2016 Fiscal Year Research-status Report
表面抗原ESAMを指標とした造血幹細胞の活性化を誘導する分子機構の同定と臨床応用
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15K09475
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 貴史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60403200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金倉 譲 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20177489)
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70324762)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / ヒト急性骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / 幹細胞マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はEndothelial cell selective adhesion molecule (ESAM)という血管内皮抗原が、マウスおよびヒトにおいて造血幹細胞の表面マーカーとして有用であることを発見した。さらにESAMが5-FU投与や放射線照射後の活性化した造血幹細胞において機能的な役割を担っていることを見出した。以上の研究成果を背景に、本研究ではヒト白血病細胞におけるESAMの発現と機能を解析し、新しい診断・治療法の開発に展開することを目標とした。 初発のヒト急性骨髄性白血病症例において、約3分の2の症例で白血病芽球にESAMの発現を認めた。一方急性リンパ球性白血病ではESAM陰性であり、その発現は白血病細胞の系統診断に応用できることがわかった。次にヒト急性骨髄性白血病細胞株を用いて、ESAM発現の意義について解析を行った。ヒト骨髄性白血病細胞株KG1aおよびCMKでは、同一クローンである白血病細胞においてESAM発現レベルに1000倍以上の差が認められた。KG1aにおいてESAM高発現分画・低発現分画を各々ソートすると、ESAM高発現細胞は未分化な造血幹細胞の表面形質であるCD34+CD38-分画に濃縮され、ESAM低発現細胞よりも高い増殖能を持っていた。しかし興味深いことに、ESAM高発現およびESAM低発現分画のいずれの細胞集団も、継続培養によって親株と同じ不均一なESAMの発現を呈する集団を再構成した。さらにKG1aをESAM高発現・低発現の単一細胞を分離し培養したところ、いずれにおいてもCD34+CD38-分画に自己複製能をもつ細胞が存在し、継続培養によりESAMを不均一に発現する親株と同じ集団を再構成する結果を得た。これらの結果から、急性骨髄性白血病の白血病幹細胞は細胞学的に不均一性を持ち、個々の細胞レベルで変動していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2年目の年であり、初年度で得られたヒト急性骨髄性白血病細胞におけるESAMの発現データーに基づいて研究を展開した。白血病幹細胞におけるESAMの表面マーカーの意義と発現調節に関わる分子メカニズムについて解析を行ったところ、白血病幹細胞としての性質である自己複製的な増殖能力はESAM高発現の分画が強く持っているものの、白血病幹細胞は均一な集団でなく、ESAMを発現していない分画にも存在しうることが明らかとなった。さらにはこの不均一な白血病幹細胞集団は、それぞれ異なる性質の細胞の集合体と言うよりはむしろ、個々の細胞が性質的に変化しながら存在しており、1つの細胞から不均一な白血病幹細胞集団が再構成されることが分かった。このような知見は当初予想していなかったものであるが、白血病幹細胞の細胞生物学的な本質をついていると考えられる。以上の状況から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、骨髄性白血病細胞におけるESAMの生理的な機能をより詳細に解析するため、白血病細胞株KG1aやCMKのESAMの発現をノックダウンし、培養や免疫不全マウスへの移植実験にて機能的な変化を調べる。また、ESAM陽性・陰性の白血病細胞の発現遺伝子を比較し、分子細胞学的な性質の違いを明らかにするとともに、ESAM陽性・陰性の間でのゆらぎを誘導する分子基盤を明らかにする。さらにこの知見に基づき、抗癌剤に対する治療抵抗性の獲得の分子細胞学的なメカニズムを解析し、その克服法の開発を目指す。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Endothelial Cell-Selective Adhesion Molecule (ESAM) Is Required for the Ontogeny of Definitive Hematopoietic System in Mice2016
Author(s)
Tomoaki Ueda, Takafumi Yokota, Yasuhiro Shingai, Yukiko Doi, Tomohiko Ishibashi, Takao Sudo, Yasuhiro Nagate, Akira Tanimura, Masahiro Tokunaga, Jiro Fujita, Michiko Ichii, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, and Yuzuru Kanakura
Organizer
The American Society of Hematology 58th Annual Meeting
Place of Presentation
San Diego (California, USA)
Year and Date
2016-12-05
Int'l Joint Research
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[Presentation] SATB1 expression helps in identification of the lymphoid-lineage-biased trajectory of functionally fluctuating hematopoietic stem cells2016
Author(s)
Yukiko Doi, Takafumi Yokota, Yusuke Satoh, Tomoaki Ueda, Yasuhiro Shingai, Michiko Ichii, Akira Tanimura, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, Terumi Kohwi-Shigematsu, Yuzuru Kanakura
Organizer
The American Society of Hematology 58th Annual Meeting
Place of Presentation
San Diego (California, USA)
Year and Date
2016-12-04
Int'l Joint Research
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[Presentation] Endothelial antigen ESAM is a human HSC marker associated with a subset of human leukemias2016
Author(s)
石橋知彦, 横田貴史, 田中宏和, 一井倫子, 数藤孝雄, 佐藤友亮, 土居由貴子, 上田智明, 新開泰宏, 谷村 朗, 濱中有理, 江副幸子, 柴山浩彦, 織谷健司, 金倉譲
Organizer
第78回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
パシフィコ横浜 (神奈川県横浜市)
Year and Date
2016-10-13
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[Presentation] ESAM is required for the ontogeny of definitive hematopoietic system in mice2016
Author(s)
上田智明, 横田貴史, 土居由貴子, 石橋知彦, 数藤孝雄, 谷村 朗, 徳永正浩, 一井倫子, 江副幸子, 柴山浩彦, 織谷健司, 金倉譲
Organizer
第78回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
パシフィコ横浜 (神奈川県横浜市)
Year and Date
2016-10-13