2016 Fiscal Year Research-status Report
活性化型チロシンキナーゼ変異体による造血器腫瘍の治療抵抗性獲得機構と制御法の開発
Project/Area Number |
15K09467
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 修 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10209710)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 造血器腫瘍 / 分子標的療法 / チロシンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍細胞の発症や進展に重要な恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体であるBCR/ABLやJak2-V617Fが、Chk1を介した抗癌剤誘導性チェックポイント活性化を促進する機構におけるp53の役割を検討し、p53の優勢抑制型変異体の発現によりChk1活性化が促進され、異常チロシンキナーゼの阻害薬と抗癌剤との併用によるアポトーシス誘導が阻害される事を明らかにした。一方、Mdm2阻害薬であるnutlin-3によるp53活性化の誘導により、チロシンキナーゼ耐性変異T315I変異陽性のBCR/ABL発現細胞でも、有効な治療効果が期待される事を見出した。さらにBCR/ABL,Jak2-V617FおよびFlt3-ITDを発現した白血病細胞およびモデル造血細胞株を用いて検討を行い、p53がp21などの標的遺伝子産物の発現誘導を介して、PI3K/Akt/GSK3経路には非依存性にユビキチン・プロテアソーム系により抗癌剤誘導性のChk1の活性化を抑制することを見出し報告した(Umezawa Y. et al., Oncotarget, 7:44448-44461, 2016).また、急性骨髄性白血病で最も頻度の高いFLT3-ITD遺伝子変異を有する白血病細胞が、PI3K/AKT活性化シグナル伝達経路とSTAT5活性化経路を阻害することによりmTORC1/4EBP1/mTOR経路が相乗的に抑制される事を報告してきたが、その分子機構にはSTAT5によるPimキナーゼの発現誘導と、PimキナーゼによるmTORC1の活性化が重大な役割を果たしていることを見出し、Pimキナーゼ阻害薬とPI3K/AKT阻害薬により著明な治療効果の促進が期待出来る事を明らかにした(投稿準備中)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BCR/ABL、Flt3-ITD、Jak2-V617Fなどの活性化チロシンキナーゼ変異体は造血器腫瘍の発症や進展のみでなく治療抵抗性にも寄与することを示し、活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を解明すべくさらに解析を行い、急性骨髄性白血病(AML)で最も重要な活性化チロシンキナーゼ変異体であるFLT3-ITDに関して、STAT5を強力に活性化することによりPimキナーゼを誘導し、PimキナーゼがmTORの活性化を誘導することで、PI3K/Akt阻害薬によるmTORC1経路の抑制効果を阻害することで、これらの阻害薬へのFLT3-ITD細胞の耐性化に重要な役割を果たすことを明らかにすることが出来た。これらの結果は、治療抵抗性のFLT3-ITD発現AMLの新規治療法の開発へ寄与しうるものと考えられる。また、BCR/ABLやJak2-V617Fが、Chk1を介した抗癌剤誘導性チェックポイント活性化を促進する機構におけるp53の役割を検討し、p53がp21などの標的遺伝子産物の発現誘導を介して、PI3K/Akt/GSK3経路には非依存性にユビキチン・プロテアソーム系により抗癌剤誘導性のChk1の活性化を抑制することを見出し報告しており、造血器腫瘍における活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を明らかし、新規治療法の開発を目指すという目標達成に向けて着実に研究を進展させることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後更に恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が低分子量GTPaseやmTOR/4EBP1/eIF4E経路の異常活性化を介して、治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするため、活性化型Rap1やRap1を抑制するSPA1およびPimキナーゼを強発現させた白血病細胞を用いて検討を行い、白血病幹細胞の治療抵抗性に重要や役割を果たすCXCR4からのシグナルとの関連と、抗癌剤誘導性チェックポイント活性化促進機構における意義も明らかし、抗癌剤とこれらに対する分子標的薬を組み合わせた根治的な造血器腫瘍の統合的治療法の開発を目指す。また、WP1130やb-AP15等のDUB阻害薬による異常チロシンキナーゼのproteasomeを介した分解やaggresomeへの移行に関しても、Jak2-V617FやFlt3-ITDを発現した白血病細胞株や臨床検体でも検討を行うと供に、E3リガーゼを同定しユビキチン化の分子様式と意義を明らかにし、新規治療法開発へ向けて患者臨床検体やマウス実験モデル系を含めて検証する。
|
Research Products
(5 results)