2016 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺ホルモンはいかにしてエネルギー代謝を亢進させるか
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15K09436
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岩崎 泰正 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30303613)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / ミトコンドリア / 糖代謝 / 脂質代謝 / 脂肪酸合成 / 中性脂肪合成 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までの検討でミトコンドリア (MC) のヌクレオチドトランスポーター(ANTs)遺伝子が甲状腺ホルモン (TH) の標的であることを明らかにした。ATP は ANTを介して細胞質に輸送され代謝のエネルギー源として利用される。TH で誘導されるエネルギー代謝関連酵素遺伝子として最初に明らかにされたのはリンゴ酸酵素で、この酵素は TCA回路で過剰に産生されたリンゴ酸をピルビン酸に変換すると同時に、過剰に産生された acetyl CoA を脂肪酸 (FA) 合成のための NADPH として供給する。すなわち TH のエネルギー代謝に及ぼす影響を包括的に理解するためには、ANTs のみならず細胞質の糖脂質代謝関連遺伝子に対する効果を網羅的に解析する必要がある。そこで今年度は MC 関連遺伝子に加え、解糖系、TCA回路、糖新生、および脂質合成系遺伝子の転写調節領域(100種類以上)をクローニングし、TH (T3 100 nM) の効果を検討した。 その結果、MC 関連遺伝子に関しては、新たに POLG1, NRF2, Tfam, UCP5を候補遺伝子として見出した。また糖脂質代謝系に関しては、解糖系と糖新生系の両者を制御する PFK2、TCA 回路の開始点であるCS (クエン酸合成酵素)、解糖系と中性脂肪 (TG) 合成系の分岐点であるGPD1、糖代謝とアミノ酸代謝の連結点 GLUD1、TCA回路と脂質代謝の連結点であるACLY (ATPクエン酸リアーゼ)、FA 合成の主要な酵素であるACC1, FAS、SCD1 遺伝子の転写が T3 によって有意に誘導された。また TG 合成酵素 GPAT3、還元力を供給するPPP回路の GPD 遺伝子の発現も増加した。以上の結果より、TH は MC 関連遺伝子のみならず糖・脂質代謝全般の調節に、転写レベルで関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において私どもは、甲状腺ホルモンが発現に関係していると推察されるヒト糖・脂質代謝関連酵素 100 種類以上の遺伝子の転写調節領域を、多大の時間と労力をかけてクローニングした。また、それらをレポーター遺伝子に組み込んだ上、各々の遺伝子の転写活性に対する甲状腺ホルモンの直接効果を、主として肝細胞 (HepG2, HuH7) を用いた in vitro の系を用いて検証した。 その結果、上記の地道な検証作業を介して、糖・脂質代謝系における甲状腺ホルモンの分子標的に関し、古くから知られているリンゴ酸酵素遺伝子に加えて、新たな標的遺伝子 10 種以上を同定することができた。すなわち、甲状腺ホルモンの「新陳代謝促進作用」という曖昧な概念の分子実態を、その直接の標的遺伝子を同定することにより、徐々に明らかにすることができた。 今回同定された甲状腺ホルモン標的遺伝子は、ミトコンドリア関連遺伝子に加え、解糖系および脂肪酸、中性脂肪合成系に広範に分布していた。この結果は、甲状腺ホルモンを介した生体脂質膜の合成とエネルギー供給に大きな役割を果たしていることを示唆しており、下等脊椎動物の「成長・変態ホルモン」としての役割が、ヒトを含む高等脊椎動物でも維持されていることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、昨年度までの検討で得られた知見、すなわち甲状腺ホルモンの直接の標的であることが明らかにされた複数の遺伝子群を対象として、real-time PCR (TaqMan) 法を用いた解析を行う。すなわち対象遺伝子ごとに T3 添加によるmRNA量の変動を定量的に解析することにより、プロモーターベクターを用いて得られた転写解析結果が実際に細胞内で生じることを確認する。
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Causes of Carryover |
今回報告した2年目の研究は主に甲状腺ホルモン標的候補遺伝子のクローニングと転写活性評価を中心として行われた。このため新たな試薬を購入する必要が少なく、予算の消費も想定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究では、Real-time PCR解析用のプローブ(TaqMan プローブ)を大量に購入する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] CREB3L3 controls fatty acid oxidation and ketogenesis in synergy with PPARα2016
Author(s)
Nakagawa Y, Satoh A, Tezuka H, Han SI, Takei K, Iwasaki H, Yatoh S, Yahagi N, Suzuki H, Iwasaki Y, Sone H, Matsuzaka T, Yamada N, Shimano H.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 39182
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Diagnosis and treatment of adrenal insufficiency including adrenal crisis: a Japan Endocrine Society clinical practice guideline2016
Author(s)
Yanase T, Tajima T, Katabami T, Iwasaki Y, Tanahashi Y, Sugawara A, Hasegawa T, Mune T, Oki Y, Nakagawa Y, Miyamura N, Shimizu C, Otsuki M, Nomura M, Akehi Y, Tanabe M, Kasayama S.
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Journal Title
Endocrine Journal
Volume: 63
Pages: 765-784
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research