2016 Fiscal Year Research-status Report
マウスを用いた活性化B細胞型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の発症機序の解明
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15K09474
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
錦織 桃子 京都大学, 医学研究科, 講師 (60378635)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | B細胞リンパ腫 / MyD88 / HOIP |
Outline of Annual Research Achievements |
活性化B細胞型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC-DLBCL)の病態にはNF-kappaBの恒常的活性化をもたらすようなゲノム異常がしばしば関与することが知られており、またNF-kappaBのシグナル制御に関わる直鎖型ユビキチン複合体サブユニットであるHOIPの活性化型SNP変異を持つ人において、ABC-DLBCLの発症リスクが高いことが報告されている。 本研究ではCre-loxP反応依存性にHOIP遺伝子の恒常的高発現をもたらすトランスジェニックマウス、およびHOIPのSNP変異を持つ症例で特に併存する頻度の高いヒトMyD88 L265P変異と相同のMyD88 L252P変異をコンディショナルに発現するマウスを作出した。これらをCD19-Creトランスジェニックマウス、AID-Creトランスジェニックマウスと交配させることにより、未分化/成熟Bリンパ球からHOIPおよび変異型MyD88を高発現するマウスを得ることができた。 これらのマウスの成熟Bリンパ球においては、NF-kappaBが恒常的に活性化しており、その下流遺伝子の発現も亢進していることが判明した。これらのマウスではB細胞の増殖速度が速くB細胞が増加し、1年未満の観察で、導入遺伝子の発現したB細胞に起因するリンパ増殖性疾患や悪性リンパ腫を発症し致命的となるマウスが一部に出現することが観察されている。これらの腫瘍細胞の遺伝子発現プロファイリングや免疫グロブリン遺伝子におけるsomatic hypermutation解析などにより、ヒトのリンパ腫との相同性につき現在検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに遺伝子改変マウスの作出が進められている。AID-Creトランスジェニックマウスとの交配ではT細胞系への遺伝子発現の漏れがあり、B細胞腫瘍モデルとしては適さないことが判明したが、CD19-Creトランスジェニックマウスとの交配ではB細胞特異的に期待通りの導入遺伝子の形質の発現が確認できている。またHOIPや変異型MyD88が発現するBリンパ球において、予想される性状の変化を認め、未知の生体内機能についても明らかにすることができつつある。 さらに、これらの遺伝子改変マウスの一部において、導入遺伝子が発現するBリンパ球に由来するリンパ増殖性疾患の発生を認め、その中には単クローン性の悪性リンパ腫も含まれることを確認できている。 以上より、これらの遺伝子異常がリンパ腫形成に至る過程を明らかにするという目的を調べるための系はすでに完成している。今後それを用いて、前がん細胞の生理的動態や機能、腫瘍形成に必要な付加的異常に関し、解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスにおいて、HOIPおよび変異型MyD88遺伝子が発現するBリンパ球の表面形質や生体内における動態、免疫環境について明らかにする。また、これらのBリンパ球が遺伝子異常を蓄積するメカニズムについて、B細胞内のNF-kappaBシグナルの恒常的活性化やAID発現制御の観点から検討を行う。またどのような付加的遺伝子異常が加わることで最終的に腫瘍の形成にいたるのかを明らかにするため、形成された腫瘍の網羅的遺伝子解析を行う。さらに、その遺伝子異常の導入によって腫瘍化が促進されることを、in vitroのB細胞培養系およびマウスへの細胞移植を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
今年度はマウスの飼育が中心であったため、次年度の各種解析に経費がかかることを見越し、努力して残額を捻出いたしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はHOIP・変異MyD88高発現マウスで形成された腫瘍細胞の網羅的遺伝子解析を行い、相乗的に腫瘍形成に関わると考えられる遺伝子を見出したいと考えております。またその遺伝子をB細胞に導入し、細胞をマウス個体に移植することで腫瘍形成を再現する実験を行いたいと考えており、平成28年度より経費が掛かると考えております。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Expression of Tim-1 in primary CNS lymphoma.2016
Author(s)
Kishimoto W, Nishikori M, Arima H, Miyoshi H, Sasaki Y, Kitawaki T, Shirakawa K, Kato T, Imaizumi Y, Ishikawa T, Ohno H, Haga H, Oshima K, Takaori-Kondo A.
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Journal Title
Cancer Medicine
Volume: 5
Pages: 3235-45
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Efficacy and safety of ibrutinib in Japanese patients with relapsed or refractory mantle cell lymphoma.2016
Author(s)
Maruyama D, Nagai H, Fukuhara N, Kitano T, Ishikawa T, Shibayama H, Choi I, Hatake K, Uchida T, Nishikori M, Kinoshita T, Matsuno Y, Nishikawa T, Takahara S, Tobinai K.
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 107
Pages: 1785-1790
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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