変動を認めており、今後本因子に関する検討を継続して行う。 Treg移植実験の実験条件を検討する目的で、閉経肥満マウス(OVX-HFD)に対し、Tregの自家移植を行った。その結果Treg移植は脂肪組織の慢性炎症を十分には抑制しなかったが、耐糖能を改善する傾向が認められた。今後も引き続きTreg移植の条件検討を行う。 エストロゲンのT細胞とTregへの作用を生体で検討するため、新たにT細胞特異的ERa欠損(TKO)およびTreg特異的ERa欠損マウス(TregKO)の作製を施行している。現在これらのマウスの繁殖を行っており、今後もマウスの作製を継続して行い、検討可能な個体数が得られ次第、表現型の解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子改変マウスTKOおよびTregKOの作製、繁殖に苦慮している。エストロゲンの免疫細胞における作用は受精・着床や妊娠の維持に重要であることが報告されており、その結果繁殖が遅れていると考えられる。今後も継続してTKOとTregKOの繁殖に努め、研究を行う予定である。また糖脂質代謝の検討を実施した後には、不妊症や不育症の観点でエストロゲン作用を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの内臓脂肪組織において雌雄でTreg数に差異を認めた。Tregの脂肪組織局在化に関連する可能性がある因子について、今後さらに検討を継続し、その機能の実証にむけて研究を継続する。 また遺伝子改変マウスTKOおよびTregKOの作製、繁殖を継続し、これらの解析を行う。さらにマウスの雌雄差がエストロゲン受容体の欠損でも再現できるかを検討することで、T細胞に対するエストロゲン作用が糖代謝調節に与える寄与とそのメカニズムの解析を行う。
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Research Products
(2 results)