2016 Fiscal Year Research-status Report
Ptprz1によるマウス造血幹細胞発生制御機構の解明
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15K09495
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 知子 (稲川知子) 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特任助教 (30714852)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 造血幹細胞前駆体 / 受容体チロシンフォスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生10.5日目と胎生11日目のマウス胚よりAGM組織を摘出し、細胞懸濁液を血管内皮細胞マーカーCD31とクラスター細胞マーカーckit、そして Ptprz を認識する抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析を行った。その結果、Ptprz/CD31を共発現する細胞が存在し、そのうちわずかにckit陽性細胞が認められた。次いで、PtprzのリガンドであるPTNを添加した培養液でAGM組織を培養したのちに、同様にフローサイトメトリー解析を行ったところ、PTN非添加培養群と比べて、ckit/CD31の共発現細胞群とCD31発現細胞群の細胞数が減少していることが認められた。一方で、CD31とckitのいずれも発現していない細胞群が増加の傾向にあった。これらの細胞には血液細胞も含まれているが、CD45陽性細胞数には変化が認められなかった。これらの結果より、Ptprzはクラスター細胞形成、また血管内皮細胞の分化・増殖に関与する可能性が高まった。 造血幹細胞前駆体とみなされているクラスター細胞の出現過程には、LiveImagingを用いた血管内皮細胞の扁平から丸形状への変化と大動脈への移動について報告がある。マウス胚で示されたこの一連の過程をたどる細胞はHemogenic endothelial cellと呼ばれる細胞で、この細胞の遺伝子プロファイリングによってPtprzの発現が示された。そしてPtprzは、神経細胞の走化性に関与するという報告がある。これらのことから、PTNによるckit/CD31発現細胞数の減少は、PTNの添加により血管内皮細胞の運動性が阻害されたことによってクラスター細胞への分化を抑制したためかもしれない。または、PtprzはVEGFと相互作用するが、PTNが大量に存在する培養液中ではVEGFに負の競合が起こり、血管内皮細胞の維持が抑制されたことも考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な実験手法である組織培養システムが確立できたので、添加培養実験が安定して行えている。しかし、PTN添加による組織培養実験からは、未だ幹細胞としての多能性の獲得機構にPtprzの関与を示唆する結果は得られていないため、まだ移植実験を行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
クラスター細胞の減少した結果から、Ptprzの不活性化が血管内皮細胞の分化誘導シグナルの阻害を誘導しているかどうかを調べるため、これまで同様に組織培養システムを用いて、PTN作用下でのAGM組織でhemogenic endothelial cellのマーカーであるly-6aとクラスター細胞の形成に関わる転写因子gata2とrunx1の遺伝子発現について調べる。加えて、血管内皮細胞の細胞表面マーカーの発現について調べる。血管内皮細胞の減少が、添加するPTN濃度依存的に変化するかどうかを調べ、VEGFとの競合作用について検討する。そして、Ptprzがクラスター細胞の血液細胞への分化と血管内皮細胞の血管形成に関与しているかどうかを調べるため、それぞれの活性を誘導する培地にPTNを添加して培養し、細胞挙動を観察する。
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Research Products
(1 results)