2015 Fiscal Year Research-status Report
炎症性疾患におけるImmunothrombosisの制御異常と新たな治療法の開発
Project/Area Number |
15K09459
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平橋 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70296573)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | Immunothrombosis / ヒストン / 好中球 / 血小板 / Mac-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食による2型糖尿病自然発症DIO (diet induced obesity)マウスにhistone 70 mg/kg投与したところ,通常飼料投与群に比して生存率の著明な低下を認めたため,これは糖尿病における易血栓性を示していると考えた.この高脂肪食+histone投与モデルにおいて、C57BL/6jマウスと比べ,Mac-1 KOマウスで生存が改善した.このことから糖尿病患者ではhistone感受性が亢進しており,その原因としてMac-1を介した血小板・好中球相互作用が介在することが想定された.炎症による血栓形成メカニズムを制御する物質として生体内物質ラクトフェリン (Lf)に注目した.Lfをhistone誘発血栓症モデルマウス,HFD投与histone誘発血栓症モデルマウスに投与したところ,生存が著明に改善した. In vivoでの実験結果を踏まえ,96穴プレート内で好中球・血小板相互作用による血栓形成を惹起して定量化するin vitro 血栓定量化システムを構築した。血栓形成への影響を定量化するためにCaCl2を加えた多血小板含有血漿 (PRP),多形核好中球 (PMN) ,少量のthrombinを用いて実験を試みた.histone の存在下でPRP+PMN群の吸光度の増幅効果が見られ,histoneにより活性化した好中球・血小板による血栓増強効果が確認できた.一方,糖尿病の病態は最終糖化産物 (advanced glycation end products:AGEs)の形成を促進する高血糖状態に特徴づけられる.MG存在下でPRP+PMNを前処置するとPRP+PMN+histone群に対する吸光度の増強効果を認め,histone感受性の増強をもたらすと考えられた.以上より、糖尿病におけるhistone感受性が亢進している要因としてMGが関与していることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HistoneはTLR2,4を介して血小板を活性化し,血小板上にP-selectinを発現することが報告されている.PRP群と比較しPRP+PMN群において,histone存在下で吸光度の著明な増幅効果が見られたことからは,血栓形成においてhistoneによる血小板に対する作用だけでなく,好中球・血小板相互作用が重要であると考えられた.血栓形成において,好中球・血小板相互作用に好中球上のMac-1と血小板上のGPIbαの結合が重要であることは以前から報告されている.また,histone誘発血栓症モデルにおいてMac-1 KOマウスの生存が改善したことからは,histoneによる好中球・血小板相互作用にMac-1が関与していると考えられる.これらのことから,histoneにより活性化しP-selectinを発現した血小板がPSGL-1を発現した好中球と接着し,それに引き続いて好中球上のMac-1と血小板上のGPIbαの相互作用により血栓形成を起こすというメカニズムが想定された.Lfはin vivoの実験でhistone誘発性血栓モデルの生存を改善し、 in vitroの実験で好中球・血小板相互作用による血栓形成を改善させたことから,LfがMac-1を標的として好中球・血小板相互作用を阻害する可能性が考えられる.本研究により,「糖尿病では血栓症の発症が助長される要因として,Mac-1を介した血小板・好中球相互作用に代表されるhistone感受性が亢進している」という新たなメカニズム解明の糸口を掴んだ.本研究における現時点での最大の成果は、histoneによる96穴内in vitro血栓定量化システムの構築である。
|
Strategy for Future Research Activity |
HistoneはTLR2,4を介して血小板を活性化し,血小板上にP-selectinを発現することが報告されている.PRP群と比較しPRP+PMN群において,histone存在下で吸光度の著明な増幅効果が見られたことからは,血栓形成においてhistoneによる血小板に対する作用だけでなく,好中球・血小板相互作用が重要であると考えられた.血栓形成において,好中球・血小板相互作用に好中球上のMac-1と血小板上のGPIbαの結合が重要であることは以前から報告されている.また,histone誘発血栓症モデルにおいてMac-1 KOマウスの生存が改善したことから,histoneによる好中球・血小板相互作用にMac-1が関与していると考えられる.これらのことから,histoneにより活性化しP-selectinを発現した血小板がPSGL-1を発現した好中球と接着し,それに引き続いて好中球上のMac-1と血小板上のGPIbαの相互作用により血栓形成を起こすというメカニズムが想定された.Lfはin vivoの実験でhistone誘発性血栓モデルの生存を改善し、 in vitroの実験で好中球・血小板相互作用による血栓形成を改善させたことから,LfがMac-1を標的として好中球・血小板相互作用を阻害する可能性が考えられる.本研究により,「糖尿病では血栓症の発症が助長される要因として,Mac-1を介した血小板・好中球相互作用に代表されるhistone感受性が亢進している」という新たなメカニズム解明の糸口を掴んだ.このhistone感受性を制御する新たな治療薬の候補としてLfの効果が期待されるため、今後も研究を進めていく予定である.
|
Research Products
(4 results)