2015 Fiscal Year Research-status Report
活性化型チロシンキナーゼ変異体による造血器腫瘍の治療抵抗性獲得機構と制御法の開発
Project/Area Number |
15K09467
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 修 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10209710)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 造血器腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性化チロシンキナーゼ変異体(ATK)は造血器腫瘍の発症や進展のみでなく治療抵抗性にも寄与する。そこで本研究では、抗癌剤とこれらに対する分子標的薬を組み合わせた根治的な造血器腫瘍の統合的治療法の開発を目指し、まずATKによるmTOR経路異常活性化に関して、特にSTAT5の果たす役割とその分子機構に注目して研究を行った。まず、32D細胞に急性骨髄性白血病(AML)で最も重要なATKであるFLT3-ITDとFLT3-TKDを導入して検討を行ったが、PI3K/Akt経路阻害薬によるアポトーシス誘導にFLT3-ITD発現細胞は耐性を示した。一方、FLT3-TKD発現細胞はSTAT5の活性化型変異体STAT5A1*6発現にてこれらの阻害薬に抵抗性となり、FLT3-ITD発現細胞をSTAT5阻害薬であるpimozideで処理すると抵抗性が解除された。更なる解析により、FLT3-ITDの強いSTAT5活性化がmTORC1/4EBP1経路を通じてeIF4E会合に影響を与え、主にMcl-1 cap依存性の翻訳活性を維持することで、PI3K/Akt阻害薬に対し耐性を付与する事が明らかとなった (Oncotarget 6: 9189-9205, 2015) 。また、STAT5の下流ではPimキナーゼの発現誘導が、PI3K/Akt阻害薬によるmTORC1経路の抑制阻害効果を介して、これらの阻害薬へのFLT3-ITD細胞の耐性化に重要な役割を果たすことが明らかとなった(2015年日本血液学会学術集会および投稿準備中)。これらの結果は、STAT5またはPimキナーゼ阻害薬がFLT3-ITD細胞においてPI3K/Akt経路阻害薬と相乗的に治療効果を示しうることを示すもので、治療抵抗性のFLT3-ITD発現AMLの新規治療法の開発へ寄与しうるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BCR/ABL、Flt3-ITD、Jak2-V617Fなどの活性化チロシンキナーゼ変異体は造血器腫瘍の発症や進展のみでなく治療抵抗性にも寄与すが、これらの活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を明らかにすべく解析を行い、急性骨髄性白血病(AML)で最も重要な活性化チロシンキナーゼ変異体であるFLT3-ITDに関して、STAT5を強力に活性化することによりPimキナーゼを誘導し、PI3K/Akt阻害薬によるmTORC1経路の抑制を阻害することで、これらの阻害薬へのFLT3-ITD細胞の耐性化に重要な役割を果たすことを明らかにすることが出来た。これらの結果は、治療抵抗性のFLT3-ITD発現AMLの新規治療法の開発へ寄与しうるものと考えられる。また、骨髄増殖性腫瘍で最も重要な役割を果たす活性化チロシンキナーゼ変異体であるJak2-V617Fに関しても、新たなJak2-V617F陽性細胞株PVTL-2を樹立し、STAT5, Pimキナーゼ、BTKなどの細胞内シグナル因子活性化と、Jak2阻害薬ruxolitinibおよび抗癌剤に対する治療抵抗性獲得機構との関連を明らかにしつつあり(2015年日本血液学会学術集会および投稿準備中)、造血器腫瘍における活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を明らかし、新規治療法の開発を目指すという目標達成に向けて着実に研究を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後更に恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体がRap1等の低分子量GTPaseやmTOR/4EBP1/eIF4E経路の異常活性化を介して、治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするため、活性化型Rap1やPimキナーゼを強発現させた白血病細胞を用いて検討を行い、白血病幹細胞の治療抵抗性に重要や役割を果たすSDF-1からのシグナルとの関連と、抗癌剤誘導性チェックポイント活性化促進機構における意義も明らかし、抗癌剤とこれらに対する分子標的薬を組み合わせた根治的な造血器腫瘍の統合的治療法の開発を目指す。また、分子標的薬と抗癌剤の併用療法による異常チロシンキナーゼのproteasomeを介した分解やaggresomeへの移行に関しても、Jak2-V617FやFlt3-ITDを発現した白血病細胞株や臨床検体でも検討を行うと供に、E3リガーゼを同定しユビキチン化の分子様式と意義を明らかにすると供に、新規治療法開発へ向けて患者臨床検体やマウス実験モデル系を含めて検証する。
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